夜~洋~
佐藤さんを待ちながら、コーヒーを飲んだ。ここまで来たら夕食に誘おうと心に決めた。
何処が良いだろう。もう8時近い、近くの居酒屋が無難だろうか。
煙草を吸わない洋は、待ち時間の潰し方がよくわからない。本でも読めば良いのだろうが、あまり読書家ではない。佐藤さんは本の虫というイメージがある。自分には無い趣味も、魅力的に感じる。佐藤さんは洋のことをどう思っているのだろうか。昨日までは単なる同僚だっただろうが、夢に出てきた相手を気にしないはずはないはず。
ごちゃごちゃと考えていると、早足で佐藤さんが現れた。
丁寧にポチ袋に入った千円を返してもらい、すぐに帰るそぶりをしたので思いきって居酒屋に誘ってみた。
佐藤さんが少し迷惑そうな顔をしているのがわかった。少しがっかりしながら、
「ぼくの家ここから遠いので、佐藤さんが羨ましいですよ~駅が近いのも便利で良いですね♪」
鞄に手を掛け、帰る準備を始めた。仕方ない、また次に機会があれば頑張ろう。そう思っていると、
「ピザでも取って家で食べていきますか?」
と、耳を疑うような事を佐藤さんが言った。
はっきり言って興奮した。そして自分でもびっくりするようなでかい声を出してしまった。
佐藤さんはその場でピザを注文すると、一旦家に帰っていった。散らかっていると言っていたっけ。佐藤さんの部屋に入れるならいくらでも待つつもりだった。
コーヒーはすっかり冷えてしまった。洋は猫舌まではいかないが、熱い物があまり得意ではない。冷めるのを待っている間に気がついたら冷えすぎていることが結構ある。冷たいコーヒーを見つめていると、喫茶店のマスターが何も言わずに新しい、そんなに熱くないコーヒーと取り替えてくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、
「響ちゃんと仲良くしてやって♪」
と返された。
「佐藤さん、よくこの喫茶店来るんですか?」
「学生時代バイトしてくれてたから」
そういえば、佐藤さんは勤めている大学の卒業生だったはずだ。マスターと色々話していると、佐藤さんから電話があり、喫茶店を後にした。
喫茶店を出ようとするとマスターが、
「女の子の部屋に行くんだから花でも持っていきな」
と言って、小さな花束を渡された。花束を受け取った瞬間、思った以上に緊張しているのがわかった。
ドキドキしながら階段を上り、部屋の前まで来た。チャイムを鳴らす手が震えた。女性が、しかも佐藤さんのように真面目そうな女性が、異性を部屋に入れるということは、やはり脈ありということなんだろうか。まさか、正夢になるのだろうか。また一段と緊張感が増す。
佐藤さんがドアを開けてくれた。マスターに貰った花束を渡すと、洋の大好きな笑顔が見れた。気持ちが舞い上がる。
二人でピザを待つ間、喫茶店の話や、このマンションに学生時代から住んでいること等色々な話が聞けて、洋は嬉しかった。コーヒーも美味しかった。喫茶店のコーヒーと似た味だった。ピザが届きビールを飲みながらピザを食べると、あっという間に10時近くになっていた。この状況で帰るのは名残惜し過ぎる。ビールを飲んだせいか、洋は少し大胆な気持ちになっていた。
佐藤さんが、時間を気にしてくれた。そして、
「また来てくださいね♪」
なんて言われて、洋はとてもとても嬉しかった。佐藤さんが笑う。洋の大好きな笑顔を見ていると、佐藤さんと目が合う。ゆっくり近付いた。佐藤さんの顔が少し強ばる。その顔を見て、唇が触れるか触れないかのキスになってしまった(笑)
カッコ悪かったので、早々部屋を後にした。
何処が良いだろう。もう8時近い、近くの居酒屋が無難だろうか。
煙草を吸わない洋は、待ち時間の潰し方がよくわからない。本でも読めば良いのだろうが、あまり読書家ではない。佐藤さんは本の虫というイメージがある。自分には無い趣味も、魅力的に感じる。佐藤さんは洋のことをどう思っているのだろうか。昨日までは単なる同僚だっただろうが、夢に出てきた相手を気にしないはずはないはず。
