前回の記事「仏典を読む(その117)地蔵経(上巻)5」の続きです。

  

 

 観衆生業縁品 第三

 

 摩耶夫人(お釈迦さまの実母)は、恭しく合掌して地蔵菩薩に尋ねた。

 「菩薩よ。人間の業には様々なものがありますが、その報いとは、どのようなものでしょうか」

 

 地蔵菩薩は答えた。

 「千万の世界には、地獄があるところとないところがあり、また、女人、仏法、小乗の聖者なども同様にあるところとないところがあります。したがって、業の報いの内容は全て一様というわけではありません」

 

 摩耶夫人が申し上げた。

 「それでは、人間界で造られた業の報いとして感得する悪い世界についてお聞かせください」

 

 地蔵菩薩は答えて言った。

 「それでは、よくお聞きください。①父母に不孝であり、あるいは殺害する。②仏の身体を傷つけて出血させ、三宝を誹謗して経典を敬わない。③寺院の財産を侵害し、僧尼を汚し、寺内で淫行や殺生を行う。④偽って僧となり、僧としての心を持たず、寺院の財を消費し、在家信者を欺き、戒律を破って悪を行う。⑤寺院の財物を盗む。これらの罪を犯すことで、無間地獄に堕ち、ほとんど永遠に抜け出すことができず、一瞬たりとも苦を止めることはできません」

 

 摩耶夫人は続けて地蔵菩薩に尋ねた。

「無間地獄とは、どのようなところなのでしょうか」

 

 地蔵菩薩は答えた。

 「あらゆる地獄は大鉄囲山の内にあります。地獄には十八の場所があり、次に五百の場所がそれぞれにあり、さらに千の場所がそれぞれにあります。地獄の城は、周囲が八万余里あり、すべてが鉄ででき、高さは一万里あります。城の上では炎が隙間なく燃えさかっています。城の中では、諸々の地獄が互いに連なり、名称はそれぞれ異なりますが、「無間」と名づけられた地獄があります。その周囲は一万八千里、壁は高さ一千里、すべて鉄でできています。上の火は下まで貫き、下の火は上まで貫いています。鉄の蛇や狗が火を吐き、壁の上を東西に走ります。獄中には床があって万里に広まっています。一人が罪を受けるときは、自分の身が床いっぱいに横たわっているのを見ます。千万の人が罪を受けるときも、それぞれが自分の身が床いっぱいであると見ます。衆業によって感得される報いとは、このようなものです」

 

 「また、罪人たちはあらゆる苦を受けます。千の夜叉と悪鬼がおり、口の牙は剣のようで、目は稲妻の光のようです。手には銅の爪があり、罪人を引きずります。また夜叉が大きな鉄の矛で罪人の身体を突きます。あるいは、口や鼻や背を突き、空中に投げ上げて受け止め、また床の上に置きます。また鉄の鷹が罪人の目を食らい、また、鉄の蛇が罪人の首を締め上げます。百の関節すべてに長い釘を打ち込み、舌を抜いて鋤で耕し、腸を引き出して刻み斬ります。溶けた銅を口に注ぎ、熱い鉄で身体を巻きます。そして何万回死んでは生き返ることを感得して、ほとんど永遠という時を経過してもこの地獄から抜け出すことはできません。この地獄は、時が経って世界が壊れると他の世界に移り、その世界が壊れると更に他の世界に移り、絶え間なく移り続けます。そして、世界が再び生まれると再び戻って来ます。無間の業の報いとはこのようなものです」

 

 「そして、五つの特徴から無間と称されます。それは、①日夜苦しみを受けて永遠に時間の切れ目がないため。②一人であっても満ち、多人数であっても満ちるため。③苦しみの道具。すなわち、叉、棒、鷹、蛇、狼、犬、ノコギリ、ノミ、斧、熱湯、鉄網、鉄縄、鉄馬、生革で首が締められ、熱鉄で身を焼かれ、飢えては鉄球を飲まされ、渇いては溶けた鉄を飲まされ、永遠に苦が続いて断絶がないため。④男女・国籍・老幼・貴賤・龍・神・天人・鬼など等しく業による報いを受けるため。⑤この地獄に堕ちると、毎日絶え間なく万死万生し、一念の間すら止めることもできず、ただ業が尽きるまで果てしなく続くためです」

 

 「無間地獄についてのあらましは以上のとおりです。詳細については、説き尽くすことはできません」

 

 

【メモ】

 今回は、お釈迦さまの御母堂である摩耶夫人による質問に地蔵菩薩が答えるという回です。地蔵菩薩によると、父母を殺す、仏に危害を加える、仏教教団を侵害する、僧と偽って非行に及ぶ、寺院の財物を盗む…という行為によって無間地獄に堕ちるのだそうです。無間地獄では、鬼に槍でチクチクされたり、ノコギリでギコギコされたり、お腹が空いたら鉄球を食べさせられたり、喉が渇いたら溶けた鉄を飲まされたり、多種多様な無限の苦しみをフルコースで味わうことができる地獄なのだそうです。

 

 ちなみに、経の描写からはこの絵のようなありがたい光景が浮かぶのですけど、説法の内容が「罪人の百の関節すべてに長い釘を打ち込み、舌を抜いて鋤で耕し、腸を引き出して刻み斬ります。溶けた銅を口に注ぎ、熱い鉄で体を巻きます」などと、とんでもないグロ描写であることを想像すると結構笑えます。しかも説法相手はお釈迦様の御母堂。

 

 次回に続きます。