1994年 アメリカ作品
監督は、ご存知ジョン・カーペンター
であるが
実は、この作品
ラヴクラフトの小説やクトゥルフ神話を
下敷きにした隠喩や用語が作中とても多く使われており
原題のIn the Mouth of Madnessも
31年の小説(狂気山脈)At the Mountains of Madnessを
捻った物と想像できる
90年代に入りカーペンター監督は
よりSF嗜好に傾いたのかと思わせたが
何の事は無いホラー映画の製作も怠ってはおらず
現在もホラー映画の製作は続いている
そして2005年アメリカで
世界のホラー映画の巨匠13人が集まり作られた
マスターズ・オブ・ホラーという
テレビオムニバス・シリーズで
最高傑作と誉れ高い彼が作った作品は”世界の終わり”
それは
まるで本作の撮りなおしのような錯覚に陥る作品で
”小説”と”映画”の違いはあれど
実に良く似ている内容であるので
本作と両方を見比べるとトテモ面白い
主演はサム・ニール
彼を一躍有名にしたのは
大ヒットしたジュラシック・パークであることは
決して否めないが
オーメン最後の闘争
でダミアン・ソーンの大人役もやっていた
何故 そんな事を書くのか?とお思いだろうが
実は本作で精神科医役をこなしているのは
デビッド・ワーナー
なのである
デビッドはオーメン
で有名な死に方をしたカメラマン
そう首チョンパの男であるからだ
本作でサムとデビッドが対峙するシーンは
役者を代えたダミアンとカメラマンが対峙する事になり
そんな意味でもコアなホラーファンなら嬉しくなるところ
だが
注目は、さり気なく登場している
チャールトン・ヘストン
に尽きる
一体何故、晩年の彼がこの作品に出演したのか
実は面白い裏話があるのだが
今回は止めて
それに纏わるある映画の紹介時に説明する事にする
内容は
保険金詐欺を調査するフリーの男が
失踪したホラー小説の作者を探すが
著者は悪魔に獲り憑かれた人間か悪魔そのものであり
彼の書いたホラー小説を読んだ人間は魔獣と化し
世界は滅んでしまうのか?という物である
だが
見方を変えれば1人の気が狂った男の想像とも言える話で
現実と妄想の線引きが難しい場面も多く
それがまた数々の無意味のように仕掛けられた付箋が
見る者をも悩ませる凝った傑作であるとも言えるだろう
一般的に残念な評価が集中したのは
毎回同じだが
監督の弱点とも言えるヒロインの選択だった・・・
ちなみに
先に述べた
マスターズ・オブ・ホラーの第1期は下記の作品と監督で
私がお勧めする作品は後に記事としてUPする予定であり
★を付けておくが決して作品の評価ではない
1.「ムーンフェイス」 ドン・コスカレリ
2.「魔女の棲む館」 スチュアート・ゴードン
3.「ダンス・オブ・ザ・デッド」 トビー・フーパー
4.★「愛しのジェニファー」 ダリオ・アルジェント
5.「チョコレート」 ミック・ギャリス
6.「ゾンビの帰郷」 ジョー・ダンテ
7.「ディア・ウーマン」 ジョン・ランディス
8.★「世界の終り」 ジョン・カーペンター
9.「閉ざされた場所」 ウィリアム・マローン
10.★「虫女」 ラッキー・マッキー
11.「ハンティング」 ラリー・コーエン
12.「ヘッケルの死霊」 ジョン・マクノートン
13.★「インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~」 三池崇史
夕暮れの郊外地
1台の救急車が精神病院へ到達すると
拘束衣を着せられた精神異常者ジョン・トレントが運ばれ
病院長サバスティンの指示で9号棟へ入れられるが
彼は暴れて看護師に怪我を負わせただけではなく
自分は正常だと喚いていた・・・
後日
雷鳴が響く夜、Drウレンが病棟を訪問し
部屋や体中に十字架をクレヨンで書き
病院から出たくないと言い出したジョンと面談した
何故?此処に入院したのか、ジョンは自分の体験した
恐ろしい話をDrウレンに語り出した・・・
フリーの保険調査員ジョンは保険金詐欺を見抜くのに長け
その腕前を高く評価している保険会社の社長は
ジョンにある出版会社で起こっている怪事件
人気のホラー作家サター・ケイン失踪事件の調査を依頼し
カフェで話をしていると
突然!血の涙を流す男が斧で通りのガラスを破って乱入し
驚いて倒れたジョンに
”サター・ケインを読むか?”と訊ねると
斧を振りかぶってジョンを殺害しようとした
だが
次の瞬間 警備員が男に発砲し全身を撃たれた男は死亡する
”一体なんなんだ?・・・
TVニュース・・・
サター・ケインは単なる流行ホラー作家か?
