Last chapter (最終章) ★「F」..Father ★

  1999年、校了明けの年の瀬..

史哉の写真展が開催されている丸の内にある

東京国際フォーラム1Fの多目的ホール

タイトルは「アフガニスタンの子供たち」と題されている

 

 その脇の通路に面したカフェ「 Freedom」

窓際に深く腰を下ろし、微笑みかける「F」根本史哉、対面の椅子にゆっくりと座るハルが居る

 

 母、橘深雪は史哉に宛ててそれが最後になると確信していた手紙をダイアリーに添えて送っていた

根本史哉は、大学時代の母との想い出、親友だった降谷章のこと、そして今に至った自身についても、一つ一つ言葉を選び、時に目頭が熱くなるのを堪えながら優しく語ってくれた

 

 根本史哉とは再会するという固い約束をして会場を後にした

 

 ハルは静かに眼を閉じた。バラバラだったピースが一つずつ時空を超えて、鮮明な星の記憶が填め込まれていくのを揺るぎのない心の瞳で見つめていた

 

 数日後、世界中が新年を目前にして焦燥と憂慮の空気に包まれた1999年大晦日の夜。ピーターは忽然と、跡形もなく姿を消してしまった

不思議なことだが、その時ハルの心の奥に呼びかけるピーターの声が聴こえたような気がした。

「ハル!私(ピーター)は自分の影を見つけたよ」

 

 世界中が危惧した新しいミレニアムだったが、コンピューターの年号認識システムが誤作動を起こすことはなかった。こうして2000年は何事もなく無事に幕を上げ、これまでより更に熱を帯びた日常が流れ始めた

 

 2000年2月29日 24歳の陽射しが煌めく春

ラガーディア空港(NY)に降り立つハルがいる 

父、根本史哉と共に

今、ハルは心に強く誓う

 

 この掛け替えのない大切な瞬間を、

命のある限り全力で生きようと

今日より素晴らしい明日を自分の手で掴み獲る為に。

                          

                                 Complete(完)

 

編集後記(あとがき)

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小説「F(エフ)星の記憶」を父方の遠戚にあたる

今は亡き、

Mabel Haruko Murakami氏に捧げます

 

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 このストーリーは一部を除き、

登場人物名や企業名称、

アフガンの史実上の背景など

フィクションで構成されています

細部に至っては内容を削ぎ落とした部分もありますが

想像の翼で読みとって頂き、

ほんのひとかけらでも心に灯る何かを感じて貰えたら

拙い作者にとってはこの上ない喜びです。

                        星の瞳