入院7日目。朝目覚めた時から心臓がドキドキして、息苦しさを感じた。
ドックン、ドックン、一気に脈が早くなる。
同室の仲間は、次々とカーテンを開けて、おはようの挨拶を交わしている。
「大丈夫?苦しかったら看護師さん呼んだ方がいいよ。」と、Tさん。
彼女は本当に良く気がついてくれる。まるで主治医の先生のようだ。
しばらく、私は脈が落ち着くまで動けなかった。Tさんは、ナースコールのボタンを
手の届くところに持ってきてくれた。
ナースコールを押すと、すぐに看護師さんが入ってきた。
「血圧測りましょう。」急いで部屋を出ていき、すぐにまた戻ってきた。
若い男性の看護師さんが
「ゆっくり深呼吸しましょう。」と血圧計を装着する。
私は言われるとおり、ゆっくりを意識して深呼吸を繰り返した。
「そうそう、上手です。今の呼吸法で大丈夫です。」
優しい声が私を徐々に落ち着かせてくれた。
「また苦しくなったら呼んでくださいね。」
「めちゃ、優しいよね。さすがOさん。」TさんはO看護師をよく知っているようで
「患者さんの間でも人気のある人なんだ。」と教えてくれた。
同室仲間にSさんがいたが、昨日無事に退院され、新しくEさんが入っていた。
Eさんは、初めはカーテンを閉めて一人の時間を過ごされていたが、Tさんのおかげで
すぐにみんなと仲良くなり、病室はいつも賑やかだった。
Eさんは、とても元気にリハビリをされていた。病棟の廊下で、リハビリの先生の後を
颯爽と歩いている姿に、清々しさを感じるほどだった。
とても70代とは思えない、しっかりとした体力をお持ちの方だと感じた。
そのEさんから、
「呼吸が早くなったときは、あー、りー、がー、とー、うー、とゆっくり言うように深呼吸するといいよ。」
鼻から息を吸って、口からゆっくり吐くと落ち着くそうだ。
やってみた。本当だ。だんだんと呼吸が落ち着いてきた。
今度、過呼吸になりそうなときは、これをしようと思った。
Eさん、ありがとう。