五島列島、中通島の海岸沿いに、「祈りの龍馬像」と呼ばれる坂本龍馬の像が建っています。その名の通り、龍馬が海に向かって合掌し、祈りを捧げています。もっと正確に言えば、ここの沖合で起こった海難事故で亡くなった海援隊士の冥福を祈っているのです。

 

寺田屋事件で手を負傷した龍馬は、西郷の計らいで妻のおりょうと一緒に薩摩に行き、日本で初のハネムーン(というより静養)を楽しんでいました。そして、その薩摩の地で、海援隊の帆船「ワイルウエフ号」の沈没と、乗船していた海援隊士の訃報を知ることになります。

 

ユニオン号と共に長崎から薩摩に向かっていたワイルウエフ号は、途中激しい暴風雨に遭い、五島の沖合で沈没します。尊皇の志士であった脱藩浪士を半ば強引に海援隊に引き入れ、その結果、水死という最期を迎えさせたことは、龍馬にとって大きなショックでした。鹿児島から戻る途中龍馬は、せめて亡くなった隊士の冥福を祈ろうと五島に立ち寄り、後世に残るよう碑を建てて冥福を祈ったのです。

 

全国に龍馬の像は数あれど、合掌して祈りを捧げている姿の龍馬に会えるのは、私の知る限りここだけです。