○5月16日

 邦画が5作品で、主役を若手の女優さんがしています。それぞれの作品で、彼女たち持ち味を出しているようには見えます。

 

 2014年公開の「舞妓はレディ」を観た。

 地方出身の女の子が、京都の架空の花街・下八軒を舞台に、舞妓になるために頑張る成長物語を、要所に歌唱とダンスを挟み数々のオリジナルソングが彩るミュージカル仕立てで描かれた作品。

 監督は、「Shall we ダンス?」それでもボクはやってない」の周防 正行。製作は、フジテレビ・東宝、電通 。

どこかで聞いたことがあるようなタイトルは、オードリー・ヘップバーン主演の名作「マイ・フェア・レディ」

 

 小さいながら歴史ある京都の花街、下八軒では、節分の夜、芸舞妓たちがお化けの仮装に身を包み馴染みの旦那たちとお座敷にいる。

 下八軒の芸舞妓は後継者不足に悩まされ、老舗のお茶屋・万寿楽の百春が12年も襟替え(見習いの舞妓から芸妓になること)をできずたったひとりの舞妓を続け、他はアルバイトの舞妓に頼っているありさまである。

 その万寿楽に、きつい訛りの鹿児島弁と津軽弁を話す少女・春子が突然訪れ、舞妓になりたいと訴える。春子は百春のブログを見てやってきたのだ。

 誰からの紹介も経ていない春子を、女将の千春は門前払いする。様子を見ていた馴染みの旦那・北野は春子の訛りを聞きとても舞妓にはなれるまいというが、研究のため万寿楽に出入りしている言語学者の京野法嗣は、逆に強い興味を惹かれ、彼女を舞妓に育て上げたら北野に自分のお茶屋遊び代の面倒をみてもらうことを賭け、春子の後見人になる。

 かくして万寿楽の仕込み(見習い)になった春子だったが、花街の厳しいしきたりや稽古、慣れない言葉づかいに悪戦苦闘。

 そしてある日、突然声が出なくなってしまい……。

 

出演  春子:上白石萌香、京野法嗣:長谷川博己

    置屋の女将・小島千春:富司 純子

    先輩舞妓・百春:田畑 智子

    先輩芸妓・里春:草刈 民代、豆春:渡辺えり

    男衆・青木:竹中 直人

    京野の弟子・西野:濱田 岳

    馴染み客:岸部一徳高嶋政宏小日向文世

    津川雅彦

その他 中村 久美高橋 長英瀬戸 朝香加瀬 亮

    妻夫木聡田口 浩正渡辺 大六平 直政

    岩本 多代  等々。

 

 フジテレビ製作の映画らしい作品だったのでは。出演者、展開「Shall we ダンス?」の匂いがプンプンしている。

 主役の春子役には、2011年・第7回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞の上白石萌音が、800名以上を集めて半年をかけて行ったオーディションで抜擢された。

 また、劇中に使われる曲は、監督のいとこである作曲家の周防 義和の作品。

 開同年の7月2日にはフランス・パリで開催されるJapan Expoに招待作品として出品された。

 その他賞レースでは、

第38回山路ふみ子映画賞 文化賞(周防正行)

             映画功労賞(富司純子)

             新人女優賞(上白石萌音)

第38回日本アカデミー賞 最優秀音楽賞(周防義和)

             優秀助演女優賞(富司純子)

             新人俳優賞(上白石萌音)

第69回毎日映画コンクール  音楽賞(周防義和)

第10回おおさかシネマフェスティバル 音楽賞(周防義和)

 

 日本公開初週の2014年9月13日・14日における興行成績は全国300スクリーン公開で動員9万1,772人、興収1億1,015万8,500円であった。全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)では初登場5位。観客は30代から60代の年齢の高い層が多く、男女比は54対46だったとか。

 

 ミュージカル『舞妓はレディ』舞台版として、博多座の企画・製作により2018年 3月に舞台化され上演されている。

 

 

 2016年公開の「あやしい彼女」を観た。20歳の姿に若返ってしまった毒舌おばあちゃんが巻き起こす騒動を描いた2014年の韓国のヒット映画「怪しい彼女」のリメイク作品

 監督は、「謝罪の王様」「舞妓Haaaan!!!」水田 伸生日本の他に、中国、ベトナムでもリメイクされている

 

 73歳の瀬山カツは、早くに夫を亡くし、頑固でおせっかいな性格のため、周りからは敬遠されがちだったが、女手ひとつで娘を育てあげ、自分の望む人生を送ることができなかった。

 ある日、キャリアウーマンに育っていた娘とケンカして家を飛び出してしまった。カツが夜道を歩いていると、大好きなオードリー・ヘップバーンの写真を飾っている見たこともない小さな写真館を発見。「私がこのカメラでお姫様にしてあげますよ」そう微笑店主の言葉で、そこで写真を撮る事に。撮り終えて店を出ると、ナント20歳の姿になっていた。

