小説「カレーの匂い」第83回~「カレーの匂い」第83回~ 車の往来も間遠になった青梅街道を横切る。 商人宿になり下がった青梅ホテルのわびしい灯りが 眼の前にまたたいている。ホテルを過ぎた辺りから は近所の眼をはばかる必要もない。五、六分歩くと 噴水の湧く駅前広場に出た。 日ごろなら野良犬が食い物屋の裏で生ゴミをあさって るか、ふらついた足取りの酔っ払いがぐだぐだ居るく らいのひっそりかんとした広場が、今夜に限って何や ら騒々しい。