私、来賓で招待されました。なんで来賓?
それは
私がまだ20代で学童保育の指導員をしていた頃。
4年生の男の子がもった
たった一つのけん玉から
こんなに大きな大会が出来た。
そんな思い出話を少しだけ。
第一章 エジちゃん4年生の春
むかーしむかし
インターネットも携帯電話もない
30年も前の話
たまたま学童保育所にあった
ひとつのけん玉
子ども達はひとめ見たら
「このお皿に乗せるんでしょ」
「この尖った所に刺すんでしょ」
「簡単にきまってらぁ!」
「そんなのよりサッカーやろうぜ
そんなのよりゴム飛びやろうよ」
と誰も興味を持ちませんでした。
私も同僚も
「ただの昔の遊びでしょ?」
と興味はありませんでした。
そんないつもの学童保育所の中で
ひとりのおとなしい男の子が
けん玉に興味をもちました。
男の子の名前はエジちゃん。
コツコツひとつのことをするのは好きだけど
あまり人と話をするのは好きじゃありません。
おもちゃ箱にあった
ひとつのけん玉を見つけて
ひとりで遊んでいました。
失敗してもあきらめないエジちゃんは
1日かけて、3つのお皿には乗りました。
ですがどうしても尖った所に玉が刺さりません。
2日目もけん玉向かうと
「スコン!」
と軽快な音とともに玉に刺さりました。
「やったっ!」
毎日続けていると
連続で2回入る!
連続で3回入る!
と少しずつ上手になっていきます。
1人が遊んでいると
「私もやりたい」となるのが学童保育。
せっかくだから何個かけん玉を買うことにしました。
第二章 日本けん玉協会
数個のけん玉を買うと
中には「けん玉の技表」という
一枚の黄色いカードが入っていました。
エジちゃんと私、そして数人の友達で
「中皿ってどれ?」
「ひこうきってなんだ?」
「灯台ってなに?」
学校の図書室にも、市営図書館にも
けん玉の本は見当たりません。
6年生の男の子が
「ここに電話したらいいんじゃね?」
とカードに書かれた番号に
電話をかけてみました。
・・・
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
子「もしもし、けん玉のひこうきって
なんですか?」
?「ひこうきは右手で玉をもって、剣を回して刺す技ですよ」
子「剣を回す???剣を回すんですか?どう回すんですか?」
?「左手で剣をパッと離して回します」
子「パッと離すんですか?どういうことですか???」
?「えーっとね、こうしてあーして・・・」
子「???????
ありがとうございました。」
・・・ガチャ。
・・・
どうやら、玉をもって尖ったのを刺すらしい。
もっている棒は剣というらしい。
まわす?パッ?どういうこと?
とりあえず言われたようにやってみよう。
見たこともない
完成形もわからない中で
6年生のかけた電話内容だけが頼りです。
ある子は勢いがつきすぎて
棒が自分の顔に当たったり。
またある子はブンブンふりまわして
玉をカーンとぶつけたり。
みんなで試行錯誤と
工夫をしながら
「どうやらこういうやり方が一番近そうだぞ」
みんなが考えた方法で
コツコツ練習をするエジちゃんと仲間達と私。
すると
「サクッ!」
っと爽快な音とともに
「やったっ!」
と跳ね上がるエジちゃん。
1人が成功すると
立て続けにみんな成功するのも学童保育。
あちらこちらから
「サクッ!サクッ!サクッ!」
私も
「サクッ!」
飛行機
けん玉カード
第三章 全日本少年少女けん玉道大会
またある日
今度は大人の私が電話をすることに。
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
私「もしもし、ふりけんがどんな技なのか教えてもらえますか?」
?「ふりけんは右手は剣をもって飛行機の要領で玉を離して、一回転させて剣先に刺す技ですね」
私「えーっと???ちょっとゆっくりお願いします・・・」
・・・
またある日
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
私「もしもし、日本一周ってどんな技でしょうか?」
・・・