 かつての美しい姿を取り戻したカツは、髪型やファッション、さらに名前も節子と変え、新しい人生を楽しみはじめる。

 やがて商店街ののど自慢大会に出場し、昭和歌謡を熱唱して会場中を魅了した彼女に、昔夢見ていた歌手になるチャンスが舞い込んできた。

 

出演 大鳥節子(若返ったセツ):多部未華子

瀬山カツ:倍賞美津子

娘・幸恵:小林 聡美、孫・翼:北村 匠海

中田次郎:志賀廣太郎、音楽プロデューサー・小林:要 潤

その他 金井 克子温水 洋一野村 周平  等々。

 

 ヒロインの20歳の姿を多部未華子が、73歳の姿を倍賞美津子が演じる。

 現実離れした話だが、老婆役の倍賞美津子と若返った老婆役の多部未華子の演技力が抜群なので、話の展開がリアルに感じられる。多部未華子の若い姿の老婆が兎に角良い。
 さらに、「見上げてごらん夜の星を」、「真っ赤な太陽」、「悲しくてやり切れない」などの、私の世代にはたまらない昭和歌謡の熱唱シーンが圧巻。

 選曲も最高だが、多部未華子の哀切感溢れる歌声、表情、仕草、衣装で、我々観客は、老婆が過してきた時代の雰囲気に浸ることが出来る。あの日に戻ることができる。
 改めて、多部未華子はこんなにお芝居上手かったでしたっけ。と、思わざる負えない作品。

 基本韓国物は映画でもドラマでもあまり好ましく見ないのだが、この作品は主演の二人が、私の考えを変えさせてくれた。

(但し、とりあえずこの作品だけですが……。)

 

 

 2021年公開の2019年・2020年と2シーズンにわたって連続ドラマ化されていたドラマの劇場版「劇場版 ルパンの娘」を観た。ドラマを2シーズンとも観ているので、お約束事だったろう。原作は横関 大「翔んで埼玉」「テルマエ・ロマエ」などの武内 英樹監督が、ドラマ版に続きメガホンをとっている。

 

 代々泥棒一家“Lの一族”の娘として生まれた三雲華は、家業を継ぐことを拒み、普通の人生を求め、図書館司書として働いていた。

 運命的な出会いから代々警察一家の息子・桜庭和馬と許されざる恋に落ちた華は、いくつもの障害を乗り越えて、和馬と結ばれる。

 全国に指名手配されていたLの一族を表向きには死んだことにしているため、2人の結婚は事実婚。和馬は職場では独身としてふるまい、華の存在はないことにされていた。それでも2人は、最愛の娘・杏を授かり、幸せな毎日を送っていた。

 これがドラマの内容。

 

 そんなある日、華の父・尊が泥棒引退を宣言。これまで迷惑をかけたお詫びにと、華と和馬にちょっと遅めの新婚旅行をプレゼントする。

 親子水入らずで新婚旅行先のディーベンブルク王国観光を満喫していると、そこにはLの一族が!?実は尊はこの国で、Lの一族最後の大仕事を計画していたのだった。まさかの展開にあきれる華。

 しかしその夜、杏が謎の集団にさらわれ、引き換えにこの国に眠る伝説の王冠を要求される。二度と着ないつもりだった泥棒スーツに再び身を包んだ華は、尊、母・悦子、祖母・マツら一族と共に、王冠が眠る難航不落の城に忍び込むが、そこに謎の敵“JOKER”が立ちはだかる。すべてはLの一族絶滅のための罠だったのだ…! 和馬も人質に捕られ、事態はどんどん予測不可能な展開に。

 そして、ついにその姿を現したもう一人のLの一族・三雲玲。一族を離れ普通の生活を送っていたが、ある出来事で死んだとされていた玲が再び華たちの前に現れた目的とは!?Lの一族、三雲玲、そして三雲華。すべての真相には、決して盗み出せない家族の絆があった……。 

 

出演  三雲華:深田 恭子、桜庭和馬:瀬戸 康史

    三雲尊、渡部 篤郎、三雲悦子:小沢 真珠

    三雲渉:栗原 類、三雲マツ:どんぐり

    三雲巌:麿 赤兒、北条三雲:橋本 環奈

    三雲玲:観月ありさ

その他 市村正親藤岡 弘マルシア信田昌之

    大貫勇輔太田莉菜、  等々。

 

 連ドラの象徴的なシーンが映画で効果的に使われていて、これらは少しの映像やセリフだけですぐに理解ができた。ゆるく楽しみたい、という欲求を満たす“武内英樹監督ワールド”は、本作でも健在。

 外ロケが大変だったろうなと、スタッフさんの苦労が解かる作品でもある。

 唯、私としては待ち望んでいた劇場版ではなく、TVドラマ2シーズンとも観たので、お付き合いで観てしまった的な。

女優陣の中では、観月ありさがどっしりしていたか。最初はだれだか分らなかったこともある。

 

 

 2017年公開の劇作家・前川 知大率いる劇団イキウメの2005年東京サンモールスタジオで初演の人気舞台を映画化した「散歩する侵略者」を観た。2007年には小説としても出版されている。

 監督は、カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞を受賞した「岸辺の旅」黒沢 清

 

