日本の研究者が、超音波療法が認知症患者の治療に使える事を発見
2018年11月20日(火) by:エドセル・クックTags: alternative treatments, Alzheimer's disease, brain function, brain health, cognitive dysfunction, cognitive health, dementia, medical tech, research, science and technology, ultrasound, vascular dementia
超音波を利用した新しい治療法が、アルツハイマー病などの認知症患者の認知力を改善する可能性がある。
東北大学のニュースページに掲載された記事によると、このアプローチにより、人間の認知症に似た症状を持つマウスの状態が改善されたとのことです。
超音波を脳に当てると、認知症患者の治療に役立つ可能性がある。
東北大学の研究チームは、低強度パルス超音波(LIPUS)をマウスの脳内に送り込み、実験を行った。その結果、この波によって血管が作られ、神経細胞の再生速度が向上することを発見した。
更に、この治療法は、マウスに目立った副作用を与えなかった。この結果を受けて、研究者達は、いつか実際のヒトの患者さんで実験的な成功を再現できると考えています。「LIPUS療法は」
「手術や麻酔を必要とせず」
「リスクの高い高齢者にも適用できる」
「非侵襲的な理学療法であり」
「繰り返し使用する事ができます」
(関連記事:アルツハイマー病患者の認知機能障害を軽減する鍼治療の正確なメカニズムに迫る研究)
超音波は、認知症患者を救う事ができるのか?
世界では、160人に1人が認知症といわれています。
毎年1,000万人が新たに発症し、社会的な負担が増しています。その多くは、アルツハイマー型認知症と、血管性認知症です。
この2つの認知症の内、アルツハイマー型認知症と、血管性認知症は、その普及率にも関らず、認定された治療法はありません。
これは、脳内を流れる血管がコンパクトに配置されていることに起因しています。
所謂、血液脳関門(Blood-Brain Barrier)は、大きな分子を脳組織に入れない様にするものです。その為、殆どの薬が脳に到達し、認知症の様な状態を治療する事は非常に困難です。
東北大学の研究チームは、心筋梗塞を起こした豚を使った実験で得られた知見を元に、今回の研究を行った。心筋虚血を起こした豚の心臓は、血流が低下していたのです。
又、低強度パルス超音波(LIPUS)が神経細胞の生存と発達に大きな役割を果たす蛋白質の生成を促進する事も実証されました。その結果、神経の再生にも影響を与える事が分かりました。
更に、認知症のマウスの海馬(Hippocampus)に、低強度パルス超音波(LIPUS)を集中的に投与した処、マウスの行動が大きく改善された。
海馬(Hippocampus)は、記憶等を司る。
下川宏明教授らは、今回の研究で、全脳的な低強度パルス超音波(LIPUS)処理に切り替えた。
この治療法が認知症モデルマウスに有効か否か、検証する為である。更に、この治療法が認知症の症状を改善するメカニズムも明らかにしようとした。
全脳低強度パルス超音波療法が認知症モデルマウスの認知機能障害を著明に改善する - 内皮型一酸化窒素合成酵素の重要な役割を解明
アルツハイマー病や血管性認知症の治療薬になる可能性
東北大学の研究者達は、アルツハイマー病や、血管性認知症に似た症状を持つマウスの脳全体に、低強度パルス超音波(LIPUS)療法を施しました。1日3回、1回につき20分間行った。
血管性認知症を模したマウスは、脳に到達する血液量を減らす手術を受けた。
血管性認知症を模擬したマウスには、脳に届く血液量を減らす手術を行い、手術後1日目、3日目、5日目に低強度パルス超音波(LIPUS)治療を行いました。
一方、アルツハイマー型認知症を模したマウスには、3カ月間の試験期間中に11回の低強度パルス超音波(LIPUS)治療を行いました。
実験の結果、低強度パルス超音波(LIPUS)は、血管の内壁を構成する細胞に関わる遺伝子を活性化する事が判った。
更に、血管の形成を促進する酵素や、神経細胞の成長を助ける蛋白質の活性が高まっていることも確認された。
この事から、全脳低強度パルス超音波(LIPUS)療法は、認知症の原因となる細胞の発達を促す事で、特定の認知症の症状を緩和する可能性があるという。
現在、この技術の有効性と安全性を確認する為の初期臨床試験が行われています。