「カレーの匂い」第152回
ベランダには七夕みたいに
色とりどり、赤ん坊の肌着やら、
びらびらのベビー服が干されていた。
星屋自身の古い記憶の中から
抜け出して来た町らしい。
その日、星屋は赤ん坊を
さらいに、その海沿いの町へ
やって来たのだ。
しかし、いくら考えても
かどわかしの妙案は
浮かばなかった。
どんな方法をつかったとしても、
小学生の星也にはとても、
成功しそうには思われない。
それより何より、赤ん坊を青梅の家へ
さらって来たところで、あの男が
一緒になって、この家へ住む筈はない。