分析:欧州は、産業が死に、銀行が破綻し、食糧生産が急減して「経済的な荒れ地」になる。2022年9月26日(月) 記:マイク・アダムス
Tags: ammonia, BASF, chaos, chemicals, Collapse, energy, Europe, famine, fertilizer, food production, hydrocarbons, natural gas, power grid, sanctions, scarcity, starvation, western europe
欧州の経済、通貨、産業は自由落下状態にあり、ロシアからの天然ガス供給を速やかに回復しなければ、1年も経たない内に「経済の荒れ地」状態に突入する。
これは、戦争特派員のマイケル・ヨン、フィンランドの経済学者トゥオマス・マリネン、世界農業動向研究家のデビッド・ダビーン、イタリア系米国人の作家レオ・ザガミ等、この2週間にナチュラルニュースに語ってくれた多数の専門家の結論である。
状況は非常に悲惨で、ドイツの化学大手BASFは、かつてナチスが運営し、人道に対する戦争犯罪を行った化学複合企業IGファルベンに属していたが、1960年代から継続して稼働している工業プラントの操業を停止する恐れが出てきた。
Interessen-Gemeinschaft Farbenindustrie AG
作家のフィリップ・オルターマンが英国ガーディアン紙の記事「ドイツのBASF工場でのガス配給が如何に欧州を危機に陥れるか」で説明している様に、BASFは、天然ガスの不足によりドイツ国内の巨大化学施設を閉鎖する処まで来ているのである。
ドイツBASF社の工場でのガス配給が、いかにヨーロッパを危機に陥れうるか。
しかし、生産停止は永久に続くかもしれない。
停止した後に、工場が再開できるか否かは、誰にも判らないからだ。
停止するという行為そのものが、システムを破壊する可能性があるからだ。
BASF社は、肥料、石油精製、医薬品、プラスチック、消費者製品、工業材料など、世界のサプライチェーンに欠かせない存在である。
もしBASFが潰れれば、西欧州の産業経済は急速に破綻し、世界のサプライチェーンの危機は、コロナロックダウンによるものを遥かに超えて劇的に悪化するだろう。
これら全てを理解する為に、先ず、この2022年3月のロイターの記事『BASF、ガス供給が必要量の半分に落ちたら生産を停止すると発表』を考えてみよう。その記事は説明している。
BASF社、ガス供給が必要量の半分まで落ちたら生産停止と発表
ドイツのBASF(BASFn.DE)は、世界最大の化学品グループが、欧州の電力不足による事業への損害を警告する中で、天然ガスの供給が必要量の半分以下になった場合は、生産を停止しなければならないと水曜日に発表した。
この記事は、BASFが化学品製造のエネルギー源として天然ガスを使用しているだけでなく、天然ガス中の炭化水素が、炭化水素分子から水素(H)を得る必要のあるアンモニア(NH3)等の、重要な化学品生産の原料となっている事を明らかにしている。
電気には、水素が含まれていないので、天然ガスを単純に電気に置き換える事はできない。
従って、風力発電や太陽光発電は、肥料製造やプラスチック製造等の産業や製造業において、決して天然ガスに取って代わる事はできない。
ルートヴィヒスハーフェンにある125の生産工場は、相互に関連したバリューチェーンとなっている。ガスの供給が落ちれば、サイト全体の操業停止につながる。
ロイターの説明の通りだ。
欧州では、BASF社は購入したガスの約60%を生産に必要なエネルギーの生成に使い、残りの40%は重要な基礎化学品を生産する為の原料として使っている...
