和の会能楽師インタビューPart2. Vol.5 宝生流シテ方 藤井秋雅さん
宝生流期待の若手能楽師5人の生の声を週替わりでお届けしてきました、和の会能楽師インタビューPart2.も、いよいよ最後のお一人となりました。今回は、新内弟子として意気込みたっぷりの藤井秋雅さんにお話を伺いました。
Q1.能楽師になったきっかけを教えて下さい。
父は能楽師、母はピアノ教師という環境でしたので、子方(子役)から変声期まで、わけもわからず続けてきました。中学で吹奏楽部に入部したことをきっかけに、クラリネットで芸大を目指す道も見えてきたため、能楽師への道には正直迷いもありましたね。
楽しいことを仕事にして辛い思いをしたくないという考えと、父から提示されたメリットデメリットをよく吟味し、能で芸大へ進むことを決心しました。追い込まれないとやらないタイプでしたが、内弟子となった今は、この道でやっていこうという覚悟ができています。
学生時代にアーティストと触れ合った経験から、舞台上で輝くこととはどんなことであるか、よくわかっています。だからこそ自分自身も舞台で輝いていたいと思い、稽古に励んでいます。
僕の強みは何と言っても「声」と「足」。声優並みの美声でしょ(笑)?年間で数百枚のマスクを消費するほど、喉は大切にしています。正座だって何時間でもできます。先輩・和久さんのすすめで養命酒を飲んでいるので、身体が弱いなんて言わせません、この先も自信ありますよ。
Q2.休日はどのように過ごしていますか?
学生時代は、吹奏楽部の主将を務めたり、全国を飛び回ってライブめぐりをしたり、活動的に過ごしました。ここだけの話、夜も華やかでしたね。ダーツも得意です。お酒はあまり嗜みませんが…。好きなタイプは黒髪、色白、清楚。そんな彼女と行くなら、渋谷センター街にあるカクテルバー「八月の鯨」がおすすめです。
閑話休題。内弟子には休日はありません。でも、よい意味で毎日が休日です。電話番として食堂で座って一人で本を読み、謡を覚える。携帯に入っている1000件を超える全国各地の仲間の中から、クリエイティブな仲間たちと連絡を取り合い、今後の能楽を考える。夕方には、内弟子全員分の夕食の材料買い出しに出掛け、12人分の食事を作る日々。休日のようで休日ではないんです。オフのない24時間勤務ですが、ここまで来たら能に突き進む覚悟を決めて、毎日を過ごしています。今、一週間の長期休暇をもらったら・・そうですね、実家に帰って普段読めないような大きな本を読みあさりますね。
Q3.今後の抱負を聞かせて下さい。
はるか昔の舞台芸術である能楽が、現代もこうして残っているのは、能が良いものであるからだと自信をもって言えます。良いものは良い。学生時代に培った舞台業界とのコネクションを活かし、能楽を広めていけたらいいですね。
そして、初めて家元より年齢が下になる内弟子仲間との誓い。それは、家元を下から支え、流儀を盛り上げていくこと。今のこの僕たちにしかできないことに、自覚と誇りをもっています。
また将来は、一般社会だと定年を迎える年齢となった父に代わり、米国、北海道、埼玉を飛びまわって活躍すること、そして、いつの日か必ず父を超えたいと思っています。
プロフィール
1990年11月25日生まれ
3歳より父・藤井雅之(旧芸名・波吉雅之)の手ほどきにより稽古を始める。
4歳で初舞台「鞍馬天狗」花見。
東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽専攻にて学ぶ。
現在までに、十九世宗家故宝生英照、二十世宗家宝生和英、三川泉、小倉敏克、藤井雅之に師事。
来たる6月15日、五雲会にて「夜討曽我」に出演予定。
http://ameblo.jp/shuga-fujii/