1992~1996年のサザンとユーミン①~1992年『涙のキッス』と『ずっとあなたが好きだった』 | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

私は、1990年代に10代の学生時代を過ごした。

従って、「1990年代」とは、私にとっての「青春時代」と同義語である。

その1990年代に聴いた音楽や、夢中になって見たドラマなどは、今でも鮮明に印象に残っているが、やはり「青春時代」に味わった作品は、人生にとって特別な地位を占めている。

 

 

という事で、今回、私がテーマとして描こうとしているのは、

「1992~1996年のサザンとユーミン」

である。

1992(平成4)~1996(平成8)年といえば、ちょうど私が中学~高校の時期にあたるが、その時期は、サザンオールスターズ松任谷由実(ユーミン)の黄金時代でもあった。

サザンとユーミンは、1992(平成4)~1996(平成8)年頃、テレビドラマとのタイアップで、大ヒット曲を連発しており、サザンとユーミンの長いキャリアの中でも、特に華やかだった時期と言って良い。

という事で、その「第1回」として私が取り上げるのは、

1992(平成4)年にTBSで放送された『ずっとあなたが好きだった』というドラマと、

そのドラマの主題歌だった、サザンオールスターズ『涙のキッス』である。

 

 

 

『ずっとあなたが好きだった』は、1992(平成4)年7~9月にかけて放送され、

主演の桂田冬彦を演じた佐野史郎「怪演」が話題になり、「冬彦さんブーム」を巻き起こした。

そして、サザンが歌った主題歌『涙のキッス』も大ヒットを記録したが、『涙のキッス』は、私にとって特別な曲である。

何故かといえば、私は『涙のキッス』を聴いて、サザンのファンになったからであり、私がサザンファンになったキッカケの曲だからである。

という事で、「1992~1992年のサザンとユーミン」の「第1回」、

「『涙のキッス』と『ずっとあなたが好きだった』」

を、ご覧頂こう。

 

<1992(平成4)年7月3日~TBSドラマ『ずっとあなたが好きだった』放送開始~その主な登場人物について>

 

 

では、まずは『ずっとあなたが好きだった』の、主な登場人物を、ご紹介させて頂く。

主な登場人物は、下記の通りである。

 

西田美和…賀来千香子

大岩洋介…布施博

桂田冬彦…佐野史郎

桂田悦子…野際陽子

西田常雄…橋爪功

中井律子…宮崎ますみ

 

 

まず、『ずっとあなたが好きだった』の、大まかなストーリーをご紹介させて頂く。

西田美和(賀来千香子)大岩洋介(布施博)は、高校時代に「恋人同士」だったが、ある事情により、無理矢理に別れさせられてしまった。

しかし、それ以来、お互いの事がずっと忘れられずにいた。

その後、時が流れ、西田美和(賀来千香子)は、父・西田常雄(橋爪功)の勧めにより、東大卒のエリート銀行員・桂田冬彦(佐野史郎)「見合い結婚」をした。

しかし、この桂田冬彦(佐野史郎)は、母親の桂田悦子(野際陽子)にベッタリの、所謂「マザコン」であり、徐々に、その異様な性格が露わになって行く。

異常な性格の「冬彦さん」親子に振り回され、結婚後、ひと時も気が休まる暇が無かった美和であるが、ある時、美和は偶然に高校時代の恋人・洋介と「再会」した。

しかし、その時、既に洋介にも中井律子(宮崎ますみ)という恋人が居た。

久々に「再会」した美和と洋介は、昔の「恋人同士」だった頃の事が忘れられず、気持ちが再燃してしまう。

しかし、前述の通り、美和は結婚し、洋介にも恋人が居る。

果たして、この登場人物達の運命や、如何に…といった内容である。

 

<『ずっとあなたが好きだった』の主題歌、サザンオールスターズの『涙のキッス』~「平成の『いとしのエリー』を作って下さい」と、TBSのプロデューサー・貴島誠一郎に依頼され、『涙のキッス』を書いた桑田佳祐>

 

 

 

 

では次に、『ずっとあなたが好きだった』の主題歌、サザンオールスターズ『涙のキッス』について、ご紹介させて頂く。

TBSのプロデューサー・貴島誠一郎は、1992(平成4)年7月放送開始予定のドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌として、サザンオールスターズに白羽の矢を立てた。

