私が尊敬する人は、父である。


私の父は、趣味がない。


仕事が趣味。


自分に厳しく、他人に優しい。


めったに怒ることはない。


それでいてなめられることもなく、


周りや部下の信頼が厚い。


しかも誠実である。


私は父から何かを習ったことがない。


本当はあるのだろうが、習った記憶がない。


自立すること。


自分で考えること。


それが父から私への教育だった。


高校時代からだろうか。


父を超えたいと思い始めた。


高校、大学、大学院と、


いつも父を意識していた。


今年、私は、新司法試験に合格した。


父に電話をした。


仕事中だったが、電話に出てくれた。


私は号泣しながら、合格を報告した。


父は喜んでくれた。


そして、忙しそうに電話を切った。


数分後、私は気づいた。


合格発表があった9月10日は、父の誕生日。


もちろん覚えていた。


だが、合格したことで気が動転し、すっかり忘れてしまっていた。


自分の合格の報告だけで、電話を切ってしまった。


先に『おめでとう』と言われたことで、『おめでとう』と言うことを忘れてしまった。


父は何も言わずに、私の合格を祝ってくれた。




いつの頃からか気づいていた。


子は、親を超えられない。


今回もまた、そう思った。


私が父を超える日はきっとこないだろう。






『私は必ずうまくいく』