ごちゃごちゃと考えていると、早足で佐藤さんが現れた。
丁寧にポチ袋に入った千円を返してもらい、すぐに帰るそぶりをしたので思いきって居酒屋に誘ってみた。
佐藤さんが少し迷惑そうな顔をしているのがわかった。少しがっかりしながら、
「ぼくの家ここから遠いので、佐藤さんが羨ましいですよ~駅が近いのも便利で良いですね♪」
鞄に手を掛け、帰る準備を始めた。仕方ない、また次に機会があれば頑張ろう。そう思っていると、
「ピザでも取って家で食べていきますか?」
と、耳を疑うような事を佐藤さんが言った。
はっきり言って興奮した。そして自分でもびっくりするようなでかい声を出してしまった。
佐藤さんはその場でピザを注文すると、一旦家に帰っていった。散らかっていると言っていたっけ。佐藤さんの部屋に入れるならいくらでも待つつもりだった。
コーヒーはすっかり冷えてしまった。洋は猫舌まではいかないが、熱い物があまり得意ではない。冷めるのを待っている間に気がついたら冷えすぎていることが結構ある。冷たいコーヒーを見つめていると、喫茶店のマスターが何も言わずに新しい、そんなに熱くないコーヒーと取り替えてくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、
「響ちゃんと仲良くしてやって♪」
と返された。
「佐藤さん、よくこの喫茶店来るんですか?」
「学生時代バイトしてくれてたから」
そういえば、佐藤さんは勤めている大学の卒業生だったはずだ。マスターと色々話していると、佐藤さんから電話があり、喫茶店を後にした。
喫茶店を出ようとするとマスターが、
「女の子の部屋に行くんだから花でも持っていきな」
と言って、小さな花束を渡された。花束を受け取った瞬間、思った以上に緊張しているのがわかった。
ドキドキしながら階段を上り、部屋の前まで来た。チャイムを鳴らす手が震えた。女性が、しかも佐藤さんのように真面目そうな女性が、異性を部屋に入れるということは、やはり脈ありということなんだろうか。まさか、正夢になるのだろうか。また一段と緊張感が増す。
佐藤さんがドアを開けてくれた。マスターに貰った花束を渡すと、洋の大好きな笑顔が見れた。気持ちが舞い上がる。
二人でピザを待つ間、喫茶店の話や、このマンションに学生時代から住んでいること等色々な話が聞けて、洋は嬉しかった。コーヒーも美味しかった。喫茶店のコーヒーと似た味だった。ピザが届きビールを飲みながらピザを食べると、あっという間に10時近くになっていた。この状況で帰るのは名残惜し過ぎる。ビールを飲んだせいか、洋は少し大胆な気持ちになっていた。
佐藤さんが、時間を気にしてくれた。そして、
「また来てくださいね♪」
なんて言われて、洋はとてもとても嬉しかった。佐藤さんが笑う。洋の大好きな笑顔を見ていると、佐藤さんと目が合う。ゆっくり近付いた。佐藤さんの顔が少し強ばる。その顔を見て、唇が触れるか触れないかのキスになってしまった(笑)
カッコ悪かったので、早々部屋を後にした。
夜~響~
暗い部屋に帰り、灯りを付けると、家着や布団がグチャグチャのままで響は、そういえば寝坊したんだったと思った。
大塚を待たせているのだ、急がなければ。響は部屋を見渡して、財布を探し始めた。何処に置いたのか全く記憶が無いので片っ端から探さなければならない。響はグチャグチャの布団の中から財布を見つけ出すのに、15分ほど掛かってしまった。
まぁ許容範囲だろうと思い、大塚の待つ喫茶店へ急いだ。
大塚は喫茶店のカウンター席に座り、コーヒーをすすっていた。
「お待たせして申し訳ないです
」
響が声を掛けると、大塚は
「いやいや大丈夫ですよ(笑)」
と満面の笑みで答えた。響は、その笑顔に気が引けたが気を取り直して、ポチ袋に入れた千円を渡した。