その時、貴島誠一郎は、サザンの桑田佳祐に、

「平成の『いとしのエリー』として、長く歌い継がれるような曲を作って欲しい」

という依頼をした。

そして、その依頼を受けて桑田が作詞・作曲したのが、

『涙のキッス』

という名曲中の名曲であった。

桑田は、貴島の期待に見事に応え、本当に素晴らしい曲を作ってみせた。

冒頭で述べた通り、当時、中学生だった私は『涙のキッス』を聴いて、サザンのファンになった。

『いとしのエリー』が、「昭和のサザン」を代表する名曲なら、

『涙のキッス』は、「平成のサザン」を代表する名曲と言って良い。

こうして、『涙のキッス』は、『ずっとあなたが好きだった』とのタイアップで、1992(平成4)年7月18日、サザンの新曲として、『シュラバ★ラ★バンバ』との2枚同時発売のシングルとして、リリースされた。

 

<『ずっとあなたが好きだった』の、「あらすじ」①~「悲恋」に終わった、高校時代の西田美和(賀来千香子)と大岩洋介(布施博)~そして、父・西田常雄の強い勧めで、東大卒のエリート銀行員・桂田冬彦(佐野史郎)と結婚した美和だが…?>

 

 

では、『ずっとあなたが好きだった』の「あらすじ」を、ざっとご紹介させて頂く。

このドラマの主人公・西田美和(賀来千香子)は、東京のホテルの結婚式場で働いている、29歳の女性である。

美和は、仙台の出身だったが、美和の実家は仙台で和菓子屋を経営していた。

ある時、仙台から上京して来た、美和の父親・西田常雄(橋爪功)から、「お見合い」を勧められる。

美和は渋っていたが、父・常雄は、

「お前、もう30歳になるんだろう。相手を選んで良いのは20代までだ」

と言って、美和には有無を言わせない調子である。

更に、父親は美和に、こんな事も言った。

「お前は、また俺を裏切るのか?」

父にそう言われ、美和は返す言葉も無かった。

 

 

実は、美和は高校時代、地元の高校のラグビー部のマネージャーをしていた。

その時、美和はラグビー部の選手だった大岩洋介(布施博)「恋人同士」だった。

だが、洋介の事を一方的に好きだった、ある女の子は、2人の仲に嫉妬を募らせていた。

そんな中、美和と洋介は「朝帰り」をしてしまったが、それを知った件の女の子は、激しいショックを受け、美和に対する恨みつらみをぶちまけた「遺書」を残し、自殺をしてしまった…。

この「事件」は、美和の地元に大変な衝撃を与えた。

周囲からの冷たい視線を浴びた美和は、親から洋介と、無理矢理に別れさせられてしまった。

そして、美和は仙台に居づらくなり、高校卒業後、逃げるように仙台を去り、東京に出て来ていた。

前述の事件で、美和の両親も周囲から冷たい視線を浴びてしまったが、常雄はその「事件」以来、肩身の狭い思いをしていた。

父親に、その時の事を持ち出されると、美和も返す言葉が無かったのであった。

 

 

 

そして、美和は父親が持って来た「縁談」の相手…桂田冬彦(佐野史郎)と、仙台で「お見合い」をした。

その時、冬彦と一緒に居たのが、冬彦の母・桂田悦子(野際陽子)であった。

なお、冬彦は東大卒のエリート銀行員であり、「稼ぎ」は物凄く良かった。

つまり、結婚相手としての「条件面」では、最高と言って良い。

そして、その「お見合い」の結果、冬彦は美和を大変気に入ったようであり、美和も冬彦には、好印象を持った。

そして、美和と冬彦は、また東京で会う事になった。

 

 

ところが、ここから美和に思わぬ運命が待ち受けていた。

美和は、懐かしさから、かつて通っていた高校のグラウンドに行ってみると、そこには、かつての美和の恋人・大岩洋介(布施博)が居た。

かつて、ラグビー部のスター選手だった洋介は、今は社会人ラグビーのコーチをしており、偶然、仙台に来ていた。

そこで、美和と洋介は、あの「事件」以来、12年振りの「再会」を果たした。

2人は、懐かしさから昔話に花が咲き、2人で食事をした。

この時は、一応それだけで別れた美和と洋介だったが、何だか凄いタイミングで「再会」してしまったものである。

 

 

