例の学校の課題だった小説上げるね











 一体全体何が悪かったのだろう。何が、といわれれば全てのことが悪かったような気もする。選択を、間違えた。やはり俺は馬鹿だったのだ。しかしとはいえそれもこれも全てあいつのせいだ。あいつがいなければ俺はもっと幸せだったのに。悔やまれることは多い。今思えばあいつを出し抜くチャンスは結構あったのだ。このときこうしていれば。あのときああしていれば。いつだってあいつが邪魔をした。あいつに横取りされた。あいつは今頃ほくそ笑んでいるに違いない。本当に悔やまれる。悔しくて仕方がない。しかし今となっては後悔は文字通り後の祭りだ。あいつは今はもういない。俺から奪うだけ奪って逃げてしまったのだ。憎い。俺はあいつが憎い。畜生、あいつがいなければ。あいつさえいなければ。
 俺はあまり頭の良く回る方ではない。対してあいつは、小さな頃から頭が良かった。近所の子供達の中でもとびきり聡明な奴だった。女の子にはもてたし、面白いいたずらを思いつくのはいつもあいつだったから、みんなの人気者だった。ただあまり丈夫でなかったから、あまり外には出なかった。料理もうまかった。とくにあれ……あれのせいで俺は……ああ本当にあれはおいしかった。ほんとにあいつのあれは……。俺は、あいつとは正反対に小さい頃はひたすら外を駆け回って、遊んでいた。友達がいなかったわけではないが、あいつのように人が自然と集まるようなことはなく、いつも馬鹿をやって怒られていた。俺は、身体が丈夫で元気がいいだけが取り柄の子供だった。俺とあいつはほとんど対照的だったと言ってもいい。あいつはずる賢くって、ちょっと演技派で何をするにもそつなくこなす。俺は不器用で、肝心なときにいつも失敗する。俺が失敗したときにはあいつは必ず成功した。
 俺は母さんのことは好きだ。美人な母さんは俺の自慢だった。でも、母さんに誉められるのはいつもあいつだった。あいつは母さんに何をすれば、何を言えば喜ぶのか知っている。それに母さんは、俺よりもあいつの方が好きなようだった。見た目のこともあるかもしれない。はじめにその事実に気づいたときは、幼いながらに傷ついたが、同時に仕方ないとも思ったものだ。俺はそれでも母さんが好きだったし、そのときはあいつのことも憎からず自慢に思っていた。今だって、あいつが嫌いなわけではない。どれだけ憎かろうと、それでもあいつは俺の無二の兄弟なのだ。なのに…。
 俺はあいつのことが羨ましかった。それこそ小さい頃からずっと。今でも羨ましい。あいつは今どこにいるのかわからないが、なんでも風の便りでは、今あいつには、美人な奥さんが二人もいるって聞くじゃないか。あいつのことだから、きっと二人ともに充分すぎるほど愛されているのだろう。そして、その愛が重いなぞと、贅沢な悩みを抱えているのだろう。全く結構なことだ。女難の気があるのは父親似だということか。
 尊敬する人物をあげよ、といわれれば、俺は真っ先に父さんをあげる。父さんは、あまり自分を出さない人だ。父親は、俺達兄弟をわけへだてなく愛してくれた。でも母さんに圧されて、家長であるにも関わらず、あまり優位に立てないような、そんなイメージのある人だった。母さんが幾度か「馬鹿なあの人」といったような形容をしていたのを覚えている。年も老いて、目が不自由になってきてからは危なっかしくて仕方がなかった。あいつ——弟と二人でよく付き添ったものだ。
 父さんの目の不自由をいいことに、あいつが父さんをだまし、俺になりすまして俺が受けるはずだった祝福を奪い取った。俺はあいつに——弟に仕えなければならなくなったのだ。思えばはじめから神様はあいつの方に物語を継がせる気だったのだ。神の約束通りだと誰かが言った。どんな約束だったのか、俺は知らされていない。もしかすると、知らされていたのかもしれないが、その時はあり得ないと高をくくってでもいたのだろう。主人公は俺ではなくあいつ。俺は一時の空腹のために長子権を譲ってしまった馬鹿な兄というわけだ。豆の煮物と引き換えに、俺は永遠にこの権利を失った。
