今日は、がんゲノム医療 本格的に開始へ 遺伝子検査に医療保険適用 のニュースが気になるところです。

そのニュースに埋もれがちですが、肺がん関連では重要な診断システムが保険適用になりましたのでチェックしておきましょう。

次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた遺伝子診断システム(「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」)です。

治療法の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる検査のことをコンパニオン診断システムと呼びます。現在の肺がん診療では、分子標的治療の対象となる複数の遺伝子を各々個別に検査しており、この方法で複数の遺伝子を診断するには、多くの時間と検体量が必要でした。

今回、肺がんから採取した微量検体を用いて複数の遺伝子を同時に、かつ迅速に診断すること、すなわちマルチ遺伝子診断が保険適用となりました。

EGFR、ALK、ROS1、BRAFの遺伝子診断が可能となり、タグリッソやアレセンサなど8種類の分子標的薬における治療適応を同時に判定することができるようになりました。

私も肺がんを告知されてから、治療が始まるまで様々な検査に時間がかかり不安に思ったことでしたが、今後は迅速な診断が可能になることが期待され、画期的なシステムと言えますね。


一方、本題の遺伝子パネル検査ですが、対象となるのは、標準的な治療では効果が見込めなくなった患者、というのが気になりますね。

日経メディカルに、日本の癌ゲノム医療が招く「悪夢」 という記事が出ています。
その悪夢とは。具体的に言えば、治療を待つうちに患者がバタバタ死んでしまい、実施した癌ゲノム検査が何の役にも立たないという事態が多発する恐れがあることです。さらに、検査費用に保険が使えても、未承認薬には保険が使えません。

つまり、いつ死が訪れるか分からない癌患者に長い時間待たせた挙げ句、希望の光をチラッと見せておきながら、「お金が必要です。ないなら諦めてください」と通告する、というような話との指摘です。

もちろん、制度の問題点を炙り出すための批判的な記事でしょう。でも、現時点では患者さんのメリットが感じられないがんゲノム医療ですね。

もっと元気な内に検査でき、未承認薬も治験で参加できるような仕組みを作って欲しいところです。

今回の遺伝子パネル検査にはコンパニオン診断の機能を併せ持っているようですが、まだ詳細は良くわかっていないので、上記観点に注意しながら今後の解説をチェックしていきたいと思います。