年末年始の飲み過ぎで体調を崩されている方もおられるでしょうか。私も40代となり、酒にかなり弱くなってきているようで、多めに飲むとすぐに体調を崩してしまうので、そろそろ断酒すべきかどうか考えています。よく、少量の飲酒であれば逆に体に良いなどとと言われてきましたが、最近の研究結果によるとそれは誤りのようで、医学的には「百害あって一利なし」ということが指摘され始めています。

 …そんなわけで、今回は「仏教と飲酒」をテーマにお話ししたいと思います。

 

 さて、飲酒に対する仏教の考え方ですが、かなり厳しい内容となっています。先日の記事「仏教と肉食」でお話ししたように、肉食については、仏教の誕生以降から大乗仏教までは比較的寛容だったのですが、飲酒については、仏教の誕生以降ずっと様々な経典において、ほとんど「言語道断」という扱われ方をしています。

 

 まず、最古層の経典スッタニパータにおいて、釈迦が飲酒について以下のとおり述べています。

飲酒を行ってはならぬ。この不飲酒の教えを喜ぶ在家者は、他人をして飲ませてはならぬ。他人が酒を飲むのを容認してもならぬ。これは終に人を狂酔せしめるものであると知って。けだし諸々の愚者は酔いのために悪事を行い、また他の人々をして怠惰ならしめ、悪事をなさせる。この災いの起るもとを回避せよ。それは愚人の愛好するところであるが、しかしひとを狂酔せしめ迷わせるものである

(スッタニパータ 第二章398・399)

 また、仏教僧のルール(律)が記される「四分律」では、釈迦が飲酒を禁じた理由、そして、飲酒による10の災いについて説明しています。非常に長いので該当箇所を抜粋し、以下のとおり要約します。

 

昔、莎伽陀(しゃがた・サーガタ)という釈迦の従者がいた。莎伽陀は、神通力で毒蛇を退治したことで住民に感謝されて酒を提供されたが、これに悪酔いしてしまい、倒れ込んで嘔吐を繰り返した上、釈迦に足を向けるなどの醜態も晒した。釈迦は、これを見て「今後、私の弟子はわずかな量でも酒を口にしてはならない。不飲酒戒を設ける」と述べた上で、酒がもたらす災いとして次のとおり説明した。①顔色が悪くなる②体力が低下する③目が悪くなる④怒りっぽくなる⑤仕事に支障をきたす⑥病気になる・病気が悪化する⑦争いの種となる⑧名声を失う⑨智慧がなくなる⑩身体が壊れ、生命が終われば三悪道に生まれ変わる

(四分律から該当箇所を筆者が抜粋・要約)

 飲酒に対する釈迦の態度は厳しいです。ただ、その理由としては、「酒を飲むと健康に悪いし、正気を失って色々やらかすぞ」という当たり前の内容です。みなさんの周りで殺人(不殺生戒)や窃盗(不偸盗戒)で逮捕されたという友人を探すことは難しくとも、飲酒でやらかした人はたくさんいるでしょう(私も、嘔吐したり、二日酔いで休日を台無しにした経験は何度も…)。それゆえ、釈迦の発言をリアルに感じられるのではないでしょうか。

 

 次回更新時も、引き続き、「仏教と飲酒(その2)」として仏教的私見を述べさせていただきます。