前回記事「浄土三部経の私的注目点(その7)」の続きです。

 浄土三部経のうち観無量寿経は、そもそも、阿弥陀仏や極楽浄土の有様を思い描くためのマニュアルであり、以下の観想(瞑想)についての教えを説いています。

 

第一の観「日想」:沈む夕日を思い描く

第二の観「水想」:水の清く澄み切った様子を思い描く

第三の観「地想」:極楽浄土の瑠璃の大地を思い描く

第四の観「樹想」:極楽浄土の樹木を思い描く

第五の観「八功徳水想」:極楽浄土の八つの池とその流れを思い描く

第六の観「総観想」:極楽浄土の大地・樹木・池を合わせて思い描く

第七の観「華座想」:極楽浄土の蓮の花と台座を思い描く

第八の観「像想」:阿弥陀仏の仏像を思い描く

第九の観「広く全ての仏のお姿を思い描く想」:阿弥陀仏の背後にいる諸仏を思い描く

第十の観「観音菩薩のお姿を思い描く想」:観音菩薩の姿を思い描く

第十一の観「勢至菩薩のお姿を思い描く想」:勢至菩薩の姿を思い描く

第十二の観「普想観」:極楽浄土に生まれ変わった自分を思い描く

第十三の観「雑想観」:一丈六尺の阿弥陀仏の姿を思い描く

 

 浄土宗・浄土真宗共に、浄土三部経を根本聖典としていますけど、上の観想行の実践に言及することはあまりにないように思えます。ただ、これだけ詳しく記されているのだから、徹底的に実践してその効果を教えてほしいとか思うのですが…(浄土宗のお坊さんとお友達になりたい)。

 

 一方、天台宗のお坊さんの友人から聞いたのですけど、現在でも、比叡山延暦寺ではエリート僧たちが観想行を実践しているそうです。上の観無量寿経と同じ観想行ではないようですが、行を通じて感応道交で阿弥陀仏と極楽浄土を体験するのだそうです。なんと、実際に阿弥陀仏を目の当たりにしている方が現代もいるのかとびっくりしました。

 

 では、実際に阿弥陀仏を目の当たりにしたという人の話を聞けないかと言えば難しいでしょうけど、これに言及している極めて貴重な書籍があります。それがこちら。

 

 

 愚者になりて往生す 

 

 わたくし奈良は、学生時代は体育会系で、なんでも努力と根性で解決しようと考えるタイプでした。そういう僕をよく知る先輩(浄土真宗寺院住職)から「お前はこの本を絶対好きだと思うから」といって、ある日突然送っていただいたのが、この本です。読んでみると、本当に僕の好きな内容で…先輩にはかなわんなあ…などと思いました。

 

 この本には、ド根性バリバリの自力行で阿弥陀仏を見た…その内容が書かれています。

 そして、この本の中で目撃した阿弥陀仏の有様を話しているのは、なんと、比叡山千日回峰行を二度満行したという天台宗の酒井雄哉大阿闍梨です。

 

 次回、その内容を紹介します。