【閉じる島】第34回
ブーゲンビレアの紅い花房が
うっそうと垂れかかる玄関先に
待っていたトモミから、浩樹は、
その日の連絡事項を聞き置き、
何よりも先に採れたてのヤビジの幸で
空腹を満たすことにした。
網袋の中から次々と取り出される
砂や藻が付着したままのシャコ貝に、
トモミはびっくりして体を泳がせかけて
いる。というのも、繁華な街なかで
育ったトモミには、
当然のごとく、潮干狩りの経験とてなく、
波型の口が喰いつかんばかりに
裂けたシャコ貝など
眼にするのも始めてなのである。