○5月28日

 邦画が3本、洋画が2本です。内、3本はお薦めですが、2本はどうでしょうか。今回もジャンルはいつものようにバラバラです。

 

 

 2018年公開の「祈りの幕が下りる時」を観た。東野 圭吾原作による「新参者」シリーズの完結編。東野の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」第10作の映画化で、2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、2本のスペシャルドラマ、2012年公開の映画「麒麟の翼 劇場版・新参者」に続き、阿部 寛が主人公の刑事・加賀恭一郎を演じる。

 父との確執、「卒業」「赤い指」等で触れられていた、母の失踪など、これまで明かされることがなかった加賀自身の謎が明らかとなる。

 監督は、「半沢直樹」「下町ロケット」「3年B組金八先生」など数多くのヒットドラマを手がけた福澤 克雄

「新参者」「麒麟の翼」において、加賀が配属先の管轄である日本橋に積極的に溶け込もうとしていることや、優秀ながら依然として所轄の刑事のままでいる理由が語られている。

 原作は、このミステリーがすごい! 2014年版では10位、2013年の週刊文春ミステリーベスト10では2位を記録。2014年3月には、第48回吉川英治文学賞を受賞している。

 

 東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は、ハウスクリーニングの会社で働く滋賀県在住の40代の女性押谷道子。殺害現場となったアパートの住人は越川睦夫と名乗る男で、現在行方不明になっていた。

 松宮たち警視庁捜査一課の刑事たちが捜査にあたるが、押谷道子と越川睦夫の接点がまったく見つからず、捜査は難航する。滋賀県在住の押谷が何故東京で殺されたのか。

 やがて捜査線上に浮かびあがる女性演出家・浅居博美。押谷道子は学生時代の同級生である浅居博美を訪ねて東京に来たことが分かるが、浅居博美と越川睦夫の間にも接点がなく、捜査は進展しない。

 松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、捜査を進めるうちに遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見する。その事実を知った加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した加賀の母に繋がっていた。

 松宮から浅居博美についての意見を求められ、初めは管轄違いということもあり捜査の助言を送る程度だった加賀だったが、アパートで見つかった日本橋にある橋の名前を月毎に書き込んだカレンダーの存在が、この事件を思わぬ形で加賀の中で燻っていた失踪した母に関する謎と直結させることとなる。

 カレンダーには、(1月:浅草橋、2月:左衛門橋、3月:西河岸橋、4月:一石橋、5月:柳橋、6月:常盤橋、7月:日本橋、8月:江戸橋、9月:鎧橋、10月:茅場橋、11月:湊橋、12月:豊海橋)と書かれていた。

 

出演  加賀恭一郎:阿部 寛、浅居博美:松島菜々子

    松宮脩平:溝畑 淳平、浅居忠雄:小日向文世

    父・隆正:山崎 努、田島百合子:伊藤 蘭

その他 田中 麗奈キムラ緑子烏丸せつこ

    飯豊まりえ桜田ひより中島ひろ子梅沢 雅代

    春風亭昇太上杉 祥三及川 光博音尾 琢真

                       等々。

カメオ 香川 照之恵 俊彰杏   

 

 テレビシリーズ、SPドラマ版、前作映画も全て観ている。

今回も鑑賞者を裏切らない、東野圭吾らしいミステリーが展開されている。

 加賀恭一郎の生い立ち、人生まで語られてくるのだから、相当力が入っている原作を、その世界観のまま演出されている。原作がしっかりしていると、脚本も演出もその原作を超えるような感じになるのだろうか。

 母を思う気持ちと、父を思う気持ち…。浅居博美の凄惨な過去。
 長い間の点と点が、ある事件をきっかけに繋がりだした。主人公が動く最大の動機は母の謎のメモ。すべてが巧みに繋がっていくさまは見事としか言いようがない。そして最後は……。

 ふっと思うと、松本清張の「砂の器」思い出される。評価でもその事がたくさん書かれていた。

 暫くしたら、また観たくなるだろう作品である事は間違いない。

 

 

 2020年公開の「前田建設ファンタジー営業部」を観た。

 ダム、トンネルなど数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設工業株式会社が、「アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?」を本格的に検証するWEBコンテンツ「前田建設ファンタジー営業部」を実写映画化。

「サマータイムマシン・ブルース」の劇団ヨーロッパ企画上田 誠が脚本、監督は「あさひなぐ」「賭ケグルイ」英 勉

 

