私は、新司法試験に合格したら、是非とも働きたい法律事務所がある。


ロースクール2年の夏、3年の夏に事務所研修でお世話になった弁護士先生の事務所だ。


もし今年合格していたら、その日のうちに先生の事務所にお願いをしにいく覚悟である。


そこは、決して大手法律事務所とはいえない。


だが、仕事の種類や数はすごい。


何より、最初に私に弁護士業の素晴らしさを教えてくれた先生の力になりたいのである。






私の周りには、いわゆる大手法律事務所を希望する人がいる。


私も興味がないわけではない。


新司法試験をクリアした人の中でも最も優秀な人が集まる事務所で自分がどこまでやれるか勝負してみたい気持ちはある。


仲良くしてもらっている現在修習中の先輩の中に大手法律事務所から内定を得ている人がいる。


その先輩の紹介で、大手法律事務所のパートナーと話をする機会を得た。


そこで、大手法律事務所の採用に関するいくつかの情報を得た。


まず、ロースクールでの成績について、これは確実に見ている。


一定以上の成績がなければ、足を切られ、しかも成績は良ければ良いほど有利であるらしい。


また、ご承知の通り、現在は、学部の成績をも要求している事務所がある。


次に、新司法試験の成績について、これは、ひどくなければOKという程度らしい。


飛びぬけていれば有利であり、普通であれば、特に影響はなさそうである。


感覚的には、ロースクールの成績の方が大事のような気がする。


ただし、本試験後のサマークラーク、リーガルインターン(これが命)に採用されるためには、短答の成績をかなり見られるので、短答は実は非常に大事である。


次に、サマークラーク、リーガル・インターン(現役生対象、修了生対象、両方)について、もうこれで採用が決まると言って過言ではない。


どの事務所も、事務所の雰囲気を知ってほしい、アルバイトとしてきてほしい、などの建前でいるが、要は青田買いである。


上記パートナーいわく、サマークラーク、リーガル・インターンは、事務所とその人の『お見合い』らしい。


採用内定者のほとんどは、このサマークラーク、リーガル・インターン経験者に限られる。


サマークラーク、リーガル・インターンを経験してなくても内定をもらった人というのは、


その人が、もともと別ルートの人脈(親が有名弁護士、有力顧問先の社長の息子など)で、紹介されているか、決定的な能力、資格を持っている場合に限られるらしい。



また、いくつもの大手法律事務所から内定を得ている人がいるのは、ある大手法律事務所のサマークラーク、リーガル・インターンを経験しているということ自体が、他の大手法律事務所にとって、重要な指標になるからであるらしい。



そして、このサマークラーク、リーガル・インターンに参加するためには、ロースクール(学部も)の成績が非常に重要である。しかも、そもそもロースクールは上位校でなければ無理である。この基準は難しいが、大手事務所のHPを見れば、可能性のあるロースクールがわかるだろう。


全国には、74校のロースクールがあり、各校の主席だけ集めても74人にも達するので、ロースクールの名前だけで、一応の足きりを設けざるを得ないのだと思われる。だから、どんなに無名校でも主席なら可能性がある、という発想は、現実的でないだろう。


最後に、採用基準について。


法律事務所が1人のアソシエイトを雇うには、莫大な費用がかかる。それは、リスクでもある。よって、事務所側は、見る目が厳しい。


よく言われるのは、自分が、その人と一緒に働きたいと思うか。


これで決まるらしい。


ロースクールの成績や新司法試験の成績は、その判断要素の1つにすぎない。


他方、サマークラーク、リーガル・インターンは、実際に、当該事務所でその人を働かせ、飲みに行き、その人がどういう人か判断することができる。


写真や学歴、成績などの書面だけで結婚を決めるのと、短期間とはいえ、実際に会い、言葉を交わし、一緒に行動してみて結婚を決めるのと、失敗しないのはどちらか。


サマークラーク、リーガル・インターンが決定的なのは、理由があるのである。


大手法律事務所。


彼らはやはり、プロなのである。




『私は必ずうまくいく』