そして、東京に帰った後、冬彦は、まだ美和と会って2度目にも関わらず、早くもプロポーズをして来た。

すると、美和の父・常雄も、大変、乗り気であった。

それというのも、常雄が経営する和菓子屋は経営が苦しく、冬彦が務める銀行から融資を受けていたのであり、

従って、冬彦と美和の縁談は、常雄にとっても、

「願ったり叶ったり」

だったのである。

つまり、美和と冬彦が結婚してくれれば、和菓子屋の経営も安泰というわけである。

そんな実家の都合もあり、美和は冬彦との結婚を決意した。

 

 

 

 

そして、美和冬彦の結婚式の当日、

何と、その結婚式場に、洋介も偶然来ていた。

洋介は、ラグビー部の仲間の結婚式に出席していたのである。

「大岩君…」

「西田…」

思わぬ形で顔を合わせた美和と洋介は、一瞬、驚愕の表情を見せたが、洋介はすぐに、

「西田、結婚おめでとう」

と言って、美和を祝福した。

その様子を見て、美和の父・常雄は顔を強張らせた。

「こんな時に、よりによって、こいつが居るなんて…」

とでも言いたげな表情である。

そんな美和たちの様子を、冬彦は、何やら複雑そうな表情で見ていた。

そして、この物語が「大波乱」になって行くのは、その後である。

 

<『ずっとあなたが好きだった』の、「あらすじ」②~冬彦の異常な「マザコン」ぶりと、変質狂的な性格が露わになり、精神的に追い詰められて行く美和…そして、美和と洋介との仲を疑い、嫉妬を募らせて行く冬彦>

 

 

 

さて、ともかく「新婚生活」をスタートさせた美和と冬彦であるが、

徐々に、美和は冬彦の言動に対し、「違和感」を持つようになって行った。

冬彦は、自宅のパソコン(※当時は、自宅にパソコンが有る人は珍しい時代だった)でも常に仕事をしているような男であり、

その様子は、ちょっと「オタク」っぽいといった趣で描かれていた。

だが、それはまだ良いとして、ある時、こんな事が有った。

新婚早々、美和は冬彦のために手料理を作ったが、冬彦は美和に、こんな事を言った。

「有り難う、美味しかったよ」

冬彦にそう言われ、美和は嬉しそうな表情だ。

だが、冬彦はすぐに、

「でも、味噌汁は酷かったね」

と、バッサリと切り捨てた。

「そんな言い方、しなくても…」

美和は、悲しい気持ちになっていた。

 

 

 

また、冬彦には「蝶の標本」を集める趣味が有った。

しかも、その「蝶の標本」は、異常に数が多かった。

「何これ…」

美和は、それを見て困惑の表情だった。

そして、ドアの影から、冬彦が半分、顔を出し、その様子をじっと見ていた。

更に、冬彦には「ファミコン」の趣味が有り、「ファミコン」に夢中になっている時は、美和が話しかけようとすると、

「うるさい、邪魔するな!!」

と言って、怒鳴り付けたりしていた。

そんな風に、ちょっと変わった所が有る冬彦だったが、それはまだ良い。

美和を特に困惑させたのが、冬彦の重度の「マザコン」ぶりである。

 

 

実は当初、『ずっとあなたが好きだった』は、

お互いに好きでありながら、別れなければならなかった、美和洋介が偶然に再会し、

その美和と洋介の「純愛」の「ラブストーリー」が描かれる「構想」だたっという。

だが、その「構想」を根本から覆したのは、佐野史郎野際陽子「怪演」ぶりであった。

 

 

当初の構想では、桂田冬彦(佐野史郎)と、その母・桂田悦子(野際陽子)は、あくまでも「脇役」だった。

しかし、『ずっとあなたが好きだった』の第1話で、冬彦(佐野史郎)が手を怪我して出血した時、母・悦子(野際陽子)は、咄嗟にその指を自分の口で咥え、「止血」をした。

実は、これは野際陽子「アドリブ」だったようだが、プロデューサー・貴島誠一郎は、この場面を見て、

「これは、面白い。冬彦の『マザコン』ぶりを強調した脚本に変えよう」

と、思い付いたのだという。

こうして、このドラマの「方向性」は決まった。

 

 

 

