以前、GioTag研究について紹介しました。1次治療でジオトリフ(アファチニブ)を投与し、T790M変異が発生した患者に2次治療としてタグリッソ(オシメルチニブ)を投与するという治療法を実臨床における観察研究で評価したというものです。

通常の臨床試験では対象から除外されるようなECOG PSが2以上と全身状態が不良な患者さんや、安定した脳転移がある患者さんも含まれています。
ジオトリフの製造販売元であるベーリンガーインゲルハイムから、全生存期間(OS)の結果についてアップデートされたプレスリリースがありました。

今回は、米国の患者サブセットから得た最新データを評価した中間解析の結果です。アジアおよび欧州諸国の最新データが盛り込まれる予定の最終解析は2020年初頭になる見込みとのこと。

EGFR T790M獲得遺伝子変異陽性のNSCLC患者において、全生存期間(OS)中央値は約3年半(41.3カ月間)、2年間の全生存率は82%となりました。ジオトリフとタグリッソを用いたシークエンシャル治療について、治療期間(ToT:time on treatment)中央値は28.1カ月でした。

エクソン19欠失(Del19)陽性患者においては、約4年の全生存期間になっています。

前報でアジア人の治療期間中央値は46.7カ月でしたから、後治療の約15ヶ月を加えると中央値で5年生存も期待できます。

この治療シナリオを理解するのに役立つ、ちょっと古い文献がありました。
下図においてEGFR変異(エクソン19欠失)の阻害薬(TKI)に感受性のある細胞を青丸で、TKI耐性(T790M)の細胞を赤丸で示しています。
Aは細胞の異なる成長動態を示し、TKI耐性(T790M)細胞の増殖速度は遅いものです。
Bは治療シナリオを示します。EGFR-TKIによる初期治療後、EGFR-変異腫瘍は劇的に縮小する可能性があります(青丸、左)。ほとんどの場合、病勢進行はT790M突然変異の耐性獲得によるものです(赤丸、中央)。TKI療法が中止されると、成長の速いTKI感受性細胞が再増殖し、休薬後の2回目のTKI療法に腫瘍が「応答」することがあります(右)。抵抗性腫瘍がTKI感受性細胞とTKI抵抗性細胞の不均一な混合物である場合(中央)、進行後の化学療法と一緒にTKI療法を継続すること(下)は、化学療法単独よりも効果的に両方の細胞集団を標的にします(上)。

以下は、私の希望的観測ですので、ご参考まで。

GioTag研究では、T790Mの増殖速度が遅いことから、ますジオトリフの治療でTKI感受性細胞をやっつけ、その後タグリッソでTKI抵抗性細胞もやっけるので、この連続治療が時間を稼げるのでしょう。T790Mの影響が顕在化するのに1年以上かかるそうなので、ジオトリフが長く効いている人はタグリッソに繋がりやすいのかもしれません。実際には他の耐性メカニズムもあったりするので、途中で化学療法やTKIと化学療法の併用などで腫瘍細胞全体を減らします。最近は免疫チェックポイント阻害薬の併用もありですね。すると、T790Mの影響が顕在化するのにさらに時間がかかりそうです。

とにかく、T790Mがひょっこり現れるまで、化学療法も取り入れながら粘り強い治療が必要ということですね。

今はファーストラインからタグリッソです。こちらも、タグリッソの製造販売元が第3相FLAURA試験における全生存期間(OS)の改善を最近発表しました。具体的なデータは今後の学術集会で発表するとのことです。

イレッサ、タルセバ、ジオトリフはもう役目を終えたのか、それとも治療シナリオによって存在意義が再評価されるのか、ジオトリフ再チャレンジ中の私は、身をもって後世に伝えたいものです。