 まさに建設業界が先行きに不安を抱えていた2003年、バブル崩壊後の建設業界。前田建設の広報グループ長は、「アニメ『マジンガーZ』の出撃シーンに登場する汚水処理場に偽装した地下格納庫を現状の技術と材料で建設したらどうなるのか?」を検証するWEB連載を提案する。

 広報グループの若手社員・土井は嫌々ながらもプロジェクトに携わるうち、架空のものに対してどこまでも真剣に向き合う社内外の技術者たちの姿を目の当たりにし、意味のないことだと思っていた業務に本気で取り組むようになっていく。

 

出演 ドイ:高杉 真宙、ベッショ:上地 雄輔

   チカダ:本多 力、エモト:岸井ゆきの

   ヤマダ:町田 啓太、上司・アサガワ:小木 博明

   機械グループ部長:六角 精児

その他 山田 純大鈴木 拓鶴見 辰吾濱田マリ

    高橋 努水上 剣星  等々。

    永井 豪も本人役で出演。

 

 マジンガーZの格納庫を作る設計と見積をするだけという話。但し、実際の建設会社が実際の作業での見積もりを出していく。これは実話。ただ単純な気持ちで観始め、面白かったという感想を持ったので、ちょっと調べてみたら、本当の建設会社が製作の映画で、本編に登場する技術や数字は本物だったとの事。ありえないでしょう、秘密を公表するなんて。

 だから、問題を克服して、目的を達成するためには、体力、知力は大切だが、それ以上に必要なのは、問題に立向って解決しようとする情熱、やる気だということが画面から伝わってくる。普通の人が徐々に熱くなっていくプロセスを描いているので、自然に感情移入できる。

 ファンタジー営業部員たちは、無理難題にがむしゃらに取り組み、時間を忘れて没頭していく。そして問題が解決すれば無邪気に喜ぶ。彼らの行動は働くことの原点であり、働くことに喜び、働き甲斐に満ちている。

 働くことは楽しい事で目標があり、仲間と積み重ねていく事が出来、そうすれば……。と思わせる作品なのだろう。

 実際の前田建設ファンタジー営業部では「マジンガーZ」以外にも「銀河鉄道999」の高架橋や「機動戦士ガンダム」の地球連邦軍基地ジャブローも見積もっているらしい。公式HPをチェックしてみたくなった。

 

 

 2020年公開のデンマーク映画「アナザーラウンド」を観た。

 監督はアカデミー外国語映画賞にノミネートされた「偽りなき者」トマス・ビンターベア

 

 冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、心理学を教える同僚が、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を常に0.05%とするのが理想。するとリラックスでき、仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる。」という理論を証明するため、実験をすることに。

 そもそも「血中アルコール濃度を常に0.05%とする」とは、ワイン1,2杯分の量のアルコールを飲み続けないといけない。

 朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。仲間4人でこの理論を「仮説」として「検証」することに。そしてキチンと論文としてまとめることに。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。

 しかし同僚たちもゆっくりと確実に人生がいい方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり。

 

出演 マーティン:デンマークを代表する人気実力派俳優の

        マッツ・ミケルセン。監督とは前作でも。

   トミー:トマス・ボー・ラーセン

   ニコライ:マグナス・ミラン

   ピーター:ラース・ランゼ

その他 マリア・ボネヴィースーセ・ウォルド

    マグナス・シャロブ     等々。

 「偽りなき者」でもミケルセンと共演したトマス・ボー・ラーセンやラース・ランゼらがマーティンとともに実験を行う同僚教師を演じた

 

 新型コロナウイルスの影響で通常開催が見送られた2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されたほか、第78回ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞にノミネート、第93回アカデミー賞でも監督賞と国際長編映画賞の候補に挙がり、国際長編映画賞を受賞した。

 

 普通お酒の飲みすぎで、ちょっと可笑しくなってしまったという映画は、お酒の飲みすぎは注意という、啓蒙的な教育的作品になるのだが、この作品は違う。

 この4人の先生達の気持ちは痛いほどわかる。酒を飲んでパフォーマンスが向上した授業は、私も生徒達と一緒に楽しめた。

 彼らは失敗を受け入れ、でも人生を肯定しようとする。そこにはうだつのあがらない男たちがなんとかして喜びや楽しみを自分たちの手で作り出そうとする姿がある。

 生徒たちも加わり踊るラストシーンは、なんとなく意味は分からなかったが、男たちの楽し気な表情を見て、この作品は良い作品だったのだ、と念推されているようで、ある意味感動してしまったりした。

