渋谷ヒカリエ、シアターオーブのウエストサイド・ストーリーを見てきた。
過去に、
映画版
96年の来日公演
07年の四季公演
などを見たことがあるが、今回は演出が大きく変わっていた。
衣装もかなりイメチェンしていて、新しさを感じた。
元の演出は振付のロビンス氏が手がけていたが、
脚本を書いたローレンツ氏が2008年に新しく演出を変えたようである。
気付いたのは、
オーバーチュアなしに、いきなり幕が上がる
シャーク団がときどきスペイン語を話す(観客は何を言ってるかわからない)
暴力的なシーンがハードになっている
など…。
完成された作品なので、変更点には違和感が残る。しかし、60年も昔の作品。ただの古典として再演するのではなくて、新しさも追求していると思うと、好意的にも受け止められた。
過激になった暴力シーンというのは、物語終盤、アニタがジェット団のメンバーたちに暴行される場面である。
過去の観劇でも映画でも、レイプ未遂として描かれていたと思う。音楽にあわせ、体を触ったり、腕をつかんだりする。ダンスシーンのようなものとして、見ることができた。だんだんエキサイトしていくが、キワドイところでドックが帰って止めに入り、事態がおさまる。…と解釈していた。
でも今回見たのは、未遂ではなく、完全黒。
音楽は同じだが、ダンスという感じではない。胸も尻もハッキリと触り、押し倒したあとは、照明を上手くつかってシルエットになるが、ジェット団の男(ベビージョン?)が腰をがっつり動かしていた。
ドックが止めに入った後、アニタは乱れたスカートを怒りで震えた手で掴み、絶望したように泣きながら去っていった。
影で見ていたエニバディスも、恐怖で震えながら、泣きながら退場していった。
「泣きながら去る」と言葉で表現するのは容易いが、感情のこもった悲痛な叫びであった。
彼女たちの叫びは私の耳に強烈に残った。
泣き声が印象的なシーンがもう1つあった。
最後に、チノが逮捕されるシーンだ。
両手に手錠をかけられたあと、チノが声をあげて泣き崩れるのである。
ラストシーンは静かに音楽だけが流れると思っていたから、意外な演出だった。
チノの声もまた、強烈な印象を残した。
チノの殺人も、ジェット団たちのレイプも、はっきりと「犯罪」として描かれていると気付いた。
「目を覚ませ!これは夢物語ではないのだ!」
というメッセージを私は感じた。
言うまでもなく、ウエストサイド・ストーリーは華麗なダンスと情熱的な歌が見どころだ。
「ジェット団かっこいい」
「ベルナルドが一番だ」
のようなミーハー談義が盛り上がったりする。
しかし、華やかなシーンばかり注目して、物語の重要なテーマを忘れてしまっていたかもしれない。
過激で生々しい表現は、見ていて辛いものがあったが、ウエストサイド・ストーリーの背景にある社会的な問題を掘り起こしたように思う。