肩関節の可動域 | 堀 啓のブログ

肩関節の可動域

先日書いた肩甲骨の続きです。

 

肩関節は非常に可動域が広く、腕をあらゆる方向に動かすことが出来ます。

 

これは、肩甲骨と腕をつなぐ肩関節が球関節と言って、非常に可動域が広く、ほぼ360度動かすことが出来る関節だということ、そして、肩甲骨そのものも動かせる為です。

  

しかし可動域が広く自由に動くぶん、とても脱臼しやすい関節でもあります。

 

前回書いた肩甲平面上に腕があれば肩関節は安定していますが、肩甲平面から外れた場所で外から大きな力が加わると、簡単に脱臼してしまうことがあります。


特に、肩甲骨の後ろに腕を引いたとき、肩の脱臼は起こりやすいようです。


ここで思い出していただきたいのが、肩甲平面は真後ろではなく、少し斜めにハの字に付いている、ということです。  


つまり身体の真横、両肩を結んだ線の延長線上に手を伸ばした場合、これは肩甲平面よりも後ろの、不安定なポジションになります。


例えば、体を思いっ切り回して相手に背中を向けるようにしながら、身体の後ろから巻き込むように打つ左フック。このような打ち方は肩に大きな負担がかかります。

 

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秋田書店  週刊少年チャンピオン 板垣恵介 著  「バキ」より


こんな打ち方は鍛え上げられた強靭な肉体を持つ範馬刃牙だからこそ可能なのであって、一般の方がやると肩に大きな負担がかかり大変危険です。


パンチで言えば、アッパーを打つときも注意が必要です。


アッパーは打つときに手の平の側を上に向けますよね。


解剖学的に肩が一番脱臼しやすいと言われているポジションは、立った状態で手のひらを上に向け、腕を肩甲平面の外側に回していった状態だそうです。


やってみると確かに確かに肩の腱や靭帯に負担がかかっていそうな、イヤーな感覚があります(もし試してみるなら勢いをつけず、ゆっくり腕を背中側に動かしてみてください)。


つまりアッパーを打つときに、威力を出そうとしたり遠くに届かせようとして肩を前に押し出し、身体の真横に向けて打つのは非常に危険だということです。



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講談社 週刊少年マガジン 森川ジョージ 著  「はじめの一歩」より


こんな打ち方は、毎日厳しいトレーニングを積み、自身のダイナマイトパンチの反動にも耐える肩を持った幕之内一歩だから可能なのです。


このように肩甲平面よりも後ろに腕を引くと肩に大きな負担がかかり危険も大きいですが、漫画じゃなくても、プロボクサーなどをみるとそのような打ち方をする選手も少なくありません。


実は、そのような打ち方をするとより大きな力を出すことも可能だからです。


次回はそのあたりのメカニズムについて解説していきます。