ナポレオンの村は、廃村に追い込まれた寂れた限界集落を、ある公務員が再生させていく物語です。
そして私が住んでいる「マンションA」と言うマンションも老朽化し、このままでは寂れて行くのを待つしかない限界マンションです。
この「ナポレオンの村」シリーズでは、そんな自分達の住環境を再生していく過程をブログに書いています。
★これまでのあらすじ
私が住んでいる「マンションA」と言うマンションは老朽化しており、耐震強度が弱いため、補強工事が必要であると診断されました。
工事をするにあたって、調査したところ、
マンションの1階、地下2階、地下3階には商店街やアスレチックジム、バレエ教室、空手道場などの店舗になっている複合型マンションなのですが、お店にしてはいけない通路に勝手にお店を増設していたりする違反建築が見つかり、まずそれを直さないと、国や都から出る工事の補助金が認可されないことがわかりました。
マンション全体の床面積の半分を占めるそうした店舗の所有者であるマンション管理会社に、是正工事を行うだけの資金を出してもらわないと、補強工事計画は進められない状態になったため、その資金を出すように要請しましたが、一向に違反建築を直そうとはしません。
そのため、是正工事を行わない場合、裁判に訴える計画を立てることになりました。
また、そのマンション管理会社が、マンション全体(住居部分)の管理もしているため、管理会社を新しい会社に変更したと言うところまで書きました。
★その後の店舗所有者の対応
店舗所有者でもあったその管理会社は、話し合いに応じるどころか、理事会の会議にさえ出席しなくなり、いよいよ裁判になる見通しが濃厚になってなって来ました。
しかし裁判となると時間もかかります。
いずれにせよ耐震補強工事のために出る補助金の補助してくれる期限が終わってしまい、補強工事も成されなくなってしまいます。
★公的施設との共同建て替えのアイデア
そんな折、マンションのある小金井市の福祉会館がやはり老朽化のため、移転する計画が持ち上がりました。
現在、民間のビルを借りて福祉会館にしていたのですが、新しく立て替えるにあたり、うちのマンションの東隣にある駐車場になっている市の土地を使う計画だそうです。
ところが、その土地は、あまり広いものではなく、そこに福祉会館を立てても狭い面積に4階建てとなり、あまり機能的な施設が出来るには不十分と思われたのです。
そこで、私たち理事会では、市の福祉会館と、マンションを合同で土地を提供し合って建て替えたら、市にもマンション住人にもメリットがあるのではないだろうかと考えました。
再開発事業に詳しい建築士のご協力を得て、公民共同開発事業計画を立てることにしました。
★市政の事情
★市政の事情
K市は東京都の中でも特に財政難で困っている自治体です。
市内に企業や産業、お店が少なく、マンションなども比較的少ないため税収が無いのです。
加えてその財政難にも関わらず、少ない税収でやりくりする計画も立てられていないのです。
某市と言うと何かと「市内にゴミ処理施設が無いための、ゴミ問題」が有名です。
また、市役所の第二庁舎も、高いレンタル料を払って民間のオフィスビルを使用しており、税金の無駄使いではないかと市民からも批判的な声が上がっています。
それに加え、新市庁舎を建て替える土地を購入しておきながら、その民間のビルまで数億かけて買い上げる方針を市長が提案し、市長とそのビルの所有者や地主と何か癒着でもあるのではないかと、いぶかしく思う市民もいるようです。
