小さな心臓マッサージ

 

それは、消えかけている彼女のいのちに祈りをこめながら、

こちらの世界に呼び戻すために夫と息子が呼びかけている、

そのひとつの表現だったように思う。

 

在宅で看取るとき、緩和ケアにたずさわるとき、

心臓マッサージをしないといことがあたりまえ

心臓マッサージが始まると何だか心がざわざわする

 

あれ? 話し合いしてなかったっけ? 

 

けれど、今回の心臓マッサージは、

愛しい妻との、大切な母との別れを惜しみ、

自分の気持ちに折り合いをつけるための

本当に小さな心臓マッサージだったのだ。

 

どのタイミングで声をかけるか、

いやこのまま見守っていて良い、そうしよう。

 

そう思っていたら、

 

よくがんばったよ、ありがとうな 

 

息子のひとことで小さな心臓マッサージは終わった。

 

そのおうちの空気は、あったかかった。

私たちはこんなあたたかい場面を共有させていただいている。