〇 1月22日
1992年公開の「ア・フュー・グッドメン」を観た。アメリカ軍の軍法会議をテーマにして、ブロードウェイでロングラン・ヒットとなったアーロン・ソーキンの脚本の、同名舞台劇を基にして彼自身が脚色し映画化。監督は「ミザリー」のロブ・ライナー。
キューバ米海軍基地で起った不審な殺人事件の真相を探る若き弁護士の姿を中心に、軍隊内の組織悪を暴く過程での、登場人物たちの人間的成長を描くドラマ。
映画の主要部分を成す法廷場面は、カリフォルニアのカルバー・スタジオに巨大セットを組んで撮影された。
キューバの米海軍基地で、海兵隊員サンティアゴが就寝中に襲われて死んだ。犯人は同部隊のダウニー一等兵とドーソン兵長だった。検察官ロス大尉は、2人を殺人罪で起訴する。事件の背景にコードR(規律を乱す者への暴力的制裁)の存在を感じた内部調査部のギャロウェイ少佐は、被告の弁護を申し出るが、ハーバード出身で法廷経験のないキャフィー中尉が任命された。
キャフィーは偉大な弁護士だった父の影を意識するあまり、担当した事件はすべて検察側との事前取引で処理してきた男だった。キャフィーの助手として同僚のウェインバーグ大尉が選ばれ、ギャロウェイを中心に調査を開始するが、やはり被告たちは、上官ケンドリック中尉からコードRの命令を受けていた。
サンティアゴは訓練に絶えかね、ドーソンによる不法発砲事件の情報提供と引き換えに、基地からの転籍を申し出ていた。それを知った最高指揮官ジェセップ大佐は激怒し、マーキンソン中佐の反対も聞かずコードRの実行を示唆したのだった。
命令に忠実に従っただけで、殺意は無かったのだという言葉に心を動かされたキャフィーは、被告の無罪を申し立て、法廷での裁判が始まった。裁判の途中、失踪していたマーキンソンが現れ、真実を証言すると約束したりもするが、直前に自殺してしまい審理は困難を極める。苦悩しつつキャフィーは、ジェセップを証言台に立たせることを決意した。法廷での2人の対決は、キャフィーの巧みな弁舌で、ジェセップの権力への盲信を突き、自らの口からコードRの指令を出したことを白状させる。被告たちは無罪となるが、軍に対する背信により除隊処分となってしまう。ドーソンはキャフィーに、この裁判を通じて、自分が守るべきものは軍の規律ではなく弱者であるサンティアゴだったことを悟ったと語り、2人は互いに尊敬をこめた敬礼を交し合うのだった。
出演は、主演のダニエル・キャフィ中尉にトム・クルーズ、ジェセップ大佐にジャック・ニコルソン、ギャロウェイ少佐にデミ・ムーア、ジャック・ロス大尉にケヴィン・ベーコン、ケンドリック中尉にキーファー・サザーランド、その他共演が、ケヴィン・ボラック、ジェームス・マーシャル、J・T・ウォルシュ、クリストファー・ゲスト、ノア・ワイリー、サンダー・バークレー 等々。
作品を観る前に想像していた事とは違い、笑いもなく、軍隊内での落ちこぼれに対する規律や制裁(コードR)がテーマとなり、法廷シーンが続き、緊張の中、どんどん軍隊の縦社会が浮き彫りにされ、軍隊組織に潜む闇、命令の当事者である軍隊上層部、犠牲となる兵隊、軍隊のために命令を実行するのが当然と信じる実行者の兵隊、そして容疑者とはいえ上官たちに挑まねばならない主人公の弁護士たちの奮闘が描かれている。
「命令でやったんだけれども、それは正義ではなかった」と涙ながらに自戒する兵隊たちの姿にこの作品の真のテーマがあるのだろう。
ジェセップ大佐のジャック・ニコルソンがやはり目を一番引いてしまった。法廷での大佐のセリフ「You can't handle the truth!(『おまえに真実は分からん!』)」は、アメリカ映画の名セリフベスト100の29位にランクインされているという事。
〇各映画賞ノミネート
アカデミー賞- 作品賞、助演男優賞、編集賞、音響賞
ゴールデングローブ賞 - 作品賞 (ドラマ部門)、監督賞
主演男優賞、助演男優賞、脚本賞
MTV-ムービー・アワード - 女優賞、男優賞、悪役賞
エドガー賞 - 映画賞
〇各映画賞受賞
MTVムービー・アワード - 作品賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー- 助演男優賞