そのまたある日
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
私「もしもし、日本一周は出来るようになりました。次の世界一周を教えてください!」
・・・
それからまたの日
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
私「もしもし、灯台ってどんな技でしょうか?」
・・・
その次の日も、その次の日も
毎日、毎日電話をしていました。
そしてとある日
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、こちらけん玉協会です」
私「もしもし、はねけんってどういう技ですか?」
?「大分に全日本けん玉道大会の実行委員の方がいらっしゃるのでそちらの方をご紹介しますね。」
※当時を振り返ってみると
たぶん電話の相手は
「日本けん玉協会の会長の奥さん」
だったとおもいます。
その節は大変面倒くさい相手をありがとうございました。
・・・
さっそく全日本けん玉道の方に
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ
?「もしもし、亀田です」
亀田さんに今までの経緯を全部話して
はねけんの技を聞こうと思ったら
亀「来週、そっちにいきますよ。
いやいや、旅行みたいなもんだから
お礼もなんもいらんですよ」
九重山麓 風の丘オーナー 亀田さん
※こんな怖い顔しか写真もってなかった。すごくやさしいおじさんです。
第四章 けん玉の名人
エジちゃん5年生の夏の朝。
北小クラブに亀田さんが来てくれました。
電話をしてから一週間後。
ほんとにありがとう。
亀「じゃあ、さっそく、はねけんだね」
スッ
フワッ
スチャ
スッ
フワッ
カチャ
亀「これがはねけん」
子・私「わぁああああああああ!!!」
私たちがしている「けん玉」とは
何もかもが違いました。
けん玉の音も
玉の動きも
剣の持ち方も
なにより、
その立ち姿がとてもキレイでした。
そのあとも
一回転飛行機
さか落とし
灯台とんぼ返り
私たちのもっている同じけん玉なのに
目の前では魔法のような
信じられない技の数々を見せてくれました。
すっかり私たちは
目の前のおじさんに夢中になりました。
子ども達からの質問と
手ほどきを受けているうちに
すっかり夕方になりました。
亀「今度、けん玉大会が大分であるからエジちゃん参加しなよ」
エ・私「参加します!!」
第五章 文部科学大臣杯
そうだ!
カンパしてもらおう!
【長崎県学童保育連絡協議会総会】に
(およそ600人くらい)
エジちゃんをつれて参加させてもらい
「大分のけん玉大会に参加するのでカンパをおねがいします!」
ものすごく怒られました。
私と同僚の車に
エジちゃんとエジちゃん応援団4人
を乗せて大分に。
(当時は色々と緩い時代でした)
気合満点の
エジちゃんは出発当日に盲腸で入院・・・ナント・・・
と、、、とりあえず行こう
到着してみると
文部科学大臣杯
全日本少年少女けん玉道
選手権大会
大分県九州予選会
その代表者同士で日本一を決定する
その九州予選でした。
第六章 けん玉の達人
(翌日の試合は全員予選敗退。)
先行が宇宙遊泳一回転飛行機を見せると
朝礼でけん玉の技を披露してるらしい。
毎年、けん玉長崎県大会に来ていただいて
子ども達の前で「達人技」を披露してもらっていました。
第七章 第0回長崎けん玉大会
しかし、長崎県内でけん玉をしているのは
けん玉に詳しい人を見つけて
けん玉の技の練習会を開き
第八章 エジちゃん
長崎県内で
約束していた
文部科学大臣杯
全日本少年少女けん玉道
選手権大会
長崎県九州予選会
予選会では
勝ち進みます。
トーナメントを勝ち抜き
ついに決勝戦。
あと一勝で九州1位!
東京の日本一決定大会に進めます!
聞こえるのは
審判の声とけん玉の音だけ。
会場の人は身動きひとつとりません。
副審判の手をチラっと見ていますが
エジちゃんは
技の静止が甘い
最後に
いま、キミたちの周りにいる子は