こうして、冬彦「マザコン」という設定が加えられたが、

佐野史郎野際陽子「怪演」ぶりは、回を重ねるごとに、どんどんエスカレートして行く。

冬彦の母・悦子は、何かといえば、年がら年中、冬彦・美和の夫婦が住む家を訪ねて来ては、

「冬彦さん、冬彦さん」

と言って、冬彦に異様に干渉して来るような母親であり、冬彦も、そんな母親に全く逆らえない、重度の「マザコン」であった。

「貴方、冬彦さんのために、もっと料理を頑張らないとダメよ」

などと言って、悦子は美和に、色々と注文を付け、冬彦も、そんな母親にベッタリである。

そんな親子の様子を見て、美和も精神的に追い詰められて行く。

「私、何でこんな人と結婚しちゃったんだろう…」

美和は、すっかり、冬彦との結婚を後悔するようになっていた。

 

 

そんな中、偶然にも(※このドラマには、やたらと「偶然」が多いが、ドラマとはそんな物であろう)、

美和冬彦が暮らす新居の近くに、洋介が住んでいる事がわかった。

洋介は美和に対し、

「今度、旦那と一緒に、俺のラグビーの試合を見に来てくれよ」

と、声を掛けた。

美和は、冬彦と結婚していたとはいえ、まだ洋介に対する思いが残っていたので、洋介に会うだけで嬉しそうな様子である。

 

 

 

だが、洋介には当時、既に交際して6年になる、中井律子(宮崎ますみ)という恋人が居た。

どちらかといえば、律子の方が洋介に「ゾッコン」であり、律子は洋介に「逆プロポーズ」していたぐらいだったが、

洋介は、なかなか律子との結婚には踏み切れないでいた。

もしかしたら、洋介も美和に対する「未練」が残っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

そして、洋介のラグビーの試合の当日。

冬彦は、所用により、試合を見に行く事が出来ず、美和が1人で試合を見に行った。

その試合で、洋介は負傷をして倒れてしまたったが、その時、洋介は美和が高校時代にプレゼントした、手作りの「お守り」を、まだ持っているという事を美和は知った。

「大岩君、まだ持っててくれたの…」

美和は、それを知って嬉しそうな様子だった。

だが、この時、後から駆け付けた冬彦が、その様子を物陰からじっと見ていた。

「美和は、あいつの事が、まだ好きなのか…」

冬彦は、猜疑心と嫉妬を募らせて行く。

そして、この後、「冬彦さん」は、どんどん、ぶっ壊れて行ってしまう。

そして、その「冬彦さん」の異様な「ぶっ壊れぶり」が、視聴者を熱狂させて行くのである。

 

<『ずっとあなたが好きだった』の、「あらすじ」③~「冬彦さん」の異様な人格が露わになり、「冬彦さん」を拒絶して行く美和~そして、美和と洋介の「焼け木杭(ぼっくい)」に火が付く>

 

 

 

という事で、この後の「冬彦さん」の「ぶっ壊れ」ぶり…佐野史郎の「怪演」ぶりは、ますますエスカレートして行く。

ここでは、いちいち詳述はしないが、冬彦には「幼児性」が有るのか、自分の「蝶の標本」を勝手に触った美和に、

「勝手に弄るな」

と言って、厳しく叱責したり、そんな冬彦を気味悪がり、距離を置こうとする美和に、異様に執着するようになったりした。

だが、美和には何も「落ち度」が無かったのかといえば、そうとばかりも言い切れない。

美和は、冬彦への気持ちが離れて行くと、洋介と2人きりで会ったりするようになっていた。

そして、冬彦はそんな美和の後を付け廻し、

「ストーカー」

紛いの事までするようになった。

 

 

 

そして、美和との結婚生活が全く上手く行かなくなり、精神的にも完全におかしくなった冬彦は、

まるで幼児のように、唇を尖らせ、

「ん~~~~ん!!」

と、異様な声を出したり、突然、奇声を発したり、いきなり高笑いしたりと、異常な性格が、どんどん露わになって行く。

皮肉な事に、その「冬彦さん」の異常な人格が、前面に押し出されるようになって行くと共に、『ずっとあなたが好きだった』の視聴率は、「爆上がり」して行く。

初回が13%と、平凡な視聴率だったにも関わらず、回を重ねるごとに、20%台を突破し、やがて30%台に迫る勢いとなった。

遂には、

「冬彦さんブーム」

と称されるほど、『ずっとあなたが好きだった』は、世間を熱狂させて行く。

そして、サザンが歌う『涙のキッス』も、「冬彦さんブーム」にも乗って、爆発的な大ヒットとなった。

 

 

