知ってる人はよく知っているが、

知らない人は全く知らない御仁。

 

食生活研究家の魚柄仁之助さん。

 

魚柄 仁之助(うおつか じんのすけ 1956年4月21日 -

 

福岡県北九州市戸畑区に生まれる。

実家は大正7年創業の日本料理店。

 

    

 

日本の食生活研究家、エッセイスト漫画原作者ペーパーナイフアーティスト。

 

  

 

自分にとっては、王道自炊派のレジェンド。

よく観る「料理家」とは全く違う。

 

生活哲学を持った、哲人

 

著作も多数有り

その内容もとても面白く勉強になる。

 

現在は66歳。

 

    

 

コロナ禍に突入してから、哀しい事に

健康を維持する事自体が敷居が上がってしまっている

 

過度な農薬や、遺伝子組換え食材の問題も有りつつも

それでも、自炊をする事でダメージを少なくする事を

できるのは事実で、経済的にもそこに重点を置くのは

当然の事。

 

知らない人には、

本当は、魚柄さんの著作物を読んで欲しいが

動画が何本か散見できるので

それを転載したいと思う。

 

 

2009年頃

 

 

 

 

農文協・パルシステム共同企画『かんがえるタネ』世界が転換する時代の「台所サバイバル」

 

 

今日からできる台所術

 

朝にしっかり食べる派の工夫のある朝ごはん/食文化研究家・魚柄仁之助さん

 

 

 


 

 

  

 

 

柔らかめの記事を追加・・・

 

『時短』焼きナス:秋の夜長、もっと長~く:19991001

 

<イラスト・堀込和佳>


間違い、あの時始まったとです。

旨(うま)い、早い、安い、体調がいい、
こげな食生活を続けて来た私は、

それを本にしてもた。

サブタイトルに

「ひと月9000円」なんち付けたもんで

世のマスコミさんは

「節約の人」とかん違いして

未だに節約達人さん取材におしかけちょる。

あたしゃ逆に

 

「100円でできるおかず」

 

なんちゅうの、大嫌いだし


「とり寄せグルメ、日曜日の男の食事作り」

 

なんちゅうのは遠い世界の事ですわ。


近くで手に入る物

出盛りで安い物
そげな物を手早く

旨く調理して食べ
デブデブになったり

ガリガリになったりせず

元気でいられるような

そげな食生活が好きなんス。

つい先日も、友人が

白金(東京都)の仕事場を

訪ねて来たです。

これが実に大酒飲みの上

和食大好き女でしたんで
秋の夕暮れ

酒盛り飯盛り宴会となっちまったんは

言うまでもなき事。


その日は近所の八百屋で、

秋ナスが18本、280円!! 

ちゅう事は1本16円。

どわっはっはー。
太っ腹で1人4本使うちゃろ。

(64円じゃけど……)

ナスの皮を
皮むき器でスーイスイむいたら
鍋の中に万能蒸し器を入れ
そこにナス8本を乗っけて
中火で15分程、蒸したとです。

フライパンを熱しておいて、
蒸したナスをそこに乗っける。

焦げぬよう

中火でナスをコロコロさせ
やや水分が抜けた感じ

=ナスの表面が薄茶色になった頃
洋食用匙に一杯位の

ゴマ油を全体にかけ、
ナスを炒めたです。

最後に少量の醤油を

ジュッと掛け
こうばしい香りが立ち昇った処で

はい、消火。

ナスを食べ易い大きさに切って

小鉢に盛りつけ、
作りおきのざるそば用のつゆを

少々かけると完成ですがな。

(つゆは)

(昆布、鰹節<かつおぶし>のだしに)

(醤油、みりんで味をつけたもの)

 


つべたーい冷酒を

なめなめしつつ
この蒸してごま焼きにしたナスを

ながめとった友人、

「たまりませんよう」

「たーいしょおう!」

なんち言いつつ

たきたてごはんを丼によそい

その上にそばつゆのしみた

焼きナスをのっけて

ガバッとやりよる。

「う、う、う」

 

と、うめきつつ

丼飯半分
茄子2本ほどをたいらげ
一息つくかと思いきや

冷酒をグビッ。

「ハアー……、しあわせ」

「大将、そのナス、くれる?」

な、なんちゅうやっちゃ!

わしのじゃっちゅうに。
こげな日々が

今日も今日とて白金で

展開されとるですよ。
 

 

 

一緒に食べれば鯛の味:鰯の刺し身:20010926

 


<イラスト・堀込和佳>

 

もう20年ほど前になりますかのう。

 

私、一応大学生をやっちょりまして

住んどったのは内陸の地、宇都宮でしたの。

 

バイトの関係で知りおうたじいさまが

 

「酒をおごっちゃる」

 

っちゅうもんですけ

鮮度のええ鰯を10匹ばかし

買うておじゃましたとです。

 

まぁ酒のさかなくらいは……

ってとこですわい。

鰯の頭と内臓を切り取ったら

流水で腹の中をよーく洗う。

 

包丁で3枚におろし

薄皮をスイーッとむいてから

薄いそぎ切りにする。

 

さて、ここからが掟破りの技なのよ。

 

この刺し身を

氷水の中に入れちゃうの。

 

入れて5分もすると

鰯の刺し身から余分な脂が抜け

身がようしまるとですよ。

 

醤油に夏ミカンを

ジュッと搾ったつけだれに

こいつをつけて

ツルリンッと食べちゃう。

 

これがアンタ

残暑厳しき9月の

夕刻の冷酒にようあうとです。

 

「こーりゃーウメエ!!」

「こんなにウメーってことは」

「こりゃ鯛だっぺ?」

 

「ちがいますがな御隠居」

「こりゃ鰯ですどー」

 

「そんなこたあんめえ」

「鯛だっぺよう」

 

「なーん言いよるん」

「ワシが鯛なんち」

「買える訳がないがな」

 

ってなこと言いつつ

御隠居と2人で10匹の鰯と

1升の冷酒をあけちまったですよ。

その御隠居が危篤になったんが

その何年か後でして

あたしゃ病院へかけつけたです。

 

その日がもう峠らしく

まーったく意識無し。

 

とっころが

ベッドサイドで話しかけると

おメメがパッチリ開いて

ニッコリしとる。

 

何か言おうとしとるんで

耳を近づけたところ

 

「いわしのさしみ」

「うまかったっぺよー」

 

と、消えるごと言うとです。

 

「鯛じゃなかったか?」

 

と、冗談言うたら

ニコッとしとりました。

 

そのまま、あっちへ旅立ったです。

 

 

1日3回食べる食事ですが、

誰と何処で

どげな風に食べるかによって、

いい思い出にもなるもんです。

 

1人で食べるんじゃさびしいですわ。

 

誰かに居て欲しいし

誰かに作ってあげ

誰かに作って貰いたい

 

それが「食べちゃる」2年間のテーマやったとです。

今日はJ・レノンの「スタンド・バイ・ミー」聴きましょ。(おわり)