「今朝は助かりました。ありがとうございました♪」
できるだけ、にこやかに言ったつもりだった。そしてすぐに帰るつもりだった。
大塚は、にこにこしながら
「もし良かったら…そこの居酒屋で一緒に夕食食べませんか?」
面倒だな。また響は思った。仕事が終わってやっと一人の時間が取れるというのに。お酒もあまり得意ではない。
そんな響の様子を見て、大塚は明らかにがっかりしていた。何気ない世間話をして、帰ろうとし始めた大塚を見て、響は普段なら絶対に言わない事を言ってしまった。
「散らかってますけど…もう8時ですし、ピザでも食べていきますか?」
言ってから、何を言っているのだろうと自分で思いながら、響は笑った。
大塚はどぎまぎしながら
「是非!!」
なかなか大きい声だった。喫茶店には他に客は居なかったが、マスターが笑っているのがわかり、響は恥ずかしかった。
家にはまともな食材がないし、近くのスーパーに行ってそれから作っていたら9時を過ぎてしまう。ピザを取るしかないだろう。出来れば割り勘にしてもらいたいな、と響は思っていた。
そうだ、部屋が本当に散らかっているのだった。急いで片付けても15分は掛かるだろう。響はすぐに携帯でピザを注文した。そして喫茶店でもう少し待っていて欲しいと大塚に伝えて家に帰った。
散らかった部屋に帰ると、クローゼットに床に散らばっている物たちを詰め込み、ベットを綺麗に整え、掃除機をかけて芳香消臭剤を部屋中に振りかけた。
携帯で大塚に301号室まで来てくれと伝え、コーヒーを入れ始めた。
どんな顔をして大塚はやって来るのだろう。響は少しわくわくしていた。
チャイムが鳴り、大塚がやって来た。手には小さな花束が握られていた。緊張しているのがわかり、響は笑ってしまった。
「き…喫茶店のマスターが花でも持っていけと言って、これ貰ってしまったので、どうぞ!」
玄関先で大きい声だった。響は、
「ありがとうございます(笑)」
と言って、受け取り、部屋に招き入れた。
大塚は本当に緊張している。こんな風に異性を部屋に入れるのは何時振りだろうか。
ピザを待つ間、二人でコーヒーを飲んだ。響が喋らなければ大塚も喋らない。意外に居心地が良かった。やはり外で居酒屋に行くより、この方がずっと良い。
ピザが届き、世間話をしながら、二人でビールを開けた。ピザと一緒に注文していたのだ。空きっ腹にビールを飲むと、胃が熱くなり、空腹を強く感じた。
ピザとビールで美味しく夕食を楽しんだら、もう10時近かった。そういえば、大塚の家は遠いと言っていたっけ。
「大塚先生…時間大丈夫ですか?」
大塚は
「もうそろそろ帰ります」
少し寂しそうに言った。
響はそんな大塚を可愛く感じた。
「…また今度来てくださいね♪」
響がそう言うと、大塚の顔が輝いた。響は笑ってしまった。
急に静になったと思うと、大塚がのっそり近付いて、響にキスをした。正確に言うと、触れるか触れないかという微妙なキスだったが、久々にドキドキしてしまった。
大塚もばつが悪そうに苦笑いをしていた。駅まで送ると言う響を夜も遅いのでと断り、大塚は帰っていった。
大塚を待たせているのだ、急がなければ。響は部屋を見渡して、財布を探し始めた。何処に置いたのか全く記憶が無いので片っ端から探さなければならない。響はグチャグチャの布団の中から財布を見つけ出すのに、15分ほど掛かってしまった。
まぁ許容範囲だろうと思い、大塚の待つ喫茶店へ急いだ。
大塚は喫茶店のカウンター席に座り、コーヒーをすすっていた。
「お待たせして申し訳ないです
」響が声を掛けると、大塚は
「いやいや大丈夫ですよ(笑)」
と満面の笑みで答えた。響は、その笑顔に気が引けたが気を取り直して、ポチ袋に入れた千円を渡した。
「今朝は助かりました。ありがとうございました♪」
できるだけ、にこやかに言ったつもりだった。そしてすぐに帰るつもりだった。
大塚は、にこにこしながら