恐ろしい狂気の預言者か?と
彼の新刊が発刊されなかった為予約していた読者が
各地の書店で暴動を起こしている様子が流れた
自宅でニュースを見たジョンは翌日
アーケイン社のハーグロウのもとを訪れ
サター・ケインの失踪の状況について尋ね
彼が2ヶ月前から姿を消し現在は生死も分からぬ状態である事と
驚く事に昨日ジョンを襲って射殺された男は
サター・ケインの代理人であり
彼は郵送で新刊の原稿を受け取っていたことを聞く
”あの斧の男か・・・”
ケインの担当編集者であるリンダ・スタイルズに
”実に旨い宣伝になる”と
ジョークを飛ばし余裕を見せたジョンだったが
彼女はケインはドル箱スター作家であり
早く生死をハッキリして欲しいと率直に訴えた
帰り道
ジョンは路地裏で少年を警棒で打ち続ける警官を目撃し
唖然としていると振り向いた警官は
”お前もやるか?”と不気味に笑うが
家に戻ってもTVでは市民達の暴動のニュースしかやっておらず
うんざりしながらケインの失踪は計画的で騒ぎを起こし
より本の価値観を高める作だと考えていた
翌日、今まで出版されたケインの本を買いに
書店に来たジョンは見知らぬ青年に声を掛けられた
”僕は見える 彼は貴方に会う”・・・
夜
家でケインの本を読んでいたジョンは恋人からの電話に
”くだらんホラー怪獣小説だが、何故か惹き込まれる”と
感想を言い何時の間にか寝入ってしまうと
警官が魔獣となって少年を叩く悪夢を見て飛び起き
今度は斧の男が血の涙を流す悪夢に襲われる
”彼はお前と会う・・・”
何度も悪夢を見るジョンは疲れ果ててしまうが
本の表紙を眺めて奇妙な線に気がついた・・・
彼は全ての小説の表紙にデザインされた線をハサミで切り
それをパズルのように組み合わせ地形を作る・・・
”なるほど・・・”
朝
再びアーケイン社のハーグロウの元を尋ねたジョンは
出来上がったパズルを本物の地図に重ね合わせた
”ケインは此処にいる”
地図にピッタリ一致したパズル
小説に出てくるケインの町ホブズ・エンドは
ニューハンプシャーの辺りを指していたのだ
だが実際にホブズ・エンド等と言う町は存在しないはず
しかしジョンはケインが残したヒントであると考え
彼は、その町に隠れて待っていると判断し
ハーグロウの提言でリンダを伴い
車でニューハンプシャーに向かった
だが
いくら探しても当然地図に地名の無いホブの町は見つからず
やがて日も暮れ夜になってしまうと運転を交代したリンダは
トランプをスポークに挟んだ自転車で闇夜を走る少年を見る
そして
暫くすると同じ自転車で同じ服装の老人とすれ違い
驚きながらも地図を確認し前をむいた瞬間
何故か先ほどの老人が正面に現れ撥ね飛ばしてしまった
慌てたリンダとジョンは車を止め老人の救出に向かうが
老人は全く無傷で立ち上がり
”逃げられない”と言って去ってしまう・・・
あっけに取られた2人だったが取りあえず次の町まで
車を走らせる事にした
すると
今度は何時の間にか車は空中を走り板のトンネルを抜け
突然朝になると小説の町ホブズ・エンドに到着する
驚いて口も聞けないリンダだったが助手席で寝ていたジョンは
町を発見した事に喜び運転を代わって小説にあるホテル
ピックマン・ホテルに到着した
早速ホテルに部屋を取った2人だったが
対応した老女はケインの事も小説の事も知らないと言い
壁に飾ってある絵のカップルは微妙に角度を変えていた
ホテルの窓から見える風景はケインの小説と全く同じ
ジョンは小説にある教会”人類よりも古い巨大な悪魔の巣窟”に
怯えるリンダと向かったが、突然町中から車に乗った
住民たちが銃を発砲しながら現れ
”ケイン!子供達を返せ!”と、口々に騒ぎ
教会へ入ろうとするがドアを開けて現れた子供に代わって
姿を現したケインはうっすらと笑いを浮かべ
ドアが閉まると裏から現れたドーベルマン達が
大人達を襲い出し皆は逃げ帰ってしまった
”今のがケインだな?”
ホテルに戻ったジョンは今起こった事を全て知っていたリンダを
”本を売るための演出だな”と責めるが
彼女は全て途中まで渡されていた新本に書いてある通りだと説明
これまで全て本が現実になっていると恐怖する
新本の内容は、あの死んだ代理人とリンダしか読んでいないのだ
しかもその内容とは、この世の終焉までのストーリーで
それはこのホブの町から始まりやがて悪魔が世界を支配し
人間は全て魔物に姿を変えてしまうものだという・・・
”そんな馬鹿な話があるか!”
