金に裏打ちされたルーブルは世界経済の新しいパラダイムシフトです

2022年4月3日


このような経済情勢の変化の中で米ドルがどうなるかを予測するのはまだ時期尚早だが、米ドルが以前よりも弱く、支配的でなくなることはほぼ確実である。これは、世界経済の新しいパラダイムシフトである金の裏付けを持つルーブルの結果である。

 

 

ロシア銀行は今週、金の買い付けを再開したが、更に重要なのは、3月28日~6月30日迄の間1g当り5,000ルーブル(59ドル)と云う設定価格で買い付けを行う事で、恐らくほぼ1世紀振りに、ロシアが金本位制に戻ると云う見通しが強まっている。

 

  

 

もし、今週提案された様な、ルーブル建て商品の売却と云う次の手段を採用すれば、ルーブル、米ドル、そして世界経済に深刻な影響を与えるかも知れないと、Russia Todayは報じている。

 


同メディアは、BullionStarシンガポールのレアメタル専門家であるRonan Manly氏とチャットし、幾つかの知見を得ました。

 


何故ルーブルで金の固定価格を設定する事に意義が有るのでしょうか?

 

ロシア銀行は、ルーブルを金と結び付け、1g当り5,000ルーブル(59ドル)の所定の手数料でロシアの銀行から金を購入する事を提案し、米ドルに対するルーブルの基準レートを確立しています。

 

 

この接続は、3月25日(金)に、ロシア銀行が設定価格通知を発表して以来、有効になっています。

 

当時、ルーブルは1ドル=100ドル以上で取引されていたが、その後上昇し、現在は1ドル=80ドル程度で推移している。

 

なぜか?

 

現在、金が海外市場で1g当り62ドル前後で取引されており(5000÷62)=80.5 前後と成る為、市場や裁定取引業者が注目し、ルーブル/米ドルの為替レートを更に押し上げたからです。

金については、現在、ルーブルは対ドルでは基軸となっている。

 

一方、金にはフロアがある。

 

1g当り5,000ルーブル(59ドル)は、金1トロイオンス当り15万5500ルーブルに相当し、ルーブル/米ドルのフロアを約80とすると、約1940ドルに相当する。

 

そして、LBMA/COMEX欧米ペーパー金市場が米ドル金価格を下げようとすれば、ルーブルも下げなければ、ペーパー操作が露呈する事になるのである。

更に、金とルーブルの新しい相関関係により、ルーブルが強くなれば(例えば、ルーブルでのエネルギー支払い義務化による需要で)金価格も上昇する事になる。


石油はどうなる?

ロシアは、世界最大の天然ガス輸出国であり、世界第3位の石油輸出国である。

 

プーチンは海外の買い手(ロシアのガス輸入業者)に対して、天然ガスの対価をルーブルで補償するよう求めていることが、今正に判ります。

 

天然ガスの価格はルーブルのコストに直結しており、(金と常に繋がって居る為)金の価格にも直結している。

 

その結果、ロシアの天然ガスは、通貨を通じて金と結びついている。

ロシアの石油も同じ様に使えるようになった。

 

もしロシアが石油の輸出に対してルーブル払いを要求し始めたら、即座に金と間接的に結び付く事になる(ルーブルと金の固定価格関係にある為)。

 

  

 

そうなると、ロシアは石油輸出の対価として、金をそっくりそのまま受け取る様になるかも知れない。

 

実は、この原理は、石油やガスだけでなく、あらゆる商品に適用できるかも知れない。

金の価格はどうなるのでしょうか?

ロシア銀行とクレムリンは、ルーブルと金を結び付け、エネルギー決済をルーブルに結び付けると云う両端を操作する事によって、国際商業システムの機能原理全体を大幅に書き換え、世界の通貨システムの変化を加速しているのである。

 

  

 

LBMAとCOMEXのペーパーゴールド市場は、本物の商品と交換する為に現物の金を求める買い手のこの壁によって魚雷の様に破壊され、吹き飛ばされる可能性があるのだ。

ルーブルと金の結び付きは、ルーブル/米ドルの交換の基盤であり、米ドル建て金価格の準基準となる。

 

しかし、第一の出来事は、金がエネルギー支払いにリンクしていることである。

 

ルーブルと金の連動性が固定されている為、ルーブル需要の高まりは、ルーブル/米ドルレートの上昇を促し、結果として金価格の上昇をもたらす筈である。

 

