入院11日目。3回目のステロイドパルス。これが最後の点滴である。
「今日の夕食はキャンセルして、みんなで下の食堂で食べようよ。」
Tさんの提案に、Eさんも賛同してくれた。みんなで過ごす最後の夕食。
私の過呼吸は、相変わらず時々起きていたので、退院後に循環器内科を受診することになった。
もし具合が悪い時は、下の食堂での食事はできなくなってしまう。
『みんなで食事したい!』
私は願いを込めて
「今日の夕食は、なしでお願いします。みんなで食堂で食べます。」
看護師さんにお願いした。
「分かりました。胸が苦しいのが治まったらね。」
願いが通じたのか、夕方まで過呼吸は起きなかった。大丈夫、食事に行ける。
みんなで病室を出て、食堂へ向かった。
入口に置かれた看板を見て、
「何食べようかな。どれも美味しそう!」
私はオムライスを選んだ。Tさんは、そばとカレーセット、Eさんは日替わりセットを注文した。
病院食では出ないメニューばかりだった。
楽しかった。病室では周りを気にしてあまり大きな声でしゃべれなかったので、みんないつもより
トーンが高い声で話していた。オムライスの味は、普通よりもやや薄めのソースの味がした。
でも、とってもおいしく感じた。みんなで食べるとおいしくなる。きっとこの味を忘れないだろう。
その後、喫茶コーナーでお茶タイム。
いろいろ話した。感情が溢れて泣いたりもした。
消灯時間3分前に、病室に戻った。
「おかえりなさい。座談会は必要だよね。」
みんな焦って戻ってきたところだったので、看護師さんの言葉にホットした。
「お薬飲みましたか。」
夜は、このところ必ず入眠剤を飲んでいた。
「今、飲みます。」
すぐに飲んだ。みんなと過ごしたこの病室での思い出が走馬灯のように浮かんでくる。
『みんな、ありがとう!』
いつの間にか眠ってしまった。