入院7日目続き。


 ついに、【外出許可証】を使う日がきた!

今日の天気は、晴れ。

 朝の過呼吸は治まり、今は落ち着いている。

「午前中にスーパー行こう。準備できたら、出発しよう。」とTさん。

『やっと外に出られる。』

 まだ方向感覚に自信が持てなかったので、Tさんと一緒に病院の近くにあるスーパーに

行くことにした。

 外出許可証の外出目的に“買物”という選択肢があったので、しっかり〇をつけた。

外出時間は、1時間くらいにしようということになった。

 用意を終えて、二人で病室を出る。

ゆっくりとナースステーションに向かう。車椅子のTさんの後を一歩一歩ついていった。

「外出許可証です。お願いします。」

看護師さんに用紙を渡すと、

「ちょっと待ってね。先生に確認します。」

私は、合格発表を待つ受験生のような気分になった。

電話で担当医に確認している声が聞こえた。


「気をつけて行ってきてね。」

『良かった!』

 エレベーターに乗り、1階へ。そして正面玄関の扉が開く。

新鮮な空気が肌に触れる。久しぶりの外の空気。気持ちがいい。


 Tさんは、道に詳しい。きっと、Tさんが一緒だったから許可が下りたのだと思った。

時計を見ると、10時半。お昼ご飯までに戻らなければいけない。


 スーパーは品揃えが豊富で、見れば見るほどお腹がすいてしまった。

退院したら、美味しいものをいっぱい食べたい。

 約1時間の外出は、食欲を取り戻してくれた。


 午後は、両親や友人が来てくれた。同室の仲間も交え、賑やかなひとときだった。


夜もTさんと外に出かけた。院内散歩なので、許可証はいらない。


 昼とは違って、夜の空気は冷たかった。パジャマの上にダウンコートを着て、手袋をはめて出かけた。

病院内の敷地は広く、十分な散歩となった。


「あそこが病棟だよ。見える?」

病棟からのオレンジの光がまぶしかった。そして、夜空の景色と病棟が一体となって見えた。

『外は広い。もしかしたら、今自分が悩んでいることは大きな世界の中の小さな出来事なのかもしれない。もっと、前向きに生きよう。』


「一緒に頑張ろうね。また、散歩しよう。」

ここにきて、人との出会いがこんなに素晴らしいと感じたことはなかった。

きっと、この出会いは偶然ではなく、天からの贈り物だと思った。

『大丈夫。ひとりじゃないよ。』

夜空が励ましてくれているように感じた。