しかし、ロシアが石油の償還として金をストレートに受け取るようになれば、石油価格と金価格が直結することになり、金価格にとって新たなパラダイムシフトとなる。

例えばロシアは「今後は原油1バレル当り1gの金を受け入れる」と表明する事から始めるかも知れません。

 

1gでなくても、1バレル1.2g等、現在の原油基準価格より低い価格にして参加を促す。

 

買い手は、ロシアの原油輸出を賄う為に現物の金の購入を急ぐだろうし、ロンドンやNYのペーパーゴールド市場には大きな圧力が掛るだろう。

 

『金価格』の発見は全て、合成で端数のある現金決済の無担保「金」と金価格の「デリバティブ」を前提にしているのである。

ルーブルはどうなるのか?

ロシア銀行の設定価格を通じてルーブルを金に接続した結果、ルーブル/米ドルレートは今、安定し強化されている。

 

天然ガスの輸出代金をルーブルで支払うよう要求する事は(将来的には石油や他の商品も)、市場の安定と維持に繋がる。

 

もし、国際貿易システムの多くが商品代金としてこのルーブルを受け入れる様になれば、ロシア・ルーブルは急速に重要な国際通貨となる可能性がある。

 

同時に、ロシアが石油の代金を金で直接支払うようになれば、ロシアが保有する国際的な金が更に増え、ロシア銀行のバランスシートが強化され、ひいては通貨も強くなるだろう。

ルーブルの金本位制の議論は行き過ぎかもしれないが、ロシア中銀は金の裏付けがある通貨を考えている筈だ。


他の通貨ではどうなのでしょうか?

 

世界の通貨情勢は急速に変化しており、世界中の中央銀行が注目していることは明らかである。

 

欧米の制裁は、ロシアの金を制裁しようとする一方で、ロシアの外貨準備の大部分を凍結した様に、今や海外に保有する外貨準備の財産権が尊重されない可能性がある事、イングランド銀行やNY連銀等の保管場所に保持されている海外の中央銀行の金が押収される可能性が有る事を実証している。

ルーブルが金と連動し、商品輸出代金がルーブルと連動するようになれば、他の非欧米諸国や中央銀行もロシアを注視するようになるだろう。

 

言い換えれば、ロシアが石油の代金として金を受け入れる様になれば、他の国もそれに従わざるを得ないと感じるかも知れない。

米国以外で石油や天然ガスを最も多く生産している国は、何処か考えてみよう。

 

イラン、中国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、そしてカタールである。

 

勿論、BRICSや、ユーラシア大陸の全ての国々が、この状況を注意深く見守っているのは明らかだ。

 

 

もし米ドルの崩壊が目前に迫っているとすれば、これらの国々は皆、自国通貨が新しい世界金融秩序の恩恵を受ける事を望んで居る筈である。

これは米ドルにとってどの様な意味を持つのだろうか?

1971年以来、米ドルの世界的な基軸通貨としての地位を支えてきたのは石油であり、石油の取引に米ドルが使われ続け、米国が米ドルの競合を禁止してきたからこそ、ペトロダラー時代が成立してきたのである。

しかし、今日、我々が目撃しているのは、その50年に渡るシステムが終焉し、金と商品に裏打ちされた新しい多国間通貨システムが出現する夜明けであるように思われる。

 

その切っ掛け、ロシアの外貨準備の凍結である。

 

中国や石油輸出国など世界の大商品生産国は、より平等な新しい金融システムに移行する時期が来たと考えているのだろう。

 

これは驚くべき事ではなく、彼らは何年も前からこの事について話してきた。

この間、米ドルがどの様に推移するかを予測するのは未だ時期尚早だが、米ドルは以前より弱く、支配的でなくなるであろう。


どの様な影響があるのでしょうか?

ロシア中央銀行がルーブルと金を結び付け、商品決済をルーブルに結び付けた事は、西側メディアが未だ理解していないパラダイムの跳躍を意味する。

 

これらの事件は、ドミノ倒しで様々な形で響いてくる可能性がある。

 

現物の金はより需要がある。

 

ペーパーゴールドの市場では、幾つもの崩壊が起きている。

 

金の価格が見直されている。

 

米ドル離れの動きがある。

 

非欧米諸国間でドル以外の通貨による二国間商品取引が拡大している。