「もし良かったら…そこの居酒屋で一緒に夕食食べませんか?」
面倒だな。また響は思った。仕事が終わってやっと一人の時間が取れるというのに。お酒もあまり得意ではない。
そんな響の様子を見て、大塚は明らかにがっかりしていた。何気ない世間話をして、帰ろうとし始めた大塚を見て、響は普段なら絶対に言わない事を言ってしまった。
「散らかってますけど…もう8時ですし、ピザでも食べていきますか?」
言ってから、何を言っているのだろうと自分で思いながら、響は笑った。
大塚はどぎまぎしながら
「是非!!」
なかなか大きい声だった。喫茶店には他に客は居なかったが、マスターが笑っているのがわかり、響は恥ずかしかった。
家にはまともな食材がないし、近くのスーパーに行ってそれから作っていたら9時を過ぎてしまう。ピザを取るしかないだろう。出来れば割り勘にしてもらいたいな、と響は思っていた。
そうだ、部屋が本当に散らかっているのだった。急いで片付けても15分は掛かるだろう。響はすぐに携帯でピザを注文した。そして喫茶店でもう少し待っていて欲しいと大塚に伝えて家に帰った。
散らかった部屋に帰ると、クローゼットに床に散らばっている物たちを詰め込み、ベットを綺麗に整え、掃除機をかけて芳香消臭剤を部屋中に振りかけた。
携帯で大塚に301号室まで来てくれと伝え、コーヒーを入れ始めた。
どんな顔をして大塚はやって来るのだろう。響は少しわくわくしていた。
チャイムが鳴り、大塚がやって来た。手には小さな花束が握られていた。緊張しているのがわかり、響は笑ってしまった。
「き…喫茶店のマスターが花でも持っていけと言って、これ貰ってしまったので、どうぞ!」
玄関先で大きい声だった。響は、
「ありがとうございます(笑)」
と言って、受け取り、部屋に招き入れた。
大塚は本当に緊張している。こんな風に異性を部屋に入れるのは何時振りだろうか。
ピザを待つ間、二人でコーヒーを飲んだ。響が喋らなければ大塚も喋らない。意外に居心地が良かった。やはり外で居酒屋に行くより、この方がずっと良い。
ピザが届き、世間話をしながら、二人でビールを開けた。ピザと一緒に注文していたのだ。空きっ腹にビールを飲むと、胃が熱くなり、空腹を強く感じた。
ピザとビールで美味しく夕食を楽しんだら、もう10時近かった。そういえば、大塚の家は遠いと言っていたっけ。
「大塚先生…時間大丈夫ですか?」
大塚は
「もうそろそろ帰ります」
少し寂しそうに言った。
響はそんな大塚を可愛く感じた。
「…また今度来てくださいね♪」
響がそう言うと、大塚の顔が輝いた。響は笑ってしまった。
急に静になったと思うと、大塚がのっそり近付いて、響にキスをした。正確に言うと、触れるか触れないかという微妙なキスだったが、久々にドキドキしてしまった。
大塚もばつが悪そうに苦笑いをしていた。駅まで送ると言う響を夜も遅いのでと断り、大塚は帰っていった。
昼
まさか、佐藤さんとあんなに話せるとは…。洋は嬉しかった。いつも以上に顔がにやつく。
同じ研究室の講師として、今一つ仲良く成りきれず、必要最低限の会話しかしたことがなかった。今朝は良い夢見たなぁ。
佐藤さんも自分の夢を見たと言っていた。それも嬉しい。
佐藤さんにはデートの夢なんて言ったけど、本当は、まぁ…大人の男女のあれやこれやが生々しくリアルに…思い出すとヤバいことになりそうな…。家に帰ってから思い出そうと洋は思った。
洋が、仕事らしい仕事もない午前中から出勤したのは、佐藤さんに会いたくなったからなのだ。バスの中で佐藤さんを見つけた時は、つい嬉しくて話しかけてしまった。寝坊したと言っていたっけ。まぁ、そのおかげですっぴんの佐藤さんを見れて、ラッキーだった。大学に着いてからも綺麗に化粧した佐藤さんとコンビニに行けたし、やはりラッキーだった。
今日は帰りのバスも一緒だと嬉しい。食事に誘ってみようかと考えていた。
