NHKスペシャル

「下山事件」

 

 私の大好きな番組にNHKスペシャル「未解決事件」のシリーズがある。今回は、3月30日に放送されたFile10、戦後史最大のミステリーと言われている、国鉄総裁が殺害された「下山事件」が取り扱われていた。録画をしていたその番組をやっと観る事が出来た。

 1部がドラマ仕立て、2部がその解説。いつもの流れだ。ドラマ部分は重厚な作品で、再現ドラマというより、普通の歴史ドラマとしても十分に楽しめる内容。出演者も一流どころが演じている。2部の解説も、淡々としたナレーションで、事件の重みを感じさせる。

 

 今までの「下山事件」を解説する番組は、事件の背景を追う内容が多かったが、今回は検察の捜査とか、今までは登場しなかった、新事実が発見されたとの事で、実際の犯行グループの一部名前なども特定されて放送されている。事件から75年も経っているのに、まだ新事実が発見されるとは、物凄い事だ。

 

 私がなぜこの事件に興味を持っているかというと、事件は1949年7月5日に起こった。年は違うが、この7月5日は私の誕生日。そんな縁から興味を持ったのだった。それに、共産運動とかGHQの暗躍とか、事件の背景も、興味を持つ要因となっている。

 

 そもそも、この事件の一番最初の出会いは、中学生の頃に姉の本棚から引っ張り出して読んだ、1948年に起こった事件で、1959年に発表された松本清張の「小説帝銀事件」や1959年に起こった、外国の牧師が起こしたと言われているスチュワーデス殺人事件を題材にした「黒い福音」の2冊を読み、松本清張という人を気にするようになり、その後1960年にから発行された、戦後の日本の事件を扱った「日本の黒い霧」シリーズの、1話目がこの下山事件であったのだ。

 だから暫くは、私のこの事件に対する考えは、全て松本清張さんの意見だといっても過言ではないくらいだった。

 その後、ある程度大人になってからは、テレビドラマや、ドキュメンタリー、ノンフィクション番組でこの事件が取り上げられるときは、必ず観るようにしていた。

 

 今回の番組を観るまでの私の意識としては

1)確実に他殺で、それは国鉄労働者の首切りだけが理由で

  はない

2)日本を共産主義にしないための人身御供宇的な殺人だっ

  た

3)実行はGHQ指導で行われた

4)7月5日に列車のひかれた地点を歩いていたとされる人物

  は、まだ生きていると錯覚させるための別人

5)死因は轢断ではなく、どこかの工場跡辺りで、全身から

  血を抜かれて殺害された

 

 以上くらいが知識となっていた。

 

 しかし今回は、それプラス、ロシアとアメリカの韓国人2重スパイが登場し、ロシア犯行説にするための、アメリカの動きとか、実際に犯行に加わったGHQの諜報機関の日本人2世の記録とか、最大の事は殺害の理由で、今まで言われていた事の他に、朝鮮戦争に対するアメリカからの強硬な鉄道使用について、唯一反対していた下山総裁、だから……、とか、昭和史の裏のフィクサーも登場したり、新事実が沢山出ていて、頭の中は興味津々になり、飽和状態になってしまった。

 

 ではなぜ今回このような新事実が出てきたのだろう。今回の番組は、当時の検察側の主任検事である「布瀬 健さん」が残していた捜査資料から出てきた事が一杯あったそうだ。

 先にも書きましたが、今までだと事件の背景を主にしていたが、今回は事件の捜査やどこで圧力で断念したかなどが、きちんと描かれていた。

 布施健さんと言えば、あの日本の総理大臣・田中角栄氏を逮捕した時の検事総長の人。その布施検事の記録なのだから、信憑性がある事は間違いないだろう。

 その他、アメリカの公文書館にもNHKは取材に行っている。そこでも貴重な事実が。

 

 この事件、まだまだ調べる事はたくさんあるだろう。もう当然時効になっている事件だが、今回出てきた事実を調査し、出来るだけ探り出していただくことを、NHKには、望んでしまう。期待しています。もちろん他の昭和の謎の事件もお願いします。

 

 

○ドラマの出演者

布施検事:森山 未來

朝日新聞・矢田記者:佐藤 隆太

松本清張:大沢たかお(前回の松本清張の回の流用だろう)

韓国人スパイ・李中煥:玉置 玲央

溝畑 淳平前田旺志郎森崎ウィン渡部 篤郎  他

 

 色々なジャンルで放送されるNHKスペシャルは、同じような民放の番組からは群を抜いている。

 「アナザーストーリー」は、色々な当事者たちからの視点という構成で、好きです。今まで外に出てこなかった内容が多く、でも分かり易い。「プロジェクトX」も復活した。

 これからも大人がしっかり観られる番組の放送、宜しくお願いします。