アンジュール~ある犬の物語~
作・絵 ガブリエル・バンサン
物語は一匹の犬が車から投げ捨てられる場面から始まります
この絵本は全編にわたって
白黒のデッサン画で描かれていて字は一切ありません
鉛筆だけで描かれている世界は
寂しさ、虚しさ、悲しみ、嘆きの感情が剥き出しです
それどころか温かったり冷たかったりの温度さえ
この手に取るように伝わってくるから
まるで物語が目の前で起こっているような不思議な感覚に陥ってしまいます
色や言葉が存在しないからこそ読者の想像を掻き立てる
そして、伝わるものがあるんだと思いました
この作品は技術上の表現力だけではなく
むしろ作者の内面を一切飾ることなく
映しだしたサイレントフィルムだと私は感じました
一見、大人向けの絵本と思われがちですが
そんなことはないです
子供でも大人でも響く何かがあると思うし
訴えてくる何かがこの本にはあります
考えさせられる作品です