王と女王の不在 | ほりきりのブログ

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 メドベージェワ、あなたもか…

 現世界女王メドベージェワが世界選手権を欠場する。男子の羽生、ペアのスイハン、ダンスのテサモエ、そして女子のメドべ。これで昨年のヘルシンキワールドのチャンピオンはすべて欠場ということになった。テサモエの去就はわからないが、羽生とスイハンとメドベは怪我のためだ。オリンピックシーズンのなんと過酷なことよ。
 メドベが欠場することが残念なのではない。無理をしてほしくなかったのでむしろほっとした。彼女までが治らぬ足を抱えて痛みと戦ってオリンピックの舞台に立っていたのかと思うとせつなくなったのだ。

 メドベの怪我は骨である。ひび、というがようは骨折でしょ。これはかなり心配していた。GPファイナルに出れなかった組の中でも羽生やボーヤンの捻挫とは怪我の質が違うだろうと。欧州選手権に出てきたときにもう治ったふうなことを言っていたけど、骨折って2ヶ月で治るのか?といぶかっていた。
 昔ひどい捻挫をしたことがある私の父が、羽生の怪我について何度も言っていた。捻挫は骨よりやっかいだ、なかなか治らないし何度もやると。私がファンだと思ってわざわざネガティブなこと言わんでよろしい、と思っていたがその通り治ってなかったけど。確かに捻挫はクセになるし、むしろ職業病みたい。骨の方があとくされないのは知ってる。でも骨は時間はかかるでしょう。
 メドベの怪我は治せばあとはすっきりだろうけど、その時間が足りないように思って心配していた。

 やっぱり時間足りてなかったようで、治りきってないまま痛み止めも使ってオリンピックに出たらしい。オリンピックが終わってからまた痛みが出てきたって、そりゃそうだ。悪化させたわけじゃない、治ってないだけ。薬の助けと強い気持ちでアドレナリン全開でオリンピックは乗り切った。終わって痛み止めもやめれば痛いにきまってる。
 あなたもか、メドベ。羽生と全く同じじゃないか。彼女にとっても、どんなことをしてもオリンピックに出たかった。何を犠牲にしても金メダルが欲しかったのだ。その決死の戦いの末の銀メダル。せつない…

 メドベはオリンピックの舞台に立つまでにも、ロシアのアスリートを代表して戦ってきた。ドーピング問題でロシアまるごと出られないという危機に現役選手を代表してのスピーチ。18才の少女とはとても思えない立派なものだった。立場が人を作るというのはあるが、2度のタイトルを持つ無敵の女王の貫禄とプライドが”OAR”としてのオリンピック個人参加への道を切り開いたはずだ。参加したロシアの選手たちは感謝してると思う。
 
 3年間トップとして女子フィギュアを牽引してきた。金メダルは絶対と思われていたのに、肝心のオリンピック直前にこんな怪我に見舞われるなんて。そんな体調なのに自分のベストの演技をやりきった。なんて精神力なんだ。ギリギリの自分を気持ちで支えながらすべてを出し切った演技。だから終わった直後にあんなに泣いた。ザギトワの演技は関係ない。勝負にはこだわるけど戦う相手は自分。

 僅差の勝負で敗れても毅然としていた。タラレバのインタビューはもしもはない、と一蹴。ザギトワの金メダルを笑顔で讃えるやさしい先輩。敗れてなお、メドベの株はぐっとあがった。これこそが女王の姿だと。彼女の女王としての存在感はゆるがなかった。まったく互角の勝負だったし。ザギトワは金メダリスト。メドベは女王。こういうことでいいんじゃない?

 世界選手権は男子も女子も、若手がテクニカルで勝負する戦いになるのかな。新しいチャンピオンが生まれることは決定しているし。なんかもう誰が勝ってもいいけど。そのくらい腑抜けてるけど。でも誰が勝っても、王者は羽生、女王はメドベージェワって言われるんだろうな。