〇4月23日
1983年の松竹映画「丑三つの村」を観た。
原作は、1938年に、岡山県苫田郡西加茂村で実際に発生した津山事件を題材にした、西村 望のノンフィクション小説。監督は「もっと激しくもっとつよく」の田中 登、撮影は「北斎漫画」の丸山 恵司、脚本は「恥辱の部屋」の西岡 琢也。
戦時下の岡山の寒村。祖母と二人で暮らす青年・犬丸継男(いぬまるつぎお)は、村一番の秀才として尊敬されていた。ある日、村の風習である夜這いを知り、彼もこれに溺れるようになる。
徴兵検査を受けた継男は、当時の医学では不治の伝染病として忌み嫌われていた結核と診断され、兵役に漏れ「名誉の出兵」が叶わなくなる。このことが村人達に知れ渡り、女たちも彼を役立たずと馬鹿にするようになる。
村八分のような状況となった彼から恋人のやすよも離れ、暗い日々を送る小集落の若者が、閉鎖社会の恐ろしい習俗から起こる村の人間の行動を嫌い始め、次第に追い詰められた彼は村人達に対して、ついには武器を手にして30名もの大虐殺の復讐を決行する。
初公開は、洋画系劇場で公開されたが、内容が非道で残虐的との判断で、R―18指定となった。それほど殺りくシーンが生々しい。(本当に)
主演は、古尾谷 雅人。共演が、池波 志乃、五月 みどり、田中 美佐子、大場 久美子、原 泉、夏八木 勲、石橋 蓮司 等々。
古尾谷の狂気の目が良い。尊敬されている青年の時とのギャプが凄い。テーマに夜這いも有るので、出演女優さんの裸のシーンも多い。中でも、田中美佐子の初々しさと、池波志乃の色気のある裸は、男心を刺激する。
この事件は、横溝正史の「八つ墓村」のベースにもなっている。1977年の映画での山崎 努のあのシーンとダブル人も多いだろう。
松竹映画100年の100作にも選ばれているとの事。初めて見たのだが、衝撃は大きかった作品だった。
無理してはお勧めしないが、ご覧になるチャンスのある方や、マニアの方には良いかもしれない。それと○○オヤジさんも。
1985年公開の松竹映画「カポネ大いに泣く」を観た。
禁酒法の時代にアメリカに渡った浪花節語りの男とその女の姿を描いた、梶山 季之の同名の小説の映画化。監督は鈴木 清順。
昭和初期、芸者の小染は、旅回りの役者の順之助、のちの桃中軒海右衛門と出会い恋仲になる。小染は、昔、旦那の目を盗んで浮気をしたことがバレ、背中に蛸の刺青を彫られてしまっていた。順之助は浪花節語りの桃中軒雲右衛門に憧れ、一座を逃げ出したのだ。
小染の旦那が監獄から出ることになり、一方、一座も順之助を連れ戻しに来たので、二人はサンフランシスコに逃げた。浪花節で日本人移民を慰問するという気宇壮大な出発だったが、口入れ屋にだまされ、有り金は底をつき、小染は女郎に、海右衛門は乞食になる。
そんな時、二人は大西鉄五郎<通称ガン鉄>と出会う。ガン鉄は横浜ハウスに巣喰う快男児で、街頭で狼花節をうなる海右衛門を見かねて、高級ナイトクラブに連れて行き、新しいショーを見せた。そこで踊っていたダンサーのリリアンが和服の海右衛門をサムライ!と一目惚れしてしまう。その頃のサンフランシスコは様々な人種が入り乱れる欲望の街で、シカゴのギャング、カポネも西部進出を狙い、弟のフランク・カポネを派遣して来た。フランクはサンフランシスコの密造酒を独占しようとする。
一方、ガン鉄、海右衛門、小染たちも、実は造り酒屋の息子だった海右衛門に“シスコ正宗”を作らせて対抗する。三人はシカゴに行ったりするが、だんだんと追いつめられていくのだった……。
主役の3人は、海右衛門に萩原 健一、ガン鉄に沢田 研二、小染に田中 裕子。共演は、柄本 明、高倉 美貴、樹木 希林、加藤 治子、梅宮 辰夫、峰岸 徹、平田 満、常田 富士男、ベンガル、チャック・ウイルソン 等々。音楽は萩原や沢田の映画・ドラマでお馴染みの井上 孝之が担当。
ショーケンとジュリーが揃っただけで、面白い映画であることは保証されてしまっているのだろう作品だが。その上、この頃は、ジュリーと田中裕子は不倫騒動の真最中だったはず。でも、結局……。
鈴木清純監督作品は好きなのだが、反面、私には合っていないような感じもし、またそのアンバランス感を楽しんでいたりと……。不思議な監督。
よく、ショーケンとジュリーではどちらがお芝居が上手いのだろう、またGS時代の歌は?という話も仲間と飲みながらした記憶も有る。結論は絶対に出ないと思うのだが……。
ある意味この作品は、田中裕子の作品ではないかとも……。
