中国の水危機は世界的大災害の引き金になり兼ねない
2022年8月29日


中国の電力網の約90%は、豊富な水資源に依存しており、水危機によって、それが脅かされ、石炭だけがそれを解決でき、世界的な大災害の引き金となる可能性があります。

 

Foreign Affairs誌によれば、中国の水危機は今に始まった事ではないが更に悪化し、今や「破局の瀬戸際」に在り、世界的な破局に繋がる可能性が有ると云う。

世界経済における中国の重要性を考えると、中国から始まる水による潜在的な混乱は、世界中の食料、エネルギー、材料市場に急速に波及し、今後何年にも渡って経済的、政治的な混乱を引き起こすだろう。

- フォーリン・アフェアーズ

 

中国・長江支流の嘉陵江の干上がった河床

 

そもそも、食料の生産、発電、そして地球上の全ての生命の維持に必要な水に代わるものはない。

中国は数十年に渡る経済成長と人口増加の結果、中国北部の水インフラが持続不可能なレベルに達しています。

 

中国は1日に100億バレルの水を消費しています(1日に消費する石油の約700倍)。

 

 

2020年末の華北平原周辺の一人当りの供給量は253立方メートルで、国連の定義する「急性水不足」を50%以上下回っている、と報告書は主張している。

 

北京、上海、天津の3つの重要な都市は、同程度(またはそれ以下)のレベルである。

対照的に、エジプトは一人当りの淡水資源が570立方メートルしかなく、製造業の基盤も中国より遥に小さいものであった。


人間の消費に適さない

中国の生態環境部によると、中国の地表水の19%は人間の消費に適さない。その内の約7%は全く使えないとされている。

地下水の状況は更に悪く、16%のケースで使用又は飲用に適さないと判断された。

北京はこの水を利用する為に、処理設備に多額の投資をする必要があり、その結果、設備に使用する電力量が大幅に増加する事になる。

中国の農業と工業は、地下水への汚染物質の投棄を行い、更に数十年に渡る障害への道を開く可能性があり、進歩の妨げになっている。

国連食糧農業機関のデータによると、耕地面積が25%少ないにも関らず、中国は、米国の2.5倍近い肥料と、4倍近い農薬を使用しています

何十年もの間、北京は一般に、潜在的な国民の反発を抑え、中国共産党(CCP)の能力と能力に関する疑問を避ける為に、中国の環境問題の全容を隠す事を選択して来た

 

この様な透明性の欠如は、深刻な水不足が深刻化する事が、外部の観測者の多くが認識しているよりも遥かに近い事を示唆している。

- フォーリン・アフェアーズ

NASAのGRACE衛星によれば、北中国平原の地下にある帯水層は、米国のオガララ帯水層よりも過剰に汲み上げられ、世界で最も脅かされている農業用水の供給源の一つである。

地下水位が低下して、帯水層が崩壊すると、地盤沈下と呼ばれる現象が起こり、広範囲に渡って地盤が崩壊し、将来的に、帯水層が使用できなくなる可能性がある。

 

地盤沈下


北京では、2003年から長江の水を北に補給する「南水北調プロジェクト」を開始した。

しかし、中国は、液体窒素や、ヨウ化銀を雲に注入して雨を降らせる雲水播種技術を使っている。

 

 

又、重工業も、乾燥地域から移転している。

2022年4月に予測した水資源省の魏山中次官によると、中国は水関連プロジェクトに年間1000億ドルを費やす事になるかも知れない。

しかし、それだけでは十分ではないかも知れない。

水利用の改善に向けた非常に革新的なプログラムにも関らず、一部の学者は2030年迄に水供給が需要を25%も下回る可能性があると見積もっており、この状況は明らかに社会の大きな調整を余儀なくされる。

 

華北平原でのこれまでの経験が、この懸念を高め、更に必要な水力的介入の規模を明らかにしている。

 

北京等のストレスの高い地域に長江流域の水を10年近く輸入して来たにも関らず、河北省や天津など近隣の地域では貯留された地下水の大規模な枯渇が続いているのである。- 外交部

干ばつが酷くなると、当然ながら食料は減る。

中国の小麦の60%、トウモロコシの45%、綿花の35%、落花生の64%は、危機に瀕している華北平原で生産されており、小麦の年間生産量は8000万トン以上でロシアに匹敵し、トウモロコシの年間生産量は1億2500万トンで戦前のウクライナのほぼ3倍である。

これらの作物を支える為に、自然が水を補充するよりも早く、農地に水が汲み上げられつつある。

 

衛星データによると、中国北部では、2003年から2010年の間に北京の年間使用量と同量の地下水が失われ、農家は他の供給源の確保に奔走している。

もし華北平原で水不足による33%の作物損失が発生した場合、中国は世界のトウモロコシの20%近く、小麦の13%を輸入する必要があると言われている。

中国は世界最大の穀物備蓄国であるが、数年にわたる収量不足と無縁ではいられない。

 

この為、COFCOや、シノグレイン等の大規模な国有企業を含む中国の食品取引業者は、追加供給を確保する為に、緊急に世界市場に参入しなければならなくなる可能性が高い。

 

その結果、高所得国で食糧価格が高騰し、貧しい国の何億人もの人々が主要食糧を経済的に手に入れられなくなる可能性がある。

 

この水による食糧不足の影響は、2007年と2008年に低所得国や中所得国を襲った食糧不安よりも遥かに深刻で、移民を促進し、欧州や米国に既に存在する政治的偏向を悪化させる可能性がある。

-フォーリン・アフェアーズ

 

難民と移民

 

衝撃的な問題

中国の電力網の約90%は豊富な水資源に依存している。

 

「特に水力、石炭、そして原子力発電は」

「復水器や原子炉の炉心」

「使用済み燃料棒の冷却に」

「大量かつ安定した水の供給が必要だ」

 

と、報告書は述べている。

 

中国の水問題は、農業に留まらない。

水不足で水力発電の15%を失った場合、エジプトが1年間に消費するエネルギー量に匹敵する量の代替エネルギーによる発電を拡大する必要があるが、それを実現できるのは石炭だけである。

 

しかし、石炭の採掘と調合には大量の水も使われる。

 

沿岸部の数少ない石炭資源は海によって冷却する事ができるが、煤煙資源の殆どは、内陸部にあり、地下水、川、湖に依存している。