ピープルズ・チョイス・アワード - 「最も好きな映画」賞、
「最も好きなドラマテックな映画」賞
2010年公開の「最後の忠臣蔵」を観た。原作は、忠臣蔵の後日譚を描いた、池宮彰一郎の同名小説。監督は、TVシリーズ「北の国から」を手がけた杉田 成道。
赤穂浪士の吉良邸討ち入りで、大石内蔵助率いる46名が切腹により主君に殉じた中、密かに生き残った瀬尾孫左衛門と寺坂吉右衛門という2人の武士がいた。討ち入りの事実を後世に伝えるため生かされた寺坂は、事件から16年後、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾に巡り会い、瀬尾の逃亡の真相を知る。ワーナーエンターテイメント ジャパンのローカル・プロダクション本格的第1弾として製作された。
『サムライ・シネマキャンペーン』と題し、『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『雷 桜』『武士の家計簿』と併せて、2010年公開の時代劇映画5作共同のキャンペーンも行われた。
キャッチコピーは「生き尽くす。その使命を、その大切な人を、守るために。」。
元禄15年の赤穂事件から16年。赤穂浪士だった寺坂吉右衛門は浪士の十七回忌法要が行なわれる京へと向かう。
赤穂藩の足軽であった寺坂は、討ち入りの直後に大石内蔵助から「事件の真実を後世に伝え、浪士の遺族を援助せよ」との命を受け、一人だけ生き残ったのだ。遺族は散り散りになり居所も知れず、ようやく最後の遺族と会って使命を果たした寺坂だったが、京への道すがら、赤穂藩で盟友だった瀬尾孫左衛門と再会する。瀬尾は浪士に加わりながら討ち入りの直前に逃亡した男だった。
実は、瀬尾も大石内蔵助の密命を帯びていたことを知る寺坂。討ち入りの準備中、内蔵助は妻子と離れ京で暮らしたが、その時の妾が赤ん坊を産んでいた。内蔵助は自分の家臣である瀬尾に、その赤ん坊の面倒を託したのだ。町人に身をやつした瀬尾は古物商を営み、表向きは実の娘と称して遺児の可音を大事に育てていた。
美しく上品な娘に成長した可音に縁談が持ち上がった。相手は豪商として知られる茶屋四郎次郎の息子で、またとない良縁だが、可音は浮かない顔だった。自分の身の上を知っている可音は、優しい瀬尾に恋をしていたのだ。
瀬尾に想いを打ち明ける可音。だが、可音を「可音さま」と呼び主と仰ぐ瀬尾は、愛情に溢れながらも彼女の気持ちに応えなかった。諦めて縁談を受け入れる可音。花嫁行列は籠ひとつきりで、付き添いは瀬尾のみだった。そこへ正装した寺坂が、嫁入り道具を担いだ盛大な男衆を引き連れて駆けつけた。更に次々と同道を願い出る旧赤穂藩の藩士たち。
婚礼の席から抜け出して帰宅し、仏間に入る瀬尾。仏壇の大石内蔵助の位牌に向かい、「遅ればせながらお供いたします」と呟いた瀬尾は、使命を果たし殉死を覚悟していた。駆け付けた寺坂の介錯も断り、切腹して果てる瀬尾。寺坂は涙して盟友の遺骸に平伏した。
主役の二人、瀬尾孫左衛門・役所 広司、寺坂吉右衛門・佐藤 浩市、大石内蔵助・片岡仁左衛門、大石の隠し子可音・桜庭ななみ。
その他共演が、山本 耕史、風吹ジュン、田中 邦衛、伊武雅刀、安田 成美、柴 俊夫 等々。
忠臣蔵の後日譚。寺坂吉右衛門の行脚についてはもう知ってはいたものの、そのお話にもう一人の登場人物と、その後の人間関係をプラスし、重厚な時代劇として、観る者の心をしっかりととらえるように作られている。さすが「北の国から」だと思う。私もその術中にまんまとはまってしまった。但し、心地よい。
映画で感動をしようと思うと、日本映画だとどうしても時代劇になってしまう。それも古臭いと思われるかもしれないが、男と男の生き様みたいな所が、どうしても感動してしまう。
最近、この手の作品が製作される事が少なくなってきている。当然その役に対応できる役者も少なくなってきている。
この作品は、日本映画界としても大切に構成に残したい作品だ。
2011年公開の「マネー・ボール」観た。原作は、マイケル・ルイスによる『マネー・ボール奇跡のチームをつくった男』。
