インコラプティブル | 正しい人の喰い方マニュアル

インコラプティブル

インコラプティブル
とは日本人には聞きなれない単語であるけれどこれは

不朽の聖人

という意味である。普通人は死ねば朽ち果てるものであるけれど
朽ち果てない人も居る。
ミイラ? とも思うけれどバチカンには人の手が一切加えられていないのにも関わらず
腐敗せずそのままの姿で居る聖人達が登録されている
これらは「奇跡」として認証される

日本人に一番身近な聖人といえば間違いなく
フランシスコ・ザビエル
であろう。
彼は死した後その功績により聖人に列せられた。
東方にキリスト教を広く広めたというのがその理由であるが
聖人に列するに際し反対する人も多かったらしい。
バチカンの判断としては

「死体の右腕を切り落として血が流れれば聖人として列する」

といったものであった
現在彼の墓はインドのゴアに存在する

フランシスコ・ザビエルの墓を開いてみると
生きたままの姿で保存されているのみならず、
腕を切り落とせば血が確かに流れたという
その後ザビエルの右腕は切断してローマのジェズ教会に安置され
さらには内臓を送れという指示が続いてなされ、
遺体の腹は割かれ内臓はすべて摘出されてしまった。
右腕は「聖腕」として残っているが、その他の内臓は四散してしまったようである

ザビエルの遺体は数年毎に公開されており
最近では1994年に公開されたと聞く
次の公開についての情報は未定である

はじめてこの話を聞いた際どうもぴんと来なかった

無理難題を押し付けてきたバチカンに対し
きっと聖人に列したいと思った人間が細工でもしたのだろう。


しかし インコラプティブル という考え方を勉強するとこの事件について
別の理解が生まれてくる。
聖人であれば、生きたままの姿で保存されるのが普通? である
であれば、血が流れてしかるべきであろう。
というごくごく当たり前? のようなバチカンの意図が見て取れるのである

しかし死というのは人それぞれに公平に訪れる
特に戦争があったときなどは終った後その腐臭などは
言語に絶しただろう

肉体は諸悪の根源であり憎むべき物であった
しかし例外として聖霊が宿った遺体は
病人を癒し知恵の言葉を授け、卑しいものや貧しい者を救済する
聖人の遺体には善良なる力が篭るとされた

「神ご自身もそうした聖遺物のある場所で奇跡を行う事によって
 それらを相応に崇めておられるのだ」

これは十三世紀イタリアの大哲学者であり神学者であった聖トマス・アクティスの言葉である
つまり聖人の遺体は神聖な避雷針であり
奇跡を呼び寄せる事ができると信じられていたのである

インコラプティブル
は存在する。そうしてこうした存在があるからこそ
「ミイラ薬」は万能であるという
発想が生まれたのでは無いだろうか

無論いくつかは人の手に加工されたインコラプティブルであるが
これは悪い意味で隠していたのではなく
公然と防腐処理が依頼されていた事を数百年の月日が経った事により
忘れ去られた事も一つの原因であるらしい

あまり知られていない話であるけれども
新約聖書には聖墳墓に集まった人々が
天然の防腐剤をキリストにどう塗ったかが語られている

「キリスト教の長であるキリストが塗油され、防腐処理されたのなら
 重要な人や神聖な人も塗油して防腐処理をすべき」

と考えたとしても不思議は無い。

では完全無欠のインコラプティブルはどうして生まれたのだろうか

聖ツイータ
グッビオの聖ウバルド
サヴォイアの福者マルゲリータ
聖サヴィーナ・ペトリッリ

がそれらにあたる。
これらの聖人は列せられる前に教会の地下の特殊なドーム型の墓所に葬られて居るのである
敬虔なキリスト教徒は死者を墓ではなく教会の地下にドーム型墓所を建て
実質的には霊廟も兼ねる礼拝場を作ったのである
このような墓所では司教は祭壇に一番近い所に
司祭と修道士はそこから少し離れた場所に葬られた

教会内にあるドーム型墓所は神聖な場所であるだけでなく
内部がアルカリ性の医師で覆われたりしていた為
ミイラ化を促進する環境であったのである
実際聖人になる見込みのある人はこうした墓所に葬られる事が多かったという
また教会関係者がどの遺体がその聖人の物であるか分からなくなった場合は
一番保存状態の良いものが選ばれる事が多かったという

ミイラはなぜ魅力的か
ヘザー・プリングル
ISBN4152084197
インコラプティブル
*聖人の写真を見る事ができます
http://photo-collage.jp/gensougarou/mag/past/56.html

聖人(英語)
*The Incorruptibles の欄がそうです。
*時間があれば訳してみたいと思います
http://www.theworkofgod.org/Saints/




著者: ヘザー プリングル, Heather Pringle, 鈴木 主税, 東郷 えりか
タイトル: ミイラはなぜ魅力的か―最前線の研究者たちが明かす人間の本質