(ピラカンサスの実)

『 ピラカンサス 』

 

秋に赤い実をつけるピラカンサス

春に トベラやシャリンバイと同じころ 白い花を咲かす

君はその花を知らないと言った

 

僕が大切に想っている君は 野球部のマネージャー

エースで4番 先輩が壊した肩の心配ばかりしている

 

何もしてあげられないと悲しむ君に

僕は何もしてあげられない

 

君を君が夢見る球場へ 手を引いて連れていくことも

君が抱えている不安を 引き取ってあげることもできない

況して

誰かの代わりになるなんてことはできない

 

写真部の僕は ただ黙々と 君が想う人の勇姿を撮り続けている

 

5年後10年後のある夜

僕が撮った野球部のエースの写真を見る君

その写真が 君の心を支えることがあるかもしれない

そう思う

もし君が それを僕が撮ったものだと気づかなくても

君を笑顔にすることができるなら 

その心をあたためることができたなら

僕の想いは無駄にはならない

 

そんなの今 寂しくないの?って聞かれたら

・・・ 寂しいよ。

無力感に苛まれることだってしょっちゅうだ

 

だけど 想いは廻るもの

誰かが 誰かを想って

世界はそうして守られているのだと思う

 

(ピラカンサスの花)

 

秋につく実のほうが目立って 

春に咲く花は あまり印象に残らない

そんなピラカンサスの花を想った

 

それでも 花が咲かなければ 実を結ばない

 

気づかれなくても  あるもの

 

きっと世界はそんなもので守られている