あの練習を見て「いけ!」と選択する鬼畜な自分 | ほりきりのブログ

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鉄道の旅とスポーツが好きです

 NNNドキュメントの「職業羽生結弦の矜持」について、昨日は見てすぐ掻き立てられるように一気に書いた。
 あとからもう少しかみ砕こうと思ったのだけど、あのすさまじい練習風景ばかりが思い起こされて、羽生さんの語る言葉が出てこない。
 なんてこった。あの聡明な言葉たちよりも、練習だ。羽生さんの言葉は確かにスケートが一番強力だったのだ。


 ではあの練習を見て。
 
 私たちが東京ドームやたまアリで見た奇跡の作り方を、惜しげもなく見せてもらった気がする。
 ああ奇跡って、こうやってつくられるんだ…

 前半での高難度ジャンプ連発の瞬発力の強化練習。
 これによって鍛えられた、体力、瞬発力、持久力が、怖ろしい2時間ワンマンにつながる。
 そして、後半でのワンマンショーを想定した曲かけと靴脱ぎの通し練習。


 選手の練習を垣間見ることなどほぼない。
 メディアへの公開練習があった場合と、試合のときの公式練習くらいだ。
 その中でこんな超ハードな練習なんて、当然見たことがない。

 これはひとりでリンクを使っている貸し切りということもある。
 でなければあんなにジャンプ連発できないし、曲かけ放題にはならない。
 
 もう長年も続いている深夜の貸し切り練習。
 昼夜逆転が人間の体にいいわけがないことは私も実感している。貸し切りにはお金がかかる。
 それでも、一見不公平なこの練習環境でも、羽生さんは自分に良いように転換できていると思うよ。
 (昼間お仕事して夜練習できる環境は、体にはきつくても願ったりかなったりじゃないか?夜勤状態で昼の時間をフル活用していた私が言う)

 アイスリンク仙台は、羽生さんに欠くことのできない絶対的なホーム。それを持つ羽生さんは他のどの選手よりも貸し切り条件が強い。
 (だからこそ絶対に守られなければならない)


 で、そのホームでの、自分の思うがままの練習を見ていて思う。

 あの怖ろしい練習は、ワンマンショーをやりきるためには欠かせないものなのだろう。
 ではなぜそこまでのリスクを冒してワンマンをするのか。

 羽生さんが表現したいものを100%出すためには、ひとりでやる方が今は効率がいいのだろう。
 既存のショーで、ひとつふたつプログラムを披露することもいいのだけれど、それよりもひとりで最初から最後まで演じれば、一貫したひとつの流れでテーマを表現できるから。
 
 そんなことは今まで誰もやらなかった。やろうとした人はいないだろう。
 だって、できるとは思えないもの。


 でも羽生さんがあえてその前代未聞の形式にしたのは、そうやって表現したいものはあるのだろうけど、第一に、
 できる と思ったんだろうと思う。

 そう思えるほど羽生結弦のポテンシャルが桁が3つくらい違うのかなとは思うんだが。
 とにかく、できると思ったんじゃないかな。

 できることを出し惜しみすることは、それは一生懸命じゃない。


 できることを実現するために手段を選ばないことが、あのすさまじい練習なのか。
 できるからって、本当にやってしまう。
 つくづく羽生結弦は怖ろしい。


 でもこれ、コーチがいたらやらせないよね。コーチって選手を強くするために叱咤するだろうけど、これはそういうレベルじゃないから、今度は止めにはいると思うよ。
 クリケットでもたぶんオーサーの役目はストップをかけることだったんじゃないかな?

 もし私が、おそれおおくもそばにいてしかも物申すことのできる立場になれるなら、絶対止めるだろう。
 だってプロ活動は体が資本。(どこかで体と美貌が資本というのを見た。確かに!)
 怪我するかもしれないといいながらやる練習なんて、競技に出るアマチュアだけのものだよ。プロは仕事に穴をあけられない。ショーマストゴーオンだよ。


 その一方で、
 今しかできないことを存分にやれーー!と叫ぶ(たぶん若い頃の)自分がいる。
 若いOLだった頃、毎日遅くまで残業して帰ってきたあとに未明まで漫画を描いてた。寝る時間よりも活動する時間の方が大事だった。トイレに起きてきた母親にばれないように部屋の灯りがもれないように、机の上のスタンドの灯りだけで描いてた。(見つかったらめちゃくちゃ怒られる。今なら母親の気持ちはわかるが)
 そんな無茶を望んでしていた頃の自分なら、きっと、いけーーー!って言う。


 たとえば試合に出る主に学校所属の団体競技のアスリート。そのチームで戦うことは在学中だけ。たった3年か4年の刹那だ。
 長い長い間高校野球等の学生スポーツを見て応援してきた自分が、彼らの輝きの理由をそこに見ていた。
 トップにいるアスリートも若くて体力のあるうちがピークだ。それは夏も冬もオリンピックを見続けて思う。
 
 羽生さんがどんなにスーパーな天才アスリートでアーティストでエンターティナーであるにしても、ワンマンショーを実現できる期間は限られるだろう。
 10年後もワンマンで、なんて望めるわけはないのだ。

 時が、限られるーー
 だから、その限りあるチャンスを最大限にいかすために、その基盤を作るために、あんなすごい練習をしているんだろう。


 人間は限りある命だからこそ一生懸命にがんばるし、そこに幸せや喜びが生まれるーーー

 私が愛してやまない銀河鉄道999のテーマだ。(だからオタクだって…)
 自分が何かしようとするとき、困難にぶち当たるとき、そこを越えなきゃいけないとき、必ずこの言葉に立ち返る。
 人の命は永遠じゃないんだ。
 ためらったら時間は過ぎて失われてゆく。
 何かやりたいなら、それができる環境にあるなら、全力でいけ。命には限りがある。

 羽生さんも、
 限りある人の命、
 もっと短いアスリートの選手生命、
 さらにワンマンが可能な年齢、

 全部かんがみたら、今をフルブーストでやりきることを選ぶのかもしれない。


 選ぶ…選択か。
 またRE_PRAYに戻っていきそうだな。こっちもまだ考えなきゃいけないのに。


 羽生さんの練習風景を見て、私は「いけ!」を選択してしまいそうだ。
 非情で鬼畜なファンですかね。

 羽生さんが見せたいものが100パー、出せるように。
 それができる体をキープし、技術も高めていけるように。
 柱の陰で見守る明子姉さんのように「ゆづる…」と泣きながら応援していきたいね。



 この真摯なまなざしを守りたい。
 あなたの矜持が貫き通せるように、今日も祈っています。




 北海道、いよいよ雪です。
 今朝の庭と、前の道路。


 

 冬。羽生さんの季節、本番です。