全く信用しないジョンはケインの生存を確認した事で
仕事は終わったと判断し1人で帰ろうとするが
リンダが先に車で逃走
仕方なく町の酒場で酒を飲み手帳に書き込みをする
”酷く手の込んだ芝居で町ごと小説の内容を演じている”
だが
実際にホテルの老女は夫を全裸にし手を施錠し
子供達は魔物に変化し始めていた
その頃
教会にやって来たリンダはケインと対峙
彼は最後のタイプを打ち終わりリンダに言った
”おかしいだろ 私は自分で書いていると思っていた”
”だが 書かされていた”
”この忌まわしい奴等がこの世に戻ろうとしている”
”全て現実だ これは新しい聖書なのだ”
そう言って立ち上がったケインはリンダの頭を押さえ
出来上がった原稿に顔を向けさせると
リンダは一瞬で中身を読んでしまい目から血が流れた
既にケインの背中からは魔物が這い出していたのだ・・・
部屋で休んでいたジョンは突然飛び込んできたリンダに驚く
”助けて 私は頭がおかしくなる おかしくなる!”
ジョンはリンダを寝かせ急いでロビーに降りて
電話を借りようとしたが通じず壁の絵も魔物に変っていた
更に奥から叫び声が聞こえ老女を探すと
彼女は既に魔物に変身しており夫を惨殺していた
”なんてことだ!”
ジョンはリンダを連れて逃げようとしたが
既に彼女も異型の触手を出し始めおり
仕方なく見捨てて1人車に乗って走ったが
町の中心では化け者達となった住民達とリンダが集まり
車の進路を塞いでいた・・・
酒場に逃げ込んだジョンは正気を保っていたかに見えた男に
”これは芝居か?!”と聞くが
彼は本に書いてあると言って自殺してしまい
表に出たジョンは笑いながら迫るリンダを殴り車に乗せて
脱出を図ったが彼女は鍵を笑って飲み込んでしまった
怪物のような住民が迫り焦ったジョンはドライバーでキーを廻し
エンジンを掛けて逃走するがリンダは既に異型になり
首と体が逆になって昆虫のようになっていた
堪らずリンダを捨てて逃げたジョンだったが
何度反対に走っても
車は町の中心に戻ってしまう
何度も何度も同じ光景が繰り返され
遂にジョンは住民達に突っ込むが
車は道に止った車にぶつかり大破
次に気がつくと教会の懺悔室に閉じ込められていた
するとケインが牧師の部屋から話しかけてきた
”現実味の無い神は誰も信じてはいない”
”私の本は18ヶ国語に翻訳され億単位で読まれる”
次の瞬間ケインの部屋に居たジョンは
彼に出来上がった原稿を渡された
最終章のタイトルはマウス・オブ・マッドネス・・・
当然拒むジョンだったが
原稿を出版社に届けるのはジョンだと本に書かれていると
不気味に笑うケインは自らの体を破壊し地獄の門を開けた
おぞましい地獄の魔物に追われケインの言った現実の世界の
出口にひた走ったジョンはギリギリで脱出し
遂にホブの町を抜け出した・・・
ジョンは原稿を道端に投げ捨てヒッチハイクでモーテルに
辿り着き一夜を明かし翌朝フロントに行くと
自分宛の小包を受け取り驚愕する
なんと中にはマウス・オブ・マッドネスが入っていたのだ
今度は原稿を燃やしたジョンはハイウェイ・バスに乗り
漸く帰宅し役所でボブの町を調べるがやはり記録は無い
疲れ果てたジョンだったが事件の報告にアーケイン社を訪れ
ハーグロウに一部始終を話すが彼は怪訝な表情で
リンダという女性は最初から存在していないと言い
原稿は既にジョン本人から受け取っており
出版どころかもう映画も公開されると言った・・・
ジョンは混乱しながらも悟る
恐らくケインが書きなおしていたに違いない・・・
町には既にマウス・オブ・マッドネスが溢れ
あちらこちらで暴動や集団ヒステリーが起こっていた
ふらつきながら町を歩くジョンはいつか書店で会った
青年に遭遇し斧で彼を殺害した
”その本を読んだのなら驚くまい”
Drウレンに精神障害で殺人を犯した経緯を話し終えたジョンは
最後に去って行く彼に言った
”人類がいたなんて 遠い昔の語り草になるな”
その夜
病院どころか町中、否
世界中の人類の殆どが魔獣と化した世界
ゆっくりと歩き出したジョンは誰も居ない映画館に入り
エンドレスで上映されているマウス・オブ・マッドネスを見て
大声で笑った・・・
ジョン・トレント:サム・ニール
リンダ・スタイルズ:ジュリー・カーメン
サター・ケイン:ユルゲン・プロホノフ
ジャクソン・ハーグロウ:チャールトン・ヘストン
ウレン博士:デビッド・ワーナー
マウス・オブ・マッドネス
原題:In the Mouth of Madness
監督:ジョン・カーペンター
製作総指揮:マイケル・デ・ルカ
製作:サンディ・キング
脚本:マイケル・デ・ルカ
出演者:サム・ニール
音楽:ジョン・カーペンター
ジム・ラング
撮影:ゲイリー・B・キッビ
編集:エドワード・A・ワーシルカ・Jr
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