 

 

 2007年公開のSF伝奇時代劇「大帝の剣」を観た。原作は夢枕 獏。監督は「トリック」堤 幸彦

 関ヶ原の戦いから間もない江戸時代の初めの日本を舞台に、持ち主に絶大な力をもたらすという“三種の神器”を巡り、真田衆や伊賀衆などの忍者や、宮本武蔵や佐々木小次郎、柳生十兵衛などの歴史上の人物や宇宙から来た地球外生物らとバトルする荒唐無稽な物語。

 

 徳川幕府誕生から数十年後。“オリハルコン”という地球外金属で作られた三種の神器のうち“大帝の剣”を持つ男・万源九郎は、残り2つの神器を探して旅を続けていた。道中、彼は幕府に命を狙われる姫を救うが、彼女の体内には神器を狙う宇宙人が寄生していた。

 異形の大剣を背負った巨漢・万源九郎を主人公に、壮大な物語が繰り広げられる。その大帝の剣は、大抵の剣をものともしない頑強さを持つ。

 

出演  万源九郎:阿部 寛

    豊臣の血を引く姫・舞・蘭:長谷川京子

    佐助:宮藤官九郎、権三:遠藤 憲一

    黒虫:六平 直政、霧の才蔵:本田博太郎

    牡丹(天草四郎):黒木メイサ、姫夜叉:杉本 彩

    真田幸村:津川 雅彦

その他 大倉 孝二竹内 力徳井 優前田 愛

    谷口 高史 、船木 誠勝  等々。

ナレーター  江守 徹

 

 テレビドラマの時の堤幸彦は大好きだった。「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」、特に「トリック」は傑作ではないだろうか。

 ただ、映画ではその力は出ていないと思っていた。その気持ちでこの作品を観てしまった。

 だから、ただ単に製作者が楽しいだけの作品で、観客にはそれが伝わって来ないという代表の作品ではないだろうか。阿部寛が台詞で標榜する『面白ければそれでいい』が、自分たちの為だけなのか。ナレーションが多用されていて鬱陶しいくてしょうがなかったのは私だけか。

 

 考えようによっては、ここまでバカバカしくエンタメに振り切っていると、これも良いのかという錯覚ということで楽しめる作品となっている。
 キャストはとにかく良い。遠竹内力、六平直政といったベテラン勢が特殊メイクで妖怪役に挑む。女性陣もお勧め、黒木メイサが良い。

 ただ、多分に「トリック」シリーズのカラーが感じられるのは、監督のカラーということだろう。

 観る時に、どこまで自分を吹っ切れるか、我慢できるかが勝負の作品か。

 やっぱり、テレビでの天才も、テレビドラマと映画は違うのだなぁ~と、改めて思い知らされてしまった。

 

 

 2022年公開の「デイ・トゥ・ダイ 最後の戦い」を観た。ブルース・ウイリスが、引退発表後に何作か出演したうちの1作。監督は、ウェス・ミラー

 

 かつて高校立てこもり事件で人質の救出に失敗し、解散となった軍の特殊部隊。元隊員のコナーは保護観察官になるが、正義感から仮釈放中で保護観察対象の青年を助けようとギャングの手下を射殺。丁度駆けつけてきた組織のボスにその場は見逃してもらうのだが、報復として妻を誘拐されてしまう。要求された身代金は200万ドル、残された時間は12時間。妻を救出するため、彼は元特殊部隊の仲間に助けを求める。

 チームは指定された場所から金を盗み出す。その金を持って敵のアジトへ向かうのだったが、コナーが従事した過去の作戦の事でもめ事となり、敵と銃撃戦にとなる。

 金を奪い返したコナーらは、海外脱出を図り空港へ急ぐ……。

 

出演  コナー:ケビン・ディロン

    麻薬の元締めと繋がった悪徳警官・アルストン

                :ブルース・ウイリス

その他 ジャンニ・カッバルディフランク・グリロ

    ブルック・バトラーレオン、   等々。

 

 誘拐された妻を救出に、昔の仲間と向かう。悪の元締めのところに。良くある話だが、それなりにいつも満足してしまう展開の話なのだが、今回は……残念。

 主役のキャストが違う、もっと良い人が沢山いただろうに。

 ブルース・ウイリスが悪役で出ているからと思ったが、登場シーンは少なく、最後は死んでしまうし。何だったのでしょうか。何のために出演していたの?

 正直、時間の無駄でした。