そして、未だに「伝説」として語り継がれているのが、

所謂「木馬のシーン」である。

冬彦を溺愛するあまり、子供の頃から、冬彦に何でも物を買ってあげていた、母・悦子であるが、その物の中に、子供の頃に買ってあげていた「木馬」が有った。

冬彦が、その木馬に乗る場面が有るが、これも、冬彦の「マザコン」ぶりと、異様な性格を象徴する場面として、話題になった。

なお、この時、賀来千香子は、本当は笑いをこらえるのに必死だった…というエピソードが有る。

 

 

 

その後、冬彦と美和、そして洋介が、どうなったのかと言うと、

美和も一旦は冬彦とやり直そうとしたが、やはり、その溝はどうしても埋める事が出来なかった。

そして、美和は冬彦との「離婚」を決意したが、そんな時、何と美和は冬彦の子供を妊娠したのである。

これまた、凄いタイミングだが、もうすっかり冬彦への気持ちが離れていた美和は、

「離婚して下さい。子供は私が育てます」

と言った。

その後、家を出た美和であるが、洋介も恋人の律子とは、既に別れていた。

そして、美和と洋介は、「焼け木杭(ぼっくい)」に火が付き、よりを戻した2人は、一緒に暮らすようになっていた。

洋介は、美和が冬彦の子供を身籠っているのを知った上で、その子供を自分が育てると言っていた。

 

 

そんな美和と洋介が暮らす家に、冬彦が押し掛けて来た。

「子供は、俺が育てる。あんたは帰ってくれ」

洋介は、そう言って、冬彦を追い返そうとした。

だが、追い出された後も冬彦は帰ろうとせず、部屋の外で、ひたすら数を数え始めた。

そして、これは冬彦を演じた佐野史郎の「アドリブ」だが、

「108」まで数を数えた冬彦は、「除夜の鐘」の「煩悩の数」と同じ…という事を意味するのか、

「106、107、108…ゴーン…」

という事を言っていた。

何とも不気味な場面だが、こんな場面を演じる事が出来るのも、佐野史郎だけであろう。

 

<『ずっとあなたが好きだった』の、「あらすじ」④~壮絶な人間関係を巡るドラマの、衝撃の「結末」とは…?>

 

 

こうして、視聴者を熱狂させた『ずっとあなたが好きだった』は、遂に衝撃のクライマックスを迎える。

それまで、母親の言いなりで過ごしていた冬彦が、遂に母親に叛旗を翻した。

考えてみれば、何でも母親の言いなりだったために、それまでの人生、冬彦は自分の意思を通す事が出来ずにいた。

そして、冬彦は冬彦なりに、妻の美和を大事にしようとしていたのかもしれないが、その結婚生活も上手く行かず、破綻に終わろうとしていた。

そんな鬱憤が溜まりに溜まっていた冬彦は、ある日、遂に大暴れをしてしまう。

その時、冬彦の母・悦子と、美和が、冬彦の様子を見に来ていたが、

冬彦は、2人の前で、それまで集めていた、あの「蝶の標本」を、手当たり次第に壊しまくった。

 

 

「冬彦さん、何でこんな事をするの!?貴方が欲しい物は、何でも与えてあげたでしょう?美和さんも…」

母親にそう言われた冬彦は、

「美和は違う!!」

と、激怒した。

そして、冬彦は母親に対し、

「もう好きにさせてくれよ!!」

と言うと、あの「蝶の標本」を叩き割ったガラスの破片で、母親を刺してしまった。

あまりにも衝撃的な展開に、視聴者は呆然としたものである。

 

 

冬彦に刺された母親は、幸い、一命を取り留めた。

だが、冬彦は殺人未遂で逮捕され、拘留されてしまった。

そんな冬彦を美和が訪ねたが、その時、冬彦は衝撃的な「告白」をした。

「実は僕…。子供の頃から君を知ってたんだ…。僕の母が、君の実家の和菓子屋さんが好きで、よく行ってたんだ。そこの娘さんの君を、僕は知っていた。君は、昔から本当に可愛かった…。君は僕の初恋の人だったんだ…」

そんな事を知らなかった美和は、驚愕した。

「冬彦さん…。何で今まで言ってくれなかったの?」

美和に聞かれた冬彦は、

「それを言ってしまうと、君と大岩君との関係を認めるような気がして、言えなかった」

と、答えていた。

冬彦は、

「ずっと、君の事が好きだったんだ…」

と、言った。

その時の冬彦の表情は、すっかり憑き物が落ちたように、穏やかになっていた。

 

 

 

