前回「浄土三部経の私的注目点(その5)三輩・九品」に続きます。

 前回の記事で、極楽浄土に生まれ変わる人々を生前の行いから9種類に分類するという「九品(くほん)」についてお話ししましたが、私としては、いつも上から6番目である「中品下生」の人々に注目しています。

 親孝行をして他人に思いやりの心を持つ善良な者がいる。この者がその命を終えようとする時、善知識(仏道に縁を結ばせる人)に巡り合い、極楽浄土の様子や法蔵菩薩の四十八願について聞く。これらを聞き終わり、その命を終えると、極楽浄土に生まれ変わることができる。そして、七日を経た後に、観音菩薩と勢至菩薩に会い、尊い教えを聞いて喜び、一小劫を経て阿羅漢となる。これを中品下生の者と名付ける。

 「中品中生」以上の人々の条件については、少なくとも仏道を歩んでいることが必要ですが、「中品下生」の条件としては、「親孝行をして他人に思いやりの心を持つ善良な者」ということが記されているだけです。これは、現代の日本に生きる多くの人々が該当するように思えます。

 

 ゆえあって悪人であるとか、毒親に酷い目に合わされて絶縁状態であるとか、病を患って善行を行えない…などの境遇の人もたくさんいるでしょうけど、日本人の多くは、家族や仲間のことを想って日々真面目に働いていて、もちろん時には悪いことをしてしまいますけど、それを後悔したりしますから、やはり日本人の多くの人が善良な人たちで、中品中生の人々に該当するのだと思います。

 

 では、中品下生である多くの日本人が何をすべきかというと、まさに経典に書いてあるとおり、親孝行をして(難しいけど)、周囲の人々の幸せを考えて行動し続けること。そして、極楽浄土の様子や法蔵菩薩の四十八願について聞くということです。

 言い換えれば、誰もが小学校で習うような「共助精神」を持ちつつ、責任ある社会人として普通に生きること。その上で、人生において一度は浄土教の教えを聞いてみる。そして、時には寺院を訪れて阿弥陀仏に対して後生をお願いするということ。

 

 あくまで私の個人的な考えですが、これだけで十分ではないかと思っています。

 

 

 次回に続きます。