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大学時代。
バイト先に、地方出身のひとりの男子学生が入ってきた。すらりと背が高く、涼やかで端正な顔立ち。おとなしく真面目で素直だけれど、どこか掴みどころがない。
彼に一目惚れした同学年のバイト仲間の女子学生が、押しの一手で交際に持ち込みます。
彼の方はひと夏のみの勤務でしたが、長女気質の彼女と、弟気質の彼は相性が良かったようで
「とにかく素直でかわいいの!」
と彼女はベタ惚れ。
交際は続き、卒業後一流企業に就職した彼は、彼女の猛プッシュでめでたくゴールイン。彼女は晴れて六月の花嫁になりました。
半年を過ぎた頃。
寿退社で、幸せな新婚生活を送っていた彼女から連絡が入ります。
「大変なことになって…」
蒼白の彼女が語るところによれば
初めて義実家で過ごした年末年始、彼の家族の抱えるある事情を目の当たりにしたのだと。詳細を伏せますが、夫である彼が結婚前に彼女に伝えていない事柄だったのです。
帰宅したその足で、私に会いに来た彼女。
動転し、震えながら顛末を話す様子を見て、私は驚きました。
なぜなら
彼女はすでに離別を決めていたから。
そして、
彼女自身はまだそのことに気づいていなかったのです。
彼女の口から、あれほど夢中だった彼に対する愛情や未練、葛藤の言葉が出てくることはありませんでした。結婚前に彼女に伝えなかった彼への恨みごとさえも。
代わりに伝わってくるのは、
もう、こんなところにいられない!!
という切迫感。
たしかに彼の実家の事情は深刻でしたが、離婚するかどうかは個人差があると思われるものでした。ちなみに彼の兄は既婚
しかし、彼女の育ってきた環境や価値観からは、到底受け入れられなかったのでしょう。
キャパを超えた事態に直面した時、
私にはそんな風に見えたのです。
予期した通り、ほどなくしてふたりは離婚。
彼女はしばらく傷心の時期を過ごしますが、やがて一念発起。
もともと優秀だった彼女は、なんと歯学部に再入学。現在も歯科医師として活躍してるそうです
カサンドラを経験して思うのは、
自分の心に蓋をせず、正直に選択すること、
そして自分の器を知ることの大切さ。
どうあるべきかより、どうしたいのか。
何が正しいかより、自分は耐えられるのか。無理なものはムリと知る
自分の感情を肯定し、自らの価値観を信頼していた彼女は、気が動転し感情が追いつかない場面でも
彼女の内部の羅針盤は、彼女を導いたのだと思うのです。逃げるは恥ではなくて知恵
逃げ時を知る。