「カレーの匂い」第146回
爺さんの方へ、
へなへなと倒れ込んでゆく。
「どうしたんね、佐和さんや、
110番するかね」
問われて、母親は首を強く振った。
何でもない何でもない、と応える。
「ホントに?警察呼ばんでもええのかい」
疑わしげにこっちを見る。
爺さんの眼と眼が合った。
「珍しいのう、息子さんの顔、
見るんは何年ぶりかのう」
知らない爺さんの筈が星也に
向かって、
馴れ馴れしい口を利く。
「学校にも行きよらんと、
引きこもってばっかり、居ると、
噂には聴いとったんだけど、、、、
元気そうじゃなあ、
よかった、よかった」
爺さんは母親を抱きかかえる恰好で、
半開きになったドアを背に
話しかけて来る。