2019年公開の日活配給「デイアンドナイト」を観た。
若手ながら存在感が有る演技で、ポジションを確立しつつある役者の山田 孝之プロデュース、山田と同じ事務所(スターダスト)に所属する俳優であり監督の阿部 進之介が企画・原案から携わり、長編映画に初主演(デビューは仮面ライダーだそうだ)。監督は、松坂 桃李とシム・ウンギョン主演で2020年日本アカデミー作品賞受賞の「新聞記者」の監督の藤井 道人。
大手企業の不正を内部告発したことから追い込まれた父の自殺を機に、帰郷して父の裏の顔を知った主人公が、「善と悪はどこからやってくるのか」をテーマに描いたオリジナル作品。
父の自殺で悩む明石に手を差し伸べたのは北村という男だった。北村は児童養護施設のオーナーとして、父親同然に孤児たちを養いながら、「子どもたちを生かすためなら犯罪もいとわない」という清濁を共存させた道徳観を持っていた。児童養護施設で生活する少女・奈々は、北村に傾倒していく明石を案じていたが、復讐心が次第に増幅し、明石は次第に復讐心に駆られ、善悪の境を見失っていく。
不正を告発したら村八分にされ、自殺に追い込まれる。閉鎖的な社会では和を乱す奴が悪人扱いされてしまう理不尽。良くあるお話だ。
主人公・明石役を阿部 進之介、北村役を安藤 政信、奈々役を清原 果耶がそれぞれ演じる。共演は、小西 真奈美、佐津川 愛美、田中 哲司、笠松 将、山中 崇 等々。
山田はキャストとして出演はせず、プロデューサーに専念したほか、脚本にも名を連ねている。
公開に先立ち、広島国際映画祭2018に特別招待作品として出品され2018年11月25日にプレミア上映、また全編が撮影された秋田県で先行上映された。
この作品についての感想は……。善と悪とは自分にとって何なのだろう?養護施設出身だと、大人になって必ずダメにならなければいけないのだろうか。日本のドラマではよくある展開だ。いつも不思議な疑問になる。
「丑三つの村」もそうだが、時代が変わろうとも、村八分は日本には存在する。悲しいことだが。
山田孝之は、「全裸監督」だけではない。ただ、我が家では今でも彼の事は“恵達”と呼んでしまっている。ごめんなさい。
1989年公開の「極道の妻たち 三代目姐」を観た。家田 荘子の同名ノンフィクションの映画化シリーズ3作目。監督は降旗 康男。主演の三代目姐に三田 佳子。『極妻』シリーズの主演は、岩下 志麻、十朱 幸代に続いて三田で3代目となる。
本作では、兵庫県を舞台に坂西組長の死後の組の跡目争い、子供の頃から息子のように可愛がっている若頭補佐との、親子愛とも男女の恋ともつかない情愛、組長妻を含めた3人の女たちの争いが描かれている。キャッチコピーは、「私、一万五千人の暴力(こども)を相続しました。」
任侠物のストリーはだいたい同じようなものが多い。お金、大きな組との提携で組織を自分のものとしようとする側と、義理と人情で戦う男。同じようなストリーなのに、何故か見入ってしまう。監督の力か、キャストの力か?
第13回日本アカデミー賞(1990年)において三田が優秀主演女優賞、降旗 康男が優秀監督賞、木村 大作が優秀撮影賞、増田 悦章が優秀照明賞、市田 勇が優秀編集賞をそれぞれ受賞している。
共演は、男性陣が、姐を慕い、組を守ろうとする行動派赤松組組長に萩原 健一。経済ヤクザの組長・成田 三樹夫、坂西組長・丹波 哲郎の他、綿引 勝彦、浜田 晃、上田 耕一、田中 隆三、坂上 忍、小西 博之、本間 雄二、小松 政夫、藤岡 重慶、内田 朝雄。女性陣は、極妻の毎回もう一方の主役・かたせ 梨乃、吉川 十和子、新藤 恵美、西川 峰子、芦川 よしみ、速水 典子、春 やすこ、木村 緑子、加茂 さくら、新人で財前 直見が若々しく出演している。
兎に角豪華な出演陣。
一つ気になるのは、ショーケンは声が高く裏返るので、押さえて静かにしゃべっている時は良いが、興奮しているシーンだと迫力が無い。唯一役柄で似合わないのが、極道役ではないだろうか。(カポネの時にも感じたが)
極妻といえば主演者よりかたせ梨乃。相変わらず良い!
もう何回も極妻シリーズはテレビで観ているが、その都度作品の中に入ってしまう。細かくどこが良いかとは言えないが。最近はVシネ系のヤクザ物があまり面白くなくなってきているので、極妻や仁義~を見たくなる気持ちが……しょうがないか。ちなみに、“仁義なき戦い”は、映画としてもクオリティーは高い。
どちらも、またテレビで放送されたら観てしまうのだろうな。