初めに、ちょっとうれしいニュース。

映画『无名/無名』が、東京の、とてもすてきなミニシアターで上映されます。

 

 

カフェ併設型ミニシアター

「Stranger」

 

 

「49席の劇場と15席程度のカフェが一体化した新しいスタイルの映画館」とのこと。

 

『無名』の上映は7月26日(金)からです。

このような地道な上映が、今後も続くとうれしいですね。

 

* * *

 

さて、先日、日本公開の Yiboくんの映画、第二弾『BORN TO FLY』を観てまいりました。(以下、ネタバレあり、です)

 

原題の『长空之王/長空之王』の文字をあまりにも見慣れていて、勝手に「長空の王一博だわ」などと思っていましたので、邦題の『BORN TO FLY』には、少し馴染めませんでした。

とくにカタカナで書かれてしまうと、映画の趣旨も変わるような気がして。

 

初めて予告映像を見た時には、高所恐怖症で乗り物にも弱い私は見ることができないかも… でしたのに、YouTube で全編を見た時には、なぜか、だいじょうぶでした。

それで、まったく心配せず、劇場に行きました。

 

大きなスクリーンは、迫力が半端ではありませんね。

途中、幾度かめまいに襲われました。

でも、作品のリアル感と緊張感で、私の気も引き締まっていたのか、ちゃんと最後まで見ることができました。

後で知りましたが、このめまいの内、1回は、地震でした(笑)

 

見終わって、『BORN TO FLY』というタイトル、「飛ぶために、生まれてきた」というキャッチフレーズが、とてもしっくりきました。

制覇する「王」よりも、合っていると感じました。

 

パンフレットの「たゆまぬ努力と揺るぎない決意の先にあるもの」という、結城らんなさんの寄稿文に、「パイロットの青春群像劇の枠に収まらない本作」という表現があります。

まさに、そう感じました。

 

YouTube で見た時は中国語の字幕でした。

ストーリーは大方、理解できました。

とくに、パラシュートを畳む部署に異動させられた Yiboくん、いえ、雷宇(Lei Yu)が、とても印象的でした。

 

想像していたよりも、ずっとよい映画と感じました。

ですが、やはり、「パイロットの青春群像劇」という印象でした。

 

今回、日本語の字幕で見ることができ、私も「パイロットの青春群像劇の枠に収まらない」作品と感じました。

これは、「プロジェクトX」が大好きな日本人には、刺さる作品ではないかしら、と。

 

帰宅後、『無名』を見てくれた友人、知人に声をかけましたが、どなたも興味を示してくださいませんでした。

 

「プロジェクトX かもしれないけれど、開発するのは戦闘機でしょう? それも、中国の」

数人の率直なご意見に、なるほど…と。

軒並み振られた理由を納得しました。

それでも、とても残念に思いました。

 

これはしかたがないです。

私自身、これまで、スカイアクションと呼ばれる作品を一作も見たことがありませんでしたから。

お誘いいただいても見ることはなかったでしょう。

この映画も Yiboくんが出ていなければ、観に行くこともなかった。

 

そうしたものを扱うこと、テストパイロットの存在を知ってもらいたいという目的があること、だからこその “本気” を、この作品にとても強く感じました。

それを、一人でも多くの方に見ていただきたいと、ただ、純粋に思いました。

 

ファンは、Yiboくんがテストパイロット役に取り組むために、どれだけの努力をしたのか知っています。

他の俳優さんたちも、一緒に多くの本格的な訓練を重ねていました。

重力に堪えうる首をつくるために、Yiboくんも身体を大きくし、他のキャストと見劣りしない体躯でした。

空軍の閉鎖的な環境下で、訓練し、撮影し、パイロット役の誰もが迫真の演技だったと思います。

 

映画を見て感じた、刘晓世監督をはじめ、スタッフの取り組み方の本気度は、それ以上のものでした。

準備にかけた月日、実在の人びとへのヒヤリング、映像技術の工夫 … etc.

 

それだから監督は、Yiboくんのリアルな自動車事故を、「よい絵が撮れた」とおっしゃって、本編に採用したのだと、今は、すごく納得しています。

 

人の命よりも重い任務はないと、私は思います。

けれど、命をかけなければならない任務もある。

 

人類の進歩のために、人間でなければこなせない任務もある。

尊い犠牲の上に成り立つ平和や生活の向上というものが、人間の世にあるのは事実です。

 

そして、そういうテーマだからこそ、ストーリーもセットも、軽々しいつくりではなかった。

最近、こうしたテーマを扱いながら、おざなりな作品ばかり見かけていましたので、このことに、映画人の “本気” を感じました。

 

エンディングに流れた殉職者たちの通信 … 実際のテストパイロットの肉声なのでしょうか … には、涙を堪えられませんでした。

このような犠牲は誰も望んではいませんが、誰かが負わなくてはいけないもの。

 

そして、尊い犠牲は殉職者個人だけのものでなく、その家族や友人にも及ぶのです。

このことも、とてもよく描かれていました。

 

家族ならば誰もが、大義のために、そして、多くの人のために、命をかけるよりも、自分たち家族のために安全に生きてほしいと思います。

毎日毎日、無事の帰還を願うストレスは、どのようなものでしょう。

 

ごく一般的な職場に向かう家人にも、私は無事に帰宅することを祈って見送りしてしまうくらい心配性なので、毎日、気が休まらないご家族のお気持には、胸がつぶれる思いです。

 

けれど、声にして反対することはしない。

心配を見せつけることもしない。

スマホのメッセージに、「今日は夕飯を食べる?」

テストパイロットである人を愛したのだから…。

 

雷宇の父も、最後には息子の意志を尊重し、テストパイロットを続けることをゆるします。

息子は「ごめん」と詫びるのです。

多くの人のために尽くしても、親不孝。せつないです。

 

エンディングに涙があふれましたが、見終わったあとは、とても爽快でした。

 

一度きりの尊い人生を、大義にかける人びとがいてもいい。

生半可な思いでは成せない決意を実行するのですもの。

憚ることなく敬意を示したいと思います。

 

観てよかったと、心から思いました。

 

 

 

『BORN TO FLY』

本編特別映像&予告篇

(ドラマver.)

 

 

 

夜は、Yiboくんも日本の空の下でお過ごしのようですね。