ルートヴィヒスハーフェンにあるアセチレンプラント。約20の工場があり、プラスチックや溶剤など、多くの日用品を構成する化学物質として使用されている。
なお、上記のReutersの記事は、ガスプロムがNord Stream 1のガスの流れを止めるかなり前に発表されたものである。
現在の流量はゼロであり、ロシアは直ぐに流量を回復させる様な止むを得ない理由もない。
詰り、ドイツは冬が近付いても、天然ガスを貯蔵しているのである。
因みに、これらのガス貯蔵は、今年の年末迄もたないだろうし、本当に寒くなるのは2023年だ。
BASF社は、天然ガス不足による操業停止が迫っていると警告している。
天然ガスの供給が、BASF社の全需要の50%に落ち込んだ場合、同社は操業を停止せざるを得なくなる。
ルートヴィヒスハーフェンで生産される最終製品のひとつに、ディーゼルエンジンから出る大気汚染を抑えるための液体、AdBlueがある。不足すると、ヨーロッパ中のローリーが停止する可能性がある。
The Guardian から
当社の広報担当者である、ダニエラ・レチェンベルゲは、
「最大需要量の50%を大幅に」
「且つ恒常的に下回る量の」
「原料を受け取る事になれば」
「工場全体を閉鎖する必要があります」
「BASFの歴史において」「この様な事は」
「一度も起こった事がありませんし」
「ここの誰も」
「この様な事態を望んではいません」
「でも、そうせざるを得ないのです」
と、言う。
驚くべき事に、BASF社は、もし操業を停止したとしても、再開できるか否かは誰にも分からないと警告している。
バーバンド工場の大部分は、1960年代から24時間操業している為、BASF社によれば、その後生産を再開できるか否か、圧力の低下で機械が壊れるか否かは不明だという。
詰り、単純にスイッチを入れてプラントの電源を切り、反対側のスイッチを入れて再び全てを稼働させることはできないのです。
アンモニア製造だけでも、BASF社の工場(ルートヴィヒスハーフェン)では、10平方キロメートルの敷地内にアンモニアを処理・供給するだけで、1771マイルのパイプライン網を必要とする。
BASF社のルートヴィヒスハーフェン工場にあるスチームクラッカー(個別工場としては最大規模)。
そのアンモニアは、肥料、ディーゼル排ガス液(DEF)、エンジンオイル添加剤等、多くの工業用化学品の製造に使用される。
「ルートヴィヒスハーフェンの」「操業停止がもたらす影響は」
「ヨーロッパ最大の経済圏だけでなく」
「大陸全体に及ぶだろう」
と、『ガーディアン』紙は書いている。
BASF社の操業停止は、自動車製造、消費者製品、農薬、病院の滅菌薬品等、多くの製品の閉鎖を意味する。
西欧州全体では、アンモニアの生産が既に70%減少しており、2023年の春作に壊滅的な影響を与えるだろう。
(2023年~2024年に掛けて)
(欧州全体で)
(大規模な飢饉が起こると予想される)
金属製錬の操業は、50%以上停止しており、Eurometauxという業界団体は、政府が直ちに介入(詰り救済資金)しなければ、欧州は「永久的な脱工業化」、詰り経済の荒れ地になる事に、直面すると警告を発している。
その警告文から、ここに紹介する。(PDF)
RE: 欧州の非鉄金属メーカー、電力・ガス価格高騰による永久的な非工業化を防ぐ為、EUに緊急行動を要請
EUのアルミニウムと亜鉛の生産能力の50%が電力危機の為に、既にオフラインに追い込まれ、シリコンと合金鉄の生産も大幅に抑制され、銅とニッケル部門にもさらなる影響が及んでいる。
先月には数社が無期限の閉鎖を発表し、更に多くの企業が、多くの事業にとって生きるか死ぬかの冬を前にして瀬戸際に立たされている。
生産者は、昨年の10倍以上の電気・ガス代に直面しており、製品の販売価格を遥かに超えています。
私達は経験から、一度閉鎖された工場が永久に続く事が非常に多く、再開は大きな不確実性とコストを伴う事を知っています。
基本的には、西欧州は、18世紀に突入し、18世紀の疫病、飢餓、貧困を経験することになるのです。
戦場記者マイケル・ヨン「グリーン」エネルギー政策による欧州崩壊を警告する
土曜日に、戦場記者でアナリストのマイケル・ヨンとのインタビューを掲載した。
彼は「グリーン」エネルギー政策に熱中する欧州が、経済破壊の瀬戸際に追いやられ、飢饉、パンデミック、戦争に繋がると警告している。
マイケル・ヨンがマイク・アダムスに語った、西欧州は「グリーン」エネルギー政策で自らを破滅させようとしている