仕事が無いので研究室の掃除や、自分の机の生理整頓などをこなし、やっと昼食の時間になった。佐藤さんと一緒に食べたいが、昼休みは研究室で四回生達と食べることに決まっている。月曜は洋の当番だった。
四回生達は全部で5人、この大学は女子大なので男子は居ない。両手に花状態だが、そんなに良いものでもない。洋が自分で作った弁当を鞄から出すと、生徒達が一斉に注目しているのがわかる。
洋は特に料理ができるわけではない。冷凍食品とプチトマトで何とか形になった弁当である。非常勤講師の給料では毎日外食などとうていできないのである。
四回生達と卒論や進路の話をしながら昼休みが過ぎていった。佐藤さんは今朝コンビニで買ったパンを食べているのだろうか。
午後の授業も終わり、帰る時間になった。外はもうだいぶ暗かった。バス停で佐藤さんを待つべきか、研究室前で待つべきか、洋は決められずにいた。
どうしたものかと考え込んでいると、佐藤さんから声を掛けられた。
「大塚先生、今朝のお金返したいので帰りご一緒しませんか?」
顔がにやけるのが自分でもわかった。今、洋は満面の笑みで佐藤さんを見つめているのだろう、佐藤さんの顔が少しひきつっていた。
バスの中では学生達も居るからか、佐藤さんの口数は少なかった。バスから降りると、佐藤さんの家は駅の目の前にあるから、財布を取りに戻る間下の喫茶店で待ってて欲しいと言われた。
喫茶店はマンションの一階部分にあり、中に入るとコーヒーの良い香りがした。コーヒーを注文して佐藤さん待つことにした。
同じ研究室の講師として、今一つ仲良く成りきれず、必要最低限の会話しかしたことがなかった。今朝は良い夢見たなぁ。
佐藤さんも自分の夢を見たと言っていた。それも嬉しい。
佐藤さんにはデートの夢なんて言ったけど、本当は、まぁ…大人の男女のあれやこれやが生々しくリアルに…思い出すとヤバいことになりそうな…。家に帰ってから思い出そうと洋は思った。
洋が、仕事らしい仕事もない午前中から出勤したのは、佐藤さんに会いたくなったからなのだ。バスの中で佐藤さんを見つけた時は、つい嬉しくて話しかけてしまった。寝坊したと言っていたっけ。まぁ、そのおかげですっぴんの佐藤さんを見れて、ラッキーだった。大学に着いてからも綺麗に化粧した佐藤さんとコンビニに行けたし、やはりラッキーだった。
今日は帰りのバスも一緒だと嬉しい。食事に誘ってみようかと考えていた。
仕事が無いので研究室の掃除や、自分の机の生理整頓などをこなし、やっと昼食の時間になった。佐藤さんと一緒に食べたいが、昼休みは研究室で四回生達と食べることに決まっている。月曜は洋の当番だった。
四回生達は全部で5人、この大学は女子大なので男子は居ない。両手に花状態だが、そんなに良いものでもない。洋が自分で作った弁当を鞄から出すと、生徒達が一斉に注目しているのがわかる。
洋は特に料理ができるわけではない。冷凍食品とプチトマトで何とか形になった弁当である。非常勤講師の給料では毎日外食などとうていできないのである。
四回生達と卒論や進路の話をしながら昼休みが過ぎていった。佐藤さんは今朝コンビニで買ったパンを食べているのだろうか。
午後の授業も終わり、帰る時間になった。外はもうだいぶ暗かった。バス停で佐藤さんを待つべきか、研究室前で待つべきか、洋は決められずにいた。
どうしたものかと考え込んでいると、佐藤さんから声を掛けられた。
「大塚先生、今朝のお金返したいので帰りご一緒しませんか?」
顔がにやけるのが自分でもわかった。今、洋は満面の笑みで佐藤さんを見つめているのだろう、佐藤さんの顔が少しひきつっていた。
バスの中では学生達も居るからか、佐藤さんの口数は少なかった。バスから降りると、佐藤さんの家は駅の目の前にあるから、財布を取りに戻る間下の喫茶店で待ってて欲しいと言われた。
喫茶店はマンションの一階部分にあり、中に入るとコーヒーの良い香りがした。コーヒーを注文して佐藤さん待つことにした。