『逆転裁判456 王泥喜セレクション』の『逆転裁判6』の第2話についての感想です。

ネタバレ有りなので必要な方はブラウザバックをお願いいたします。

過去作についてもネタバレを含みますのでご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第二話:逆転マジックショー】

 

①【特別編】?

 

本エピソードはある意味【『逆転裁判4』特別編】とでも呼ぶべきエピソードでした(または『逆転裁判4』最終話)。

それだけ『4』の後日談的な色合いが濃いエピソードであり『4』の二次創作という印象さえあります。

ただ、本来は『4』でやっておくべきことだったことを『4』でやってなかったと思いますから仕方ありません。

実際、みぬき、或真敷一座の深堀りが進み、本作で大分『4』が救済された印象さえ受けます。

 

本話の最大の見どころは【容疑者:成歩堂みぬき】です。

『逆転』シリーズには「ヒロインは容疑者(被告人)になるもの」という「あるある」が存在します。真宵も茜も美雲も心音もそうでした。

 

~大ピンチのヒロイン!そして、それを救う主人公~

 

というベッタベタな展開なのですが、これがとりわけ盛り上がるのですから仕方がありません。

しかし『4』でみぬきにはそれがありませんでした。これは『4』が今までにない展開を模索したからだと考えられますが、結果的に物足りなさにも繋がったと思います。

そのベッタベタな展開を『6』でやることとなったわけですが、これによりみぬきの内面や王泥喜の決意を描けるわけです。

正直言うとこれは『4』の時点でやってしかるべき展開だったと思います。

そして、みぬきが被告人となることで「或真敷一座」も再びクローズアップされました。振り返れば、今回の事件は「或真敷の運命」に揺さぶりをかける物語でした。連続ドラマで言うところの「縦軸」にあたる話と言えるでしょう。

 

今回の被害者:Mrメンヨーは元或真敷一座のマジシャンであり、一座を追放された後独立、数年前にブレイクし今回みぬきと共演を果たすはずでした。

留置所に入れられたみぬきはメンヨーを思いやる言葉を語ります(Mrメンヨーにも未来があったのに自分がマジックのミスで奪ってしまったのだろうか、と)。

ここら辺の気配りの描写は彼女の優しさや気弱さといった人間味が感じられて非常に大事であったと思います(『4』のときにはこういう描写があまりなかった)。

王泥喜を信じて彼女が泣く場面、王泥喜がみぬきを信じる場面は二人の絆も感じられました。

やはり、『4』の時点でやっておくべ(以下略)

 

ちなみに「真のエンターテイナーは、どんな時でも笑顔でいなければならない」という或真敷のポリシーですが、過去作でも見た気がするのですが、実際どうでしたっけ?

 

②かつてないタイプの絶体絶命

 

「ショーで事故があったら3億円の損害賠償」という悪質契約の罠にはめられ事務所の物品が悉く差し押さえられる事態となり、さらに偏向報道のせいで事務所が一般人の目の敵にされ嫌がらせにまであうという事態に陥ります。

これはシリーズでなかったパターンでした。

「絶体絶命の孤立感」はシリーズの初期に顕著に見られたのですが、それを再び味わさせてくれたように感じました。

 

③真犯人のキャラ造形

 

本話の真犯人:志乃山金成プロデューサー(ヤマシノP)は外見も内面も非常にキャラ造詣が秀逸なのです。

彼こそが本物のMrメンヨーであり、一座を追放後TV業界人としての道を歩み、一座への復讐の機会を狙っていたのでした。

まず、外見は一見業界人そのものの見た目のようでありながら、実は或真敷マジシャンそのものでもあるというイリュージョンのような外見でした。

また、本話のトリックですが、彼の魔術師としての側面とTVプロデューサーとしての側面の両方があって成立するトリックでした。

そう、彼の構成要素に「2つ」というものがあります。

 

職業:TV業界人とマジシャン

メンヨーの衣装:緑と紫

得意マジック:コインを使うものと炎を使うもの

 

です。マントを留める部分も或真敷が1つなのに対してメンヨーは2つです。

これは「マジック1つを極めようとする或真敷」との対比であるように感じます。

 

④或真敷の光と影

 

みぬきとメンヨーの対比が際立ちます。

或真敷の後継者となるみぬき、或真敷を追放されたメンヨー

マジックという1つの道を進むみぬきと2つの道を進むメンヨー

人を驚かす術としての【マジックとドッキリ】というのも対照的です。

まさに光と影です。

メンヨーは或真敷を「犯罪者の血」と罵りますが、その「犯罪者の血」を一番色濃く受け継いでいるのはメンヨーだったというのは皮肉です。また、彼には或真敷への「愛憎」を感じさせました。

 

最終的にメンヨーは「自分は或真敷に負けていない」と負け惜しみを喚きながら退場するのですが、これも実に皮肉がかっています、王泥喜君は実は或真敷の血を引いているわけですから。

 

⑤終盤の展開

 

今回再プレイをしてみて気になった点を一つ…

それは終盤の展開がやや駆け足気味だったことです。

 

証拠として提供された映像は編集されたものであり、剣の入れ替えマジックはきちんとなされていたことが判明した時点でヤマシノPが話に割って入ってきます。

その際の彼の主張は…

 

・剣の入れ替えマジックはきちんと成されたのかもしれない(真偽はあくまで本人の申告だから不明)

・被害者に剣が刺されたのは棺桶に刺した時ではなく、カキワリ落下後

 

という主張をしてきます。

このあたり、非常にあっさりと話が進むのですが、どうもこの時点で議論の流れは

 

「剣の入れ替えは成されたが、本当の犯行タイミングはカキワリ落下後」

 

ということが確定しているようなのです。

そして「棺桶に血を付ける事後工作が行われた」というのがヤマシノPの主張のようです。

ただ、こうなると「棺桶に血を付ける事後工作」をみぬきが行なう理由が謎です、結局自分が刺したことに変わりはないのですから。

可能性としては「棺桶に血を付けることで剣の入れ替割に気づけず刺したという事故を装うつもりだった」となるのかもしれませんが、それなら最初から本物の剣で棺桶を刺せばいいような気がしますし…。

あるいは、棺桶からしんだふりしたメンヨー(2代目)が出てきた直後に犯行を決意した?

どうもこのあたりの話の趣旨(みぬきを犯人とする主張)がわかりにくいです。

 

また、最終的には事後工作を行ったヤマシノPのミスでヤマシノPが犯人だとバレるのですが、ここに至るまでにもう少し必要だったと思うのは…

 

・ヤマシノPはショー中断後ステージに入ったか?

・入ったのは判明し、事後工作を行えるのはみぬきかヤマシノPのどちらかのみ(どちらかが犯人なのは間違いなし)

 

という展開だったと思います。

「キキに入っていくのを目撃された」というような話は入れておいた方がよかったと思います。

そして、【事後工作を行えたのは2人だけ → こんなミスをするのはヤマシノPしかいない → 勝利】 という展開にした方がきれいだと思いました。

 

 

 

色々書きましたが、それでもこの第2話は『6』の中でも好きな話です(笑)

(まあ、私、『6』は全般的に好きですが(笑))