全米約30球団の中でも下から数えたほうが早いといわれた弱小球団のアスレチックスを独自の「マネー・ボール理論」により改革し、常勝球団に育てあげたビーンの苦悩と栄光のドラマを描く。
監督は「カポーティ」のベネット・ミラー。「シンドラーのリスト」のスティーブン・ザイリアンと「ソーシャル・ネットワーク」のアーロン・ソーキンが脚本を担当した。
かつて超高校級選手としてニューヨーク・メッツからドラフト1巡目指名を受けたスター候補生・ビリー・ビーンは、スカウトの言葉を信じ、名門スタンフォード大学の奨学生の権利を蹴ってまでプロの道を選んだ。
しかし、それほどの成績を残せず、鳴かず飛ばずの日々を過ごし、さまざまな球団を転々としたのち現役を引退した。その後、ビーンはスカウトに転身し、第二の野球人生を歩み始める。
2001年のディビジョンシリーズで、アスレチックスはヤンキースに敗れ、オフにはスター選手であるジョニー・デイモン、ジェイソン・ジアンビ、ジェイソン・イズリングハムの3選手のFA移籍が確定的となった。
この時アスレチックスのGMに就任していたビーンは、2002年シーズンに向けて戦力を整えるべく補強資金を求めるも、スモールマーケットのオークランドを本拠地とし、資金に余裕の無いオーナーの返事はつれない。
ある日、トレード交渉のためにインディアンスのオフィスを訪れたビーンは、イエール大学卒業のスタッフ、ピーター・ブランドに出会う。彼は各種統計から選手を客観的に評価する『セイパーメトリクス』を用いて、他のスカウトとは違う尺度で選手を評価していた。
ブランドの理論に興味を抱いたビーンは、その理論をあまり公にできず肩身の狭い思いをしていた彼を自身の補佐として引き抜き、他球団からは評価されていない埋もれた戦力を発掘し、低予算でチームを改革しようと試みる。
そして………。
主役のビリー・ビーンにブラッド・ピット、ピーター・ブランドンにジョナ・ヒル。
共演者が、フィッリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト、クリス・ブラッド、グレン・モーシャワー、アーリス・ハワード、ロイス・クレイトン 等々。
この時にアスレチックスが行った球団経営の方法とか、選手の査定に関しては、現代の球団経営では、当たり前のようになっている。
基本的に私はアメリカンドリーム的な映画は大好きだ。夢が叶うまでの道のりの描き方が、アメリカ映画はうまい。その道筋にきちんとはまってしまうのが私なのだが。
第36回日本アカデミー賞 外国作品賞ノミネート
第84回アカデミー賞 ノミネート
作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚色賞・編集賞・
音楽録音賞
第69回ゴールデングローブ賞 ノミネート
最優秀作品賞(ドラマ)・最優秀主演男優賞・
最優秀助演男優賞・ 最優秀脚本賞
2012年のアカデミー賞で6部門に、ゴールデングローブ賞で4部門にノミネートされたが、何一つ賞は獲れなかった。
第24回東京億歳映画祭にて公式クロージング作品としてアジアプレミア上映。
2022年公開の「ウェディング・ハイ」を観た。「地獄の花園」「殺意の道程」などで脚本家としても才能を発揮するお笑い芸人バカリズムのオリジナル脚本。結婚式を舞台に描いた群像コメディ。監督は「勝手にふるえてろ」「私をくいとめて」の大九 明子。
結婚式、それは新郎新婦にとって人生最大のイベント! お茶目だけど根は真面目な石川彰人といつも明るい新田遥のカップルも、担当ウェディング・プランナーの中越に支えられながら準備を済ませ、ようやく式当日を迎えていた。
しかし・・・結婚式に人生を賭けていたのは2人だけじゃなかった⁉︎ 新郎新婦の紹介VTRや主賓挨拶、乾杯の発声など、結婚式お決まりの演目に並々ならぬ情熱を注ぐ参列者たち。 熱すぎる思いが暴走し、式は思わぬ方向へ・・・ 中越は新郎新婦のSOSを受け、披露宴スタッフと力を合わせ様々な問題を解決しようと奔走する。 しかし、更に式場に遥の元カレや、招かれざる闖入者も現れて――⁉︎
果たして絶対に「NO」と言わない敏腕ウェディング・プランナーは、全ての難題を解決し、最高の結婚式を2人に贈ることが出来るのか――?
