あるアーティストさんのこと。

そのアーティストさんの歌声、聴けば聴くほど、どんどん大好きになる。
こんなに歌の上手いアーティストって、見たことも聞いたこともない。
ほんの1回聴いただけで、気になる存在にしてしまうだけの歌声。
そのアーティストさんのファンになって、あっという間に3年半が過ぎた。

最近はかわいく美しくなったが、3年半前は歌だけに魅了されていた。
こんなこと、そのアーティストさんに知られたら、もう聴きに来てほしくないと言われるかもしれない。(笑)
でも、あの頃は、そのアーティストさんの生の歌声が聴きたくて、あちこちに行った。

アクシデントがあった。
全くステキじゃなくなってしまった時があった。
辛かった。
聴きたい歌声じゃない。
僕の方が上手いかもしれない。
僕にとって、世界一のアーティストだったのが、いつしか最も聴きたくないアーティストになってしまった。
これ以上歌わないで!
何度思ったか分からない。
ライブのたびに、言おうかどうしようか、迷った。
僕にとっては、世界一のアーティストのままでいてほしい。
だから、もう歌わないで。
感情がぐちゃぐちゃになって、ついに聴きに行けなくなってしまった。
ボロボロになった姿なんか、見たくない、聴きたくない。
毎日本当に悲しかった。
僕の喉と交換してよくなるなら、交換したい。
でも、そんなことしても、意味はない。

そんな中、ラジオに生出演することが決まった。
もちろん、行くつもりはない。
でも、かすかに期待した。
あの歌声は冗談だったのだと。
その日は、上り調子のアーティストのライブがあり、聴きに行った。
ライブがスタートした。
上手い。
とても心地よい。
あ、ラジオの放送時刻だ。
ちょっとだけ聴いてみよう。
ラジオをセットした。
すると、そのアーティストの歌声が聴こえてきた。
涙が止まらなかった。
決して以前の歌声じゃない。
でも、必死になってがんばっているのが、歌声から分かった。
目の前のアーティストの歌声は、全く耳に入って来なくなった。
ラジオの向こうにいるアーティストの歌声とギター伴奏、聴こえるのはそれだけ。
世界のどんな音楽も、今聴こえてきている音楽に勝るものはなかった。
心の中で叫び続けた、「ありがとう」と。

その日を境にして、また応援に行くようになった。
ステージ上で苦しそうにしている姿、目に焼き付けた。
必死にがんばっている姿だから。
それでも、ステージ上では笑顔だった。
心の中は、あの苦しそうな表情そのものかもしれない。
それでも、今日も歌い続けている。
本人が一番自分の体調が分かる。
いい音が出せない、以前はなんの苦もなく出せたのに。
一番辛く苦しく悔しく感じているのは本人のはず。

今も以前の歌声じゃない。
でも、僕にとっては世界一のアーティストだ。
歌い方も工夫しているし、歌いづらくなっている個所を克服しようともしている。
最近は、自然にこぼれる微笑みがとてもステキだ。
とってもすがすがしい。
誰が何と言おうが、僕にとっては世界一。
それもダントツの。
ステキなアーティストさんはたくさんいる。
だから、今日もあるアーティストさんのライブに行くつもり。
でも、そういうアーティストさん達の存在を知ったもとは、そのアーティストさんがいてくれたから。

この歳になって、僕の人生に素晴らしい色をつけてくれたのは、そのアーティストさん。
人生は一度きり。
もし、そのアーティストさんに出逢ってなかったら、人生はもっと単調だっただろうと思う。
人生を謳歌する、まさにそんな感じだ。
心の底から感謝してるし、尊敬している。

そのアーティストさんが、心の底からの笑顔で歌えるように、これからも応援したい。
何をすれば、一番喜んでもらえるのか、常に試行錯誤だが、一番大切なのは、そのアーティストさんの歌に心の底から酔いしれることじゃないかなと思っている。
だから、CDもよく聴くが、ライブもずっと聴き続けたい。
いつまで、こういう活動ができるか分からないが、できる限り続けていきたい。
世界一大好きなアーティストさん、本当にありがとう。