EGFRセミナーの復習について昨日の続きです。

 

3. EGFR遺伝子変異陽性だと免疫チェックポイント阻害薬が効かない?

 

遺伝子変異の質と量

長期に渡って喫煙すると、遺伝子にたくさんの傷をつけてしまい肺癌が発症するというのは理解しやすいのですが、喫煙習慣が無くてもピンポイントで遺伝子に変異が生じることで発癌を誘導するdriver mutation(ドライバー遺伝子変異)と呼ばれる変異があることがわかりました。

EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子です。遺伝子変異の総数(Tumor Mutation Burden:TMB)が少なくても肺癌が生じてしまうという、すなわち、量より質です。このような特定のdriver遺伝子の変異で発癌する肺癌は、この遺伝子のシグナルを特異的に遮断する分子標的薬によって強力に腫瘍の増殖を抑制できます。

一方、喫煙などによって様々な遺伝子の変異(passenger mutation:パッセンジャー遺伝子変異)の蓄積によって起こる肺癌においては、変異の総数:TMBは多いものの、driver mutationを持ち合わせるケースは少なく、分子標的薬が適応となる確率は非常に低いものとなっていました。こちらは質より量ですね。

 

免疫チェックポイント阻害薬

腫瘍が免疫監視機構を回避するメカニズムにおいて、その経路を遮断する免疫チェックポイント阻害薬:抗PD-1抗体による免疫療法が登場しました。ただし、治療効果が得られるのは全体の20%という状況です。抗PD-1抗体の治療効果を予測するためのバイオマーカーとしてPD-L1の発現が認められました。この他に、腫瘍が持っている遺伝子変異の総数(TMB)、特に喫煙などによって誘導されやすい transversion mutationが多いことが治療効果が高いグループを選別できるバイオマーカーとして報告されるようになりました。

TMB が高レベルのがん細胞では、ネオアンチゲンの発現レベルが高くなります。ネオアンチゲンは、体の免疫系が腫瘍を認識するのを助け、がんを攻撃する T 細胞や抗腫瘍応答を活性化させると考えられています。逆に言うと、遺伝子変異の総数が少ないEGFR遺伝子変異では免疫系が腫瘍を見つけずらいということなのでしょう。

 

改めてEGFR遺伝子変異陽性患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験データを見てみると、EGFR遺伝変異陽性症例のハザード比は1をまたいで極端に振れています。すなわち、良く効く人もいれば、症状を悪化させる人もいるという、ギャンブル状態ですね。ここで、効く人の条件は一体何なのでしょうか?

 

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

 

EGFR遺伝子変異陽性の人は、アジア人、女性、非喫煙者に多いと言われています。私はなぜか、男性で喫煙者だったのにEGFR遺伝子変異が陽性です。ということは、私は遺伝子変異の総数TMBが高レベルというのを併せ持っている?

喫煙歴の大小を表すのに喫煙指数 Pack-yearsというのがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。私は今はもちろん禁煙中ですが、喫煙歴は、30Pack-yearsです。喫煙歴20Pack-yearsの人の20%がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)というのが、ひとつの目安ですから多い方ですね。

 

EGFR遺伝子変異陽性でも、喫煙歴が大→TMB高レベル→免疫チェックポイント阻害薬が効く、というのはアリなのでしょうか?

喫煙が原因で肺がんになったのに、喫煙のおかげで肺がんが治るというのは、虫が良すぎるとは思いますけどね。

喫煙にこだわらず、免疫チェックポイント阻害薬が効く条件、あるいは効かせるための処置が明らかになって欲しいものです。

 

一方、オシメルチニブ(タグリッソ)投与には間質性肺疾患の既往歴と免疫チェックポイント阻害薬の投与歴確認を、という厚労省通知による注意喚起がされています。

こうなると、いろいろな治療薬の投与順序も考えなくてはいけません。元気なうちに一番効く治療薬がわかればいいなと、切に願います。