 数日にわたって行方がわからなくなっていた夫・真治が、まるで別人のように優しくなって帰ってきたことに戸惑う妻・鳴海。

 それ以来、真治は毎日どこかへ散歩に出かけるようになる。

 同じ頃、町で一家惨殺事件が発生し、不可解な現象が続発。取材を進めるジャーナリストの桜井は、ある事実に気づく。不穏な空気が町中を覆う中、鳴海は真治から「地球を侵略しに来た」という衝撃的な告白を受ける。

 

出演  加瀬鳴海:長澤まさみ、夫・真治:松田 龍平

    ジャーナリスト・桜井:長谷川博己

その他 高杉 真宙恒松 祐里前田 敦子

    満島新之助光石 研小泉今日子東出昌大

    笹野高史児嶋一哉  等々。

 

 多分、舞台は面白いのだろうな、と思えるような作品だった。舞台で展開するであろうの色々なアイデアを、黒沢監督の演出の、ショッキングな場面とほどよいユーモアが加わり、さらに映画らしい派手なアクションシーンも添えられて、映画としては成り立たせている。

 基本的に私は世間と違い、黒沢作品の評価は低いのだが、この作品は合格ラインか。出演者がそれぞれ役にはまっているのが良かったのかも。

 第70回カンヌ映画祭「ある視点」部門に出品された後、世界21か国で上映されたそうだ。

 

賞レースでは

第9回TAMA映画賞 最優秀作品賞

          最優秀女優賞(長澤まさみ)

           ※『銀魂』追憶『』『金メダル男』と

            合わせて受賞。

          最優秀新進男優賞(高杉真宙)

           ※『逆光の頃』『トリガール!』

            『想影』『ReLIFEリライフ』『P

            とK』と合わせて受賞。

第72回毎日エイガコンクール 女優主演賞(長澤まさみ)

スポニチグランプリ      新人賞(高杉真宙)

第72回東京スポーツ映画大賞 主演女優賞(長澤まさみ)

第91回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第5位

第41回ニホンアカデミー賞 優秀監督賞(黒沢清)

             優秀主演女優賞(長澤まさみ)

芸術選奨文部科学大臣賞映画部門(黒沢清)

 

 映画公開後、WOWOWでスピオフドラマも放送されている。

 

 

 1986年公開の時代劇「十手舞」を観た。「週刊サンケイ」連載の五社英雄、森幸太郎原作の劇画の映画化。監督は同作の五社 英雄

 影十手となって悪を闇から闇に葬る女性の姿を描いた時代劇。

 

 江戸時代、影十手と呼ばれる町奉行さえも手を出せない大きな悪を闇から闇に葬るものたちがいた。

 江戸伝馬町牢屋敷では、犯科帳で斬罪が申し渡された弥助たちが、江戸町奉行、内海孫兵衛の眼の前で影十手となる。20余年後、松平周防守は渡海赦免状(貿易許可証)を捏造して、江戸に棲む回般間屋叶屋源四郎に与え、そこを隠れ蓑に国禁であるところの抜け荷をやらせ藩の財政を裏から支えようとしていた。

 弥助たちは松平周防守を叩き落とすため、動かぬ証拠である海渡赦免状を手に入れようとする。

 弥助は松平の手先、牙の伝蔵の情婦、お蝶と出会う。彼女は弥助が捨てた妻お咲と瓜二つだった。実は弥助の娘だったのである。母と自分を捨てた父親を憎んだお蝶は、その後死んだお咲の仇を討つため、弥助を倒す覚悟でいた。そのために弥助の敵、伝蔵の配下となったのだ。二人の再会を蔭でのぞき見た薊のおれんの通報でそのことを知った伝蔵は、お蝶をおびき寄せる。

 弥助たちは拷問にあい絶命、伝蔵も死にお蝶は捕えられた。死刑を宣告された彼女に、孫兵衛は弥助のやり残した大仕事を片づけるため影十手になれとせまる。父に人間の悲しさを見たお蝶は十手を握る。

 一方、源四郎は下女の帯締めに隠された渡海赦免状を捜していた。いきさつを知らない妻花絵が人手に渡してしまったのである。源四郎の目付、佐吉はおれんを使い捜索を続行させた……。

 

出演  お蝶:石原真理子、内海孫兵衛:渡瀬恒彦

    弥助:川谷拓三、おれん夏木マリ

    伝蔵:地井武男、叶屋源四郎:世良公則

その他 高木 澪佳那 晃子池畑慎之介萩原 流行

    竹中 直人高田 純次小沢 昭二

    小沢栄太郎       等々。

 

 お蝶の得意技が、新体操のリボン運動のような技。あれくらいで剣の達人が負けてしまうだろうか。企画倒れのような。

 話の内容より、五社監督の時代劇と言えば、エロティシズムのある色っぽいシーンや、女同士の取っ組み合いシーンとかが期待できるが、この時代はまだまだ確立していなかったか。夏木マリと佳那晃子がちょっとだけだった。

 Vシネ的時代劇としてみれば、出演者がしっかりしているので楽しめるか。

 劇場で観るほどの作品でもないか。