出演は、主役のウェディング・プランナー中越に篠原 涼子、若いカップルに中村 倫也・関水 渚。そしてそれらに絡むのが、
岩田 剛典、中尾 明慶、浅利 陽介、前野 朋哉、泉澤 祐希、六角 精児、尾美としのり、池田 鉄洋、臼田あさ美、片桐はいり、皆川 猿時、ヒコロヒー、向井 理、高橋克実 等々。
この作品、確かに面白かった。脚本と演出と俳優陣の相乗効果で成立する見事な技であった。2時間飽きない。但しこれは、あくまでも私がテレビ画面の中の範囲で鑑賞したから出る感想になる。
この作品を映画館のスクリーンで観たなら、こんな感想は絶対に出ないだろう。どこまで行ってもTV局のSPドラマ的な感覚が抜けない。映画にまだまだ夢を持っている私としては、2時間ドラマは画面の中だけにしてもらいたい。現在の映画では、計算されているドタバタが過ぎると惹かれる事も事実ではないでしょうか。
映画としては残念な作品でした。
2020年公開の「弱虫ペダル」を観た。渡辺 航原作。少年チャンピョン連載で、コミックス累計発行部数2500万部を突破し、アニメ版や舞台版も人気のスポーツ青春漫画の実写版。監督は、三木康一郎。
運動が苦手で友達がいないアニメ好きの高校生・小野田坂道。ひょんなことから高校の自転車競技部に入った彼は、自転車選手として思わぬ才能を発揮する。そして初めてできた仲間のために、自分の限界や壁を越えてともに走る喜びを見いだしていく。
千葉から秋葉原にママチャリで通う、運動が苦手で友達がいない高校生・小野田坂道。念願のアニメ研究部に入ろうとしたが、休部を知りショックを受ける。そんな時、坂道の自転車の走りを見た同級生の今泉俊輔からレースの勝負を申し込まれる。
自転車で走る楽しさを初めて感じた坂道は、秋葉原で出会った同級生・鳴子章吉に誘われて自転車競技部に入部する。マネージャーの寒咲幹や部長の金城真護、巻島裕介、田所迅ら尊敬できる先輩たちとの出会いによって、自転車選手としての思わぬ才能を発揮する坂道。そして迎えた県大会。レギュラーメンバーに選ばれた坂道は、初めて出来た「仲間」とともに、インターハイ出場を懸けたレースに挑む。
出演は、小野田坂道:永瀬 廉(King & Prince)、今泉俊輔:伊藤健太郎、寒咲幹:橋本 環奈、鳴子章吉:坂東 龍汰、巻島裕介:栁 俊太郎、田所 迅:菅原 健、杉元照文:井上 瑞稀(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、金城真護:竜星 涼、寒咲幸司:皆川 猿時 等々。
80巻以上も続いている原作は読んだことはないのだが、NHKで放送されているアニメ版は、この年齢の私でも十分楽しめるような、昭和の匂いのするアニメ作品だと思い、毎シーズン観ている。映画になる事も期待してみたのだが……。
正直期待外れのような気がした。当然最初の頃のお話なので、まだいろいろなキャラクターのライバルの登場もなく、ジャニーズの主役を目立たせるだけのような演出だから、反対に坂道が深く描かれていない。
このシリーズを、間を置かずに続けるのならまだ良かったかもしれないが。橋本環奈や竜星涼、伊藤健太郎と、人気者のキャスティングだけで観客を呼ぼうとしてはダメですよ。的な作品か。
NHKのアニメ版を観ていなければ、スポーツ青春映画として、良い映画だったのか?
第44回日本アカデミー賞ノミネート
新人俳優賞 長瀬 廉