それに加え、新市庁舎を建て替える土地を購入しておきながら、その民間のビルまで数億かけて買い上げる方針を市長が提案し、市長とそのビルの所有者や地主と何か癒着でもあるのではないかと、いぶかしく思う市民もいるようです。
駅前はJR駅の改築に伴い、駅周辺の再開発が進んでおり、2009年には駅南側の一部はイトーヨカドーや駅ビルが新築され、以前の田舎の駅みたいだった駅前が再開発されました。
現在も南口第2地区の再開発が計画進行中です。
現在も南口第2地区の再開発が計画進行中です。
そんな中、少しでも市税の負担無く新福祉会館の建設をしなければなりません。
★再開発案
こんな共同事業計画が練られました。
●市の土地とマンションの土地を合わせることで、敷地面積が広がり、建築基準法的に大型の建物が建設可能になる。
●新福祉会館の上階に大型マンションを建てることで、分譲できる部屋数が増えて、その部屋を売る利益を建設費用に当てることが出来るので、市の負担も今住んでいる住人もお金を出さずに新しい建物に建て替えられる。
●近隣の住民の日当たりを考えて、なるべく細くて高い建物にした方が、影が出来ずに住む。つまり高層マンションにした方が良い。
●事業が、都市再開発事業扱いとなるので、国や都からの補助金が出る。
●新しい住人が増えることで、税収も増え市に貢献できる。
●新福祉会館施設も広く余裕ができるので、待機児童が問題となっている保育園なども作ることが出来る。
★住民の合意形成
まず、建替えを前提にする計画ですから、法律でマンション住民の5分の4名の賛成を得なければなりません。
お金を出さずに新しいマンションに建替えて、きれいな部屋に住める。
一見、ありがたいばかりの話に思え、反対する人なんていないように思われるかも知れませんが、実際にはマンションの建替えには賛成する人もいれば反対する人もいるものです。
誤解や思い込みが起こらないように、慎重に進めなければなりません。
●住民に配布する新聞で正しくわかりやすい情報を流す。
●新聞だけでは読まない人もいるので、勉強会を開いて、建築士の方に建替え計画が実現可能で、どのような流れで進んでいくものか、繰り返し説明を行う。
●懇談会を開き、住民の生の声を聞き取る。どんな疑問があるのか?どんな不安があるのか?何でもいいから、意見を聞く。
まずこれらの事を行いました。
その中で、次第に住民の方々、とくに高齢者の方の懸念として次のようなことがあることが浮き彫りになってきました。
●高齢者は住み慣れたマンションで静かに一生を終えたい。
●建て替えを行えば、一時的にどこかに引っ越さなければならないのが面倒くさい。
●引越し先も引越しも自力でやらなければならないのか?
●引越し先も引越しも自力でやらなければならないのか?
●建て替えられたとしても、また生きて戻ってこられるのだろうか?
●お金を出さずに新しいマンションが建て替えられるなんて話が上手すぎる。だまされているんじゃないか?
●もう老夫婦だけだから、今住んでいるような家族向けの部屋はもう必要ない。
小さな部屋に変更してもらえたりするのだろうか?
●もう老夫婦だけだから、今住んでいるような家族向けの部屋はもう必要ない。
小さな部屋に変更してもらえたりするのだろうか?
●時代の流れについて行けない。どうするか考えるのもストレス。
●理事会に不信感があり、心から信頼できない。
●そもそも本当に地震があったら崩れるようなマンションなのか?その診断は正しいのか?
●一度建て替えと決まったら、後から反対はできないのか?
少しややこしい話になりますが、マンションの建て替えに伴う住民の権利には2種類あるようです。
等価交換
耳にしたこともあるのではないでしょうか?
