和の会 能楽師インタビュー Vol2.宝生流シテ方 田崎 甫さん
能にかける思いから、舞台裏やプライベートの話まで。
宝生流期待の若手能楽師5人の生の声を週替わりでお届けします。
Vol2.宝生流シテ方 田崎 甫さん
Q1.能楽師になったきっかけを教えてください。
A1.子方(子供がする役)としては5、6歳のときから舞台に出ていました。でも変声期が割と早くに来たので、小学6年生で子方を終えました。
大人として扱われる役で初めて役が付き、楽屋入りをしたのは中学3年生のときです。きっかけは、能楽師の先輩でもある伯父(田崎隆三師)の勧めでした。「土蜘蛛」の小蝶という女性の役で、初舞台としては珍しい、面をつける役でした。普通なら、直面といって面をしない役から務めることが多いんです。何もわからず夢中で、面をつけてお客様の前の舞台に立ちました。それから3、4年間は日常的に楽屋に出入りしていましたが、いろいろなことが見えるようになってきた分、少し悩んでしまいましたね。
そういう状況が変わりだしたのは、高校3年生ぐらいでしょうか。きっかけはいくつかありますが、舞台後には必ず僕を叱っていた叔父が、あるとき「うん、うん」と頷いただけだったことがあったんです。ちゃんとやれば怒られないんだな、と知りましたね。
あとは、先輩たちが楽屋で使っている言葉がわかるようになったこと。装束、お道具など、専門用語が多いんです。そういう会話を理解できるようになって少し面白くなった。能をやりたいと自分から思えるようになったのはそのあたりからですね。
宝生流には僕の世代や少し上の先輩たちがたくさんいます。身近に上手くて、自分で理解して、筋道立てて考えている先輩たちがいることはありがたいです。そういう人たちと一緒ならば間違いないだろう、この道でやっていればいいんだな、と思えます。
最近は、こういうタイプの能楽師が好きだというのも出てきました。今までは怒られてもよく考えてこなかったのが、なぜ怒られるかもわかるようになってきましたね。自分の好き嫌いがでてきて、自分なりに判断が下せるようになったからかも知れません。
Q2.休みはどう過ごしていますか。
A2.旅行が好きで、最近では1泊2日で箱根に行ってきました。趣味は、システムエンジニアをしている父の影響もあって、パソコンです。あとは、伯父の主催する能の催しを手伝っているうちに、舞台のマネージメントにも興味が出てきました。会計とか面白いですね(笑)。
あとは読書。谷崎潤一郎賞というのがあるのですが、あの賞を獲った本はよくチェックしていました。もちろん、谷崎潤一郎も読みましたよ。文学全集が好きで、図書館行くと閉架図書のコーナーに行くタイプです(笑)。活字中毒なので、本に限らず、パソコン関係のネットの記事もよく読みますね。
Q3.今後の抱負を聞かせてください。
A3.とりあえず内弟子としての目標は、憧れの先輩に少しでも近づけるようになりたいです。今の時代は、舞台だけでなく、装束や面、楽屋のこと、お客様のこと、トータルで能にかかわることをちゃんと理解できる能楽師が求められているような気がします。今はいろいろなことを吸収していきたいです。催しがあればいつも声のかけられるような、みんなから必要とされる能楽師になりたいです。
プロフィール
1988年神奈川県生まれ。2011年東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽宝生流卒業。同年、宝生流二十世宗家 宝生和英のもとで内弟子修行に入る。
宝生流期待の若手能楽師5人の生の声を週替わりでお届けします。
Vol2.宝生流シテ方 田崎 甫さん
Q1.能楽師になったきっかけを教えてください。
A1.子方(子供がする役)としては5、6歳のときから舞台に出ていました。でも変声期が割と早くに来たので、小学6年生で子方を終えました。
大人として扱われる役で初めて役が付き、楽屋入りをしたのは中学3年生のときです。きっかけは、能楽師の先輩でもある伯父(田崎隆三師)の勧めでした。「土蜘蛛」の小蝶という女性の役で、初舞台としては珍しい、面をつける役でした。普通なら、直面といって面をしない役から務めることが多いんです。何もわからず夢中で、面をつけてお客様の前の舞台に立ちました。それから3、4年間は日常的に楽屋に出入りしていましたが、いろいろなことが見えるようになってきた分、少し悩んでしまいましたね。
そういう状況が変わりだしたのは、高校3年生ぐらいでしょうか。きっかけはいくつかありますが、舞台後には必ず僕を叱っていた叔父が、あるとき「うん、うん」と頷いただけだったことがあったんです。ちゃんとやれば怒られないんだな、と知りましたね。
あとは、先輩たちが楽屋で使っている言葉がわかるようになったこと。装束、お道具など、専門用語が多いんです。そういう会話を理解できるようになって少し面白くなった。能をやりたいと自分から思えるようになったのはそのあたりからですね。
宝生流には僕の世代や少し上の先輩たちがたくさんいます。身近に上手くて、自分で理解して、筋道立てて考えている先輩たちがいることはありがたいです。そういう人たちと一緒ならば間違いないだろう、この道でやっていればいいんだな、と思えます。
最近は、こういうタイプの能楽師が好きだというのも出てきました。今までは怒られてもよく考えてこなかったのが、なぜ怒られるかもわかるようになってきましたね。自分の好き嫌いがでてきて、自分なりに判断が下せるようになったからかも知れません。
Q2.休みはどう過ごしていますか。
A2.旅行が好きで、最近では1泊2日で箱根に行ってきました。趣味は、システムエンジニアをしている父の影響もあって、パソコンです。あとは、伯父の主催する能の催しを手伝っているうちに、舞台のマネージメントにも興味が出てきました。会計とか面白いですね(笑)。
あとは読書。谷崎潤一郎賞というのがあるのですが、あの賞を獲った本はよくチェックしていました。もちろん、谷崎潤一郎も読みましたよ。文学全集が好きで、図書館行くと閉架図書のコーナーに行くタイプです(笑)。活字中毒なので、本に限らず、パソコン関係のネットの記事もよく読みますね。
Q3.今後の抱負を聞かせてください。
A3.とりあえず内弟子としての目標は、憧れの先輩に少しでも近づけるようになりたいです。今の時代は、舞台だけでなく、装束や面、楽屋のこと、お客様のこと、トータルで能にかかわることをちゃんと理解できる能楽師が求められているような気がします。今はいろいろなことを吸収していきたいです。催しがあればいつも声のかけられるような、みんなから必要とされる能楽師になりたいです。
プロフィール
1988年神奈川県生まれ。2011年東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽宝生流卒業。同年、宝生流二十世宗家 宝生和英のもとで内弟子修行に入る。