 あの時、猟から帰ってきて、とても腹が減っていた。歩いているとまさに腹が後ろへ寄ってくるかと思うほどだった。そんなときに、家の方から煮物の良い匂いが漂ってきて、行ってみると、あいつがレンズ豆で煮物を作っている。あいつは料理もできた。なにしろ味付けのセンスとバランスの点では母さんよりもうまかった。あの時の煮物も、かすかに甘くしてあって(どうやったのかはわからない)、とてもうまかった。俺はあまり頭の良く回る方ではない。だから、あいつがあんなことを思索していたなんて、思わなかったのだ。やっぱりあいつは俺の大事な兄弟なわけで、確かに今まで何度か騙されてきてはいたが、疑えなかったのだ。加えて過度の空腹が判断力を鈍らせていた。悔やまれはするが、言い訳するとこうなる。ああ、でも本当にあのレンズ豆の煮物は美味しかった!
 ああでも、あいつさえいなければ。畜生、畜生。あいつさえいなければ俺は今頃幸せだったのに。あいつだけじゃない。あいつの後ろにはいつも母さんがいた。父さんは俺じゃなくあいつに祝福を与えた。父さんももしかしてグルじゃなかったのか。父さんは神様から祝福をうけ、その通りに生きてきたような人なんだから。みんなが俺の邪魔をする。俺が何の悪いことをしたというのだろう。神様は不公平だ。俺が怒りにまかせてあいつを殺そうとしたときだって、あいつはまんまと逃げ仰せたのだ。今頃はどこで幸せな生活を送っているのか。本当に腹が立つ。
 弟というものはとにかく兄を苛立たせるものだ。自分よりも愛され、自分よりもよく出来るのだ。俺はあまり見た目が良くはない。この毛深さは小さな頃からのコンプレックスだった。誰に似たのかは分からない。それに対してあの弟は優男風でみんなに愛される。本当に憎らしい。呪ってやろうかと思うこともあった。心の底から恨んだこともあった。
 それでも。それでも、世界に二人だけの兄弟だ。全く似ていないとはいえ、同じ日に生まれ、同じ家に育った兄弟なのだ。小さな頃から幾度も幾度も喧嘩した。しかしそのたびに仲直りしたではないか。対照的だったからこそ、付き合っていける部分もあった。あいつが作ってくれる料理はいつでもうまかった。おやつ時になると、母に内緒で豆の煮物を作ってくれた。俺はあいつが作る豆の煮物が一番好きだった。俺はあいつのために猟の仕方やまきの作り方教えてやったり、いすや机を作ってやったりした。あいつは俺に料理も教えてくれたが、俺はあまり上達できなかった。
 あいつはいつか帰ってくるだろうか。いつか、奥さんや子供を連れて家に戻ってくる日があるだろうか。あいつの奥さんは俺にとっての義理の妹で、子供は甥や姪だ。そんな家族に包まれて生活するのは全く悪くないだろう。それどころか幸せに違いない。そんな日が、いつか来るといい。いつか、あいつが帰ってきたなら、手厚く歓迎してやろう。そして一緒に住めると良い。また昔のように。増えた家族で家はにぎやかになるだろうか。そうしたらあいつにまたレンズ豆で煮物を作ってくれるように頼もう。俺はあれが食べたい。あの匂い、あの味。あの料理を作ってみようと思っても、俺ではなかなかうまくいかないのだ。
 なぜだか俺は、あいつの作る豆の煮物が一番好きなんだ。



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もうね、書こうと思ってやり始めると、課題に全く沿わないものがいっぱい出来るし、


そんで、よしモノローグでやろうとか思い立って、


まさかのエサウ視点、と。









思い立ったのが土曜日で、それからの一日クオリティ。



エサウに奥さんがいるの完璧に無視してしまった