現在住んでいる部屋と、同等の価値のある部屋を与えてもらえる。
等積交換
現在住んでいる部屋と、同等の面積のある部屋を与えてもらえる。
等価交換ですと、現在住んでいるのが築40年の3LDKで70㎡の部屋だとします。
中古で築年数も経っていることから、不動産的価値が2千万円だとします。
すると、建て替え後に2千万円の価値のある部屋と交換することになりますが、新築のマンションで2千万円の部屋となると、ワンルームの部屋の価値しかなくなってしまうことになります。
家族4人で3LDKに住んでいたのに、建て替えてワンルームの部屋に住むなんて無理な話ですよね。
それに比べ、等積交換でしたら、面積が同等ですから、建て替え前の3LDKの部屋を得る権利がもらえることになります。
また、3LDKの部屋から2LDKの小さな部屋をもらいたい場合も、差の出る面積分を事業者が買い取るという形で、現金で支払うことも可能だそうです。
また、3LDKの部屋から2LDKの小さな部屋をもらいたい場合も、差の出る面積分を事業者が買い取るという形で、現金で支払うことも可能だそうです。
また、引越しや、引越し先での家賃などの経費も、新マンションの分譲費から出る利益でまかなえるような計画です。
もし、他の家族や親戚の家に一時的に同居するから、建て替え建築期間の家賃はかからないと言う場合は、他の住民は家賃が支払われる分と不公平が出ないように、浮いた家賃分を部屋の面積に換算して、今住んでいる部屋より面積の大きい部屋がもらえるそうです。
誰にとっても不公平感が無く、平等な条件を整えることが、重要な要素です。
★住民の不安
こうした理屈面で説得していくことも重要なのですが、不安を感じるのは理屈ではないことも多くあるものです。
「これだけ大丈夫だと説明しているのに、なんで理屈が通じないのだ!」と思うことも多々あるものです。
ですが、不安の根源は、そもそも理屈的な理由であることではなかったりする場合が多いのですね。
こうしたことはカウンセリングにも通じることですし、日常のコミュニケーションでも発生することです。
地道に
「あなたの不安に思う気持ちもわかります」
「あなたの不安に思う気持ちもわかります」
「不安な気持ちをちゃんと聞きますよ」
と、人の不安な気持ちを受け容れて共感していく姿勢があると、少なくとも「わかろうとしてくれているのだな」と、敵対する気持ちは和らぎ、安心感、信頼感が生まれていく方向にはなっていくものかと思います。
何事も、
賛成派VS反対派
みたいな構図が出来てしまうと、なかなか折り合いは付き難い状況になってしまうことでしょう。
勉強会、懇親会、電話での個別相談などのコミュニケーションを通じて、段々と住民の方々の安心感、信頼感が形成されていきました。
そして2014年5月の総会で、
「建て替え計画を具体的に検討していくかどうか?」
と言う議案を提出し、5分の4名を満たす賛成をいただき、とりあえず建て替え計画をより具体的に検討していく事が決まりました。
「建て替え計画を具体的に検討していくかどうか?」
と言う議案を提出し、5分の4名を満たす賛成をいただき、とりあえず建て替え計画をより具体的に検討していく事が決まりました。
建て替えをすることに決まったのではなく、とりあえず検討していくことが決まったのです。
本音から言えば、本当は反対なんだけど、仕方ないからシブシブ賛成にした方もおられたことでしょう。
賛成を得ることが出来た最大の要は「市民全体に貢献することが出来る」という意味があったことでした。
自分達の利益のためだけだったとしたら、もっと反対される方も多かったかと予想します。
「多くの人のためなら、面倒な引越しも仕方ない」と覚悟をしていただけたのですね。
★今後の流れ
市との共同事業を想定した計画ですから、当然市とも協議していかなければなりません。
賛成を得ることが出来た最大の要は「市民全体に貢献することが出来る」という意味があったことでした。
自分達の利益のためだけだったとしたら、もっと反対される方も多かったかと予想します。
「多くの人のためなら、面倒な引越しも仕方ない」と覚悟をしていただけたのですね。
★今後の流れ
市との共同事業を想定した計画ですから、当然市とも協議していかなければなりません。
デベロッパーと呼ばれる不動産開発の専門家との協議もし、それぞれに利益がある計画を立てていかなければなりません。
もし、住民にとって不利益な結果になることがわかれば、建て替え計画自体を止めることも検討しなければなりません。
まだまだ遠い道のりです。
今後の展開として、市政に「共同事業を行う事を検討してみませんか?」と提案し、市に検討していくことを決めてもらわなければなりません。
次回は、市の対応について書いてみたいと思います。
心理の話とは外れるかも知れませんが、ご興味のある方は、また続きにお付き合い下さい。
*投資家の方が、このブログをお読みになり、投資物件として部屋の購入を検討されたり、実際買われる現象があるようですで、追加記載しておきます。
2021年現在、未だ建替えや再開発は進んでおりません。念のため。
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