小説「カレーの匂い」4~ 「カレーの匂い」4~ そうそう、それでいいんだと、おやっさんをむしろ煽りたく なってくるくらいだ。隣は靴屋、夏真っ盛りのこの時期、店先 には涼しげなゴム草履が色とりどり並べられている。 大人用子供用とどっさり積み上げられ、出血サービスの赤札 が風にひらめいている。薬局屋のおかみさんは喋くり漫才とあ だ名がつくほどだ。背中の折れ曲がった婆さん相手によく廻る 舌で、薬の効能を教えてやってるのか独演会の最中らしい。