自分よりもいい生活をしていると思われる対象者に、人らその努力を認めない。

運がいいから、親が金持ちだから、育った環境が良かったから、果ては親が外国人だから、と何でもアリだ。


だが実際の事など誰も分からない。

どれだけ人が努力したかを本人以外が知る機会はほとんどないからだ。

私は、恵まれた環境では育ってはいなかった。

父親は安定した職についていたが、女癖が悪く何度か女性を妊娠させたりしていた。実際私の兄弟が何人いるのかはっきりしない。

母は気が強い女性だ。親の年齢にしては珍しく名前を聞けば誰でも知っている大学を卒業していた。なので仕事はあったのだが、余裕のある生活はできていなかった。私が小学校中学年の頃に親は離婚したが父親は養育費を一度も送らずにいた。それを母はその気の強さから男がいないと生活できないと思われるのが嫌で請求すらしなかった。その影響で私たち子どもが苦労する事などどうでもよかったのだろう。


中学に上がるまでの私のお小遣いも友達の半分以下だった。姉は同級生のお財布からお金を盗んでいた。それを友達の親に咎められ実家に電話がかかってきたこともある。姉は、私のものもよく盗んでいた。中学に上がってから私達のお小遣いは1300円になったが、それで文房具や上靴まで賄わなければならず、金銭的に苦労した。

高校になってからはバイトを始め、半分を家に納めなければならなかった。そんな中、母は友達と海外旅行に行き始めた。金銭的に余裕がないと思っていたのだが、母は自分のためにならお金をたくさん使える思考回路の人間であった。


高校受験の際も、勿論公立のみが条件とされた。

大学は、最初から行かせてはもらえないとわかっていた。こっそりと大学を受け合格したが、母親には言えなかった。その晩はしゃくりあげるほど泣き、ベッドの中で悲しすぎて死ねたらいいのにとも思った。その時は、私が世界で一番不幸なんじゃないかとも思っていた。それ程私は自分の中で進学断念という事は悔しかったのだ。


進学もできないとわかった私は、高校を出る前に当時の年上の彼氏の家に転がり込んだ。適当な仕事をし、その彼氏とも別れ一人暮らしをした。水商売で貯金を貯めた。同級生が何の苦労もなく海外留学するのを羨ましいと心から思っていた。私は自分の貯金で数ヶ月の留学をし、その当時に元夫と出会った。


そして結婚出産離婚をし、今に至るのだがそれも全て、日本にいる知人に言わせれば私は運だけでここまできたらしい。この国の言葉を喋れるのも、英語が話せるのも、現地の会社に就職できたのも全て運だと言い切られた。


私は、自分がどれだけ頑張ってきたかを人に認めてもらおうとは思っていない。自分でわかっているから。だが、運だ運だと言われ続けると、心底腹が立つ。