「君には、幸せになって欲しい…。さよなら」

冬彦は、最後に美和にそう告げると、面会室の奥へと消えて行った。

冬彦は、異様な性格ばかりが強調されていたが、本当に美和の事を愛していたのであった。

それを聞いて、美和も複雑そうな表情だったが、冬彦は、もっと早く、その事を美和に言っていれば、この夫婦にも、また違った未来が有ったのかもしれない。

その後、美和と冬彦は正式に離婚した。

「生まれて来る子供が、犯罪者の子供として生まれて来るのは可哀想だから」

それが、冬彦の意思であった。

ちなみに、冬彦から美和への衝撃の「告白」が有った『ずっとあなたが好きだった』は、「視聴率34.1%」を記録した。

まさに、驚異的な大ヒットである。

 

 

そして、物語はいよいよラストシーンに向かう。

美和と洋介が、腕を組み、歩いていた。

2人は、これまで有った、色々な出来事を思い出していたが、やがて2人は足を止めた。

「ずっと…ずっと…あなたが好きだった…」

美和がそう言うと、美和と洋介はキスをした。

そう、『ずっとあなたが好きだった』というのは、冬彦の美和に対する思いでもあり、美和の洋介に対する思いでもあった…つまり、これは「ダブルミーニング」だったのである。

 

 

 

その後、美和と洋介は結婚した。

美和は、冬彦との間に生まれた長男を出産し、美和と洋介との間にも、長女が生まれ、4人家族として過ごしていた。

幸せそうに過ごす4人家族の様子が映し出されていたが、美和がふと、不安そうな様子で後ろを振り返る。

「美和、どうした?」

「ううん、何でもないわ」

美和は気のせいだと思い、夫と2人の子供と共に歩き始めた。

しかし、この時、4人家族の後ろには、草の上にアゲハ蝶が止まっていたのであった。

それは、「冬彦さん」が集めていた、あの「蝶の標本」を彷彿とさせる物であった…。

 

<1992(平成4)年7月18日にリリースされ、大ヒットを記録した、サザンオールスターズの『涙のキッス』>

 

 

では最後に、『ずっとあなたが好きだった』の主題歌であり、

1992(平成4)年7月18日にリリースされ、大ヒットを記録した、サザンオールスターズ『涙のキッス』の歌詞を、ご紹介させて頂く。

これまで述べて来た通り、私は『涙のキッス』がキッカケで、サザンのファンになった。

そして、『涙のキッス』は大好きな曲であり、私はそれこそ、この曲を何百回、何千回(?)とカラオケ等で練習して来たので、私は『涙のキッス』は、歌詞を全く見ずに歌えるほどである。

私にとって、そんな曲は数えるほどしか無いが、それだけ『涙のキッス』は、私の脳裏に深く刻まれた曲である。

なお、楽曲の歌詞の部分で言うと、

「今すぐ逢って」「なぜにだまって」「真面(まじ)でおこった」「互いにもっと」「いつも笑った」「夜風がそっと」

…の部分で、韻を踏んでいるので、まずそこが覚えやすい。

そして、サビの部分の、

「涙のキッス」「最後のキッス」

の繰り返しも、本当に印象深い。

つまり、桑田佳祐は、本当に歌いやすくて覚えやすい歌を作っており、まさに熟練の技術だと言って良い。

という事で、私が大好きな『涙のキッス』の歌詞は、下記の通りである。

 

 

『涙のキッス』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

今すぐ逢って見つめる素振りをしてみても

なぜに黙って心離れてしまう?

泣かないで夜が辛くても

雨に打たれた花のように

 

真面(まじ)でおこった時ほど素顔が愛しくて

互いにもっと解かり合えてたつもり

行かないで胸が痛むから

他の誰かと出逢うために

 

涙のキッス もう一度

誰よりも愛してる

最後のキッス もう一度だけでも

君を胸に抱いて

 

いつも笑った思い出だらけの二人にも

夜風がそっと恋の終わりを告げる

悲しみの時間(とき)は過ぎるけど

きっと明日の夢は見ない

 

涙のキッス もう一度

誰よりも愛してる

最後のキッス もう一度だけでも

君のために贈る

 

ふられたつもりで生きてゆくには

駄目になりそうなほど

悲しみが消えない

 

涙のキッス もう一度

誰よりも愛してる

さよならは言葉にできない

それは夏の運命(さだめ)

 

涙のキッス もう一度

誰よりも愛してる

最後